ISGジェネレーション   作:京勇樹

96 / 265
木星戦役3

自爆シークエンスが解除されて、両隊が安堵していた

その時

 

『ば、バカな!? 何故、ここに居るのだ! テテニス!!』

 

とドゥガチの驚愕する声が響き渡った。

 

『テテニス……?』

 

『テテニスだと? ……まさか、ドゥガチの娘のテテニス・ドゥガチか!?』

 

トビアは分からなかったようだが、キンケドゥには覚えがあったらしい

すると、ベルナデット

テテニスが

 

『御父様……地球進攻作戦などというバカな作戦はお止めください』

 

と語りだした

 

『何を!?』

 

『私は見てきました! 地球の方々の優しさを! 地球の美しさを!!』

 

テテニスはドゥガチにそう語りかけた

だが、ドゥガチは聞く耳を持たなかった

 

『もはや、地球進攻作戦は止まらぬ! いくらお前の言葉だろうがな!!』

 

その言葉を最後に、ドゥガチは喋らなくなった

どうやら、バイオ脳の生命維持装置を切ったらしい

そして、場が静寂に支配されてしばらくしてから

 

『ベルナデット……いや、テテニス・ドゥガチ……同行願います』

 

とキンケドゥが声をかけた

彼女はそんなキンケドゥの言葉に従い、クロスボーンガンダム・X1に乗った

そして、クロスボーン・バンガードと直哉達は離脱した

 

「彼女、どうして偽名で?」

 

と問い掛けたのは、セツコである

どうやら、理由が分からないらしい

それに対して、一夏が

 

「まあ、咄嗟と言うのが大半だな。だけど彼女頭良かったから、密航先が交戦相手だったクロスボーン・バンガードって知ったから、殺されないように偽名を名乗った可能性が高いな。後はまあ、地球のことをよく知りたかったからだろうな」

 

と言った

 

「この後、彼女が話してくれたんだがな……彼女はクラックス・ドゥガチが嫌悪していた地球のことが知りたくて、密航したらしいんだ」

 

直哉がそう説明した後、映像が変わった

場所は地球近く

どうやら、低衛星軌道上らしい

しかし周囲には、地球連邦軍部隊が展開していた

すると、千冬が

 

「これは、どういうことだ?」

 

と三人に問い掛けた

 

「実はこの時、仲間の裏切りと木星帝国の罠に嵌められてな……」

 

「地球連邦軍に包囲されたんだ」

 

「しかも、状況はここから悪化したんだ」

 

三人がそう言った直後、どこからか飛来してきたビームが、一機のヘビーガンを撃ち抜いた

そして、直哉が反射的にビームの来た方向に視線を向ければ、その先に居たのは黒いクロスボーンガンダム

クロスボーンガンダム・X2だった

 

『ザビーネか!?』

 

『待て! あいつは裏切り者だ! こちらの本意ではない!』

 

キンケドゥがそう説明したが、連邦軍はクロスボーンバンガードと直哉達に攻撃を始めた

地球連邦軍のMS部隊は、ヘビーガンが主力だった

だがその中で一機だけ、青い塗装がされたF91があった

どうやら、エースらしい

かなり動きが良かった

そして、相手は連邦軍だけではなかった

なんと、木星帝国軍まで動き出したのだ

数の差は圧倒的で、直哉達は徐々に追い詰められた

その時だった

マザーバンガードから、文章が送られてきた

 

『トライアド1、これは……』

 

『ああ……ベラ艦長が決めたらしいな……エイブラム艦長!』

 

『用意は出来ている!』

 

シュン、直哉、エイブラムは流れるように会話した

マザーバンガードから通達されたのは、マザーバンガードの自爆だった

この窮地、もはや通常の方法での挽回は不可能

だからその挽回の機会を作るために、マザーバンガードが自爆

それで隙を作るから、その隙を使って各自で離脱せよ

という内容だったのだ

スピリッツ本隊は木星帝国の前線基地に対する破壊工作作戦を実施中で、駆け付けられない

ベラ艦長の作戦に乗るしかなかった

そして数分後、マザーバンガードが自爆した

その隙を突いて、直哉達はキャリーベースと共に大気圏降下を敢行

地球に降りた

そして場面は変わり、炎に覆われた山

そこでは、三機の敵と戦うクロスボーンガンダム・X3

トビアの姿があった

トビア機と相対している三機は、それぞれ異様な機体だった

一機目は腕が長く、先端がビームチェーンソーになっている

明らかに、攻撃を重視した機体である

二機目は頭が大きく、武装は片腕のニードルガンのみ

しかし、かなり機動力が高いらしく速かった

機動重視なのだろう

最後の三機目は、巨体と巨腕

更に、刺々しい甲羅を背負った機体だった

動きが遅いので、防御重視なのだろう

その三機のパイロットは、木星帝国軍でも腕利きの三人で構成されている

攻撃重視機体、グァバーゼ

そのパイロット、ギリ・ガデューカ・アスピス

機動重視機体、アビジョ

パイロット、ローズマリー・ラズベリー

防御重視機体、トトゥガ

パイロット、バーンズ・ガーンズバック

この三人によって編制された、対クロスボーンガンダム部隊

それが、死の旋風隊(デスゲイルズ)

この三人の連携に押されて、トビア機は不利だった

駆け付けた直哉達は、他の木星帝国軍部隊と交戦しており、カバーに回れなかった

そして、一瞬の隙を突かれてトビア機は窮地に陥った

その時だった

頭からマントを被った一機のMSが現れて、死の旋風隊に攻撃を仕掛けた

その機体は強く、死の旋風隊を翻弄した

しかし、グァバーゼの攻撃がカスってマントが破けた

その下から姿を現したのは、クロスボーンガンダム・X1改だった

 

『クロスボーンガンダム・X1!? キンケドゥさんか!?』

 

実は、クロスボーンガンダム・X1は少し前の戦闘でクロスボーンガンダム・X2の攻撃で被弾

死んだと思われていたのだ

だからだろう

死の旋風隊の動きには、動揺が出ていた

クロスボーンガンダム・X1はその隙を突いて、アビジョを撃破

トトゥガはトビアが策を弄して撃破

グァバーゼはクロスボーンガンダム・X1の新武装

スクリュー・ウィップで撃破された

トビアは死の旋風隊が動かなくなったのを確認すると、機体から降りて

 

『キンケドゥさん! キンケドゥさんなんでしょ!?』

 

と片膝を突いたクロスボーンガンダム・X1に飛び付いた

なお、他の木星帝国軍部隊は全て直哉達が撃破している

そしてコクピットが開くと

 

『よ……トビア』

 

と顔の半分を包帯で覆ったキンケドゥが、姿を現した

すると、トビアは嬉しそうにキンケドゥに抱きついた

 

『キンケドゥさん!!』

 

『痛いから離れろ!? こちとら、少し前まで瀕死の状態だったんだ』

 

キンケドゥはそう言うと、トビアに支えられて機体から降りた

その時だった

 

『動くな!!』

 

と子供の声が聞こえた

視線を向けると、木星帝国軍パイロット

ギリが二人に銃口を向けていた

すると、シャルロットが

 

「ねえ……子供だよ?」

 

と三人に視線を向けた

どうやら、ギリの年齢が予想より低かったらしい

 

「だが、ギリは木星帝国軍ではかなり腕利きのパイロットの一人だ」

 

「一応、試作機をギリ専用機に改修した位だしな」

 

「あと、あいつはあれでも少佐なんだぜ?」

 

と三人が言った直後

 

『よせ、ギリ! 早まるな!?』

 

とキンケドゥの叫び声が聞こえた

見てみると、ギリは自分のこめかみに銃口を突き付けていた

 

『負けた我々が……今更、帰れるものか!!』

 

ギリはそう怒鳴ると、引き金を引こうとした

だがその凶行は、一人の男性

バーンズ・ガーンズバックによって阻止された

 

『バーンズ!? なぜ!?』

 

『簡単に死のうとするんじゃねえ……子供が死ぬのを見るのは……もう嫌なんだ……!』

 

バーンズはそう言うと、ギリが持っていた銃を奪って投げ捨てた

彼、バーンズには実は息子が居たのだ

しかし、事故で死んでしまったのだ

それ以来、彼は子供が死ぬのは忌避していた

するとバーンズは、キンケドゥに視線を向けて

 

『海賊軍よ……投降する』

 

と告げた

 

『了解した……命は保証する』

 

キンケドゥはそう言うと、駆け寄ってきたベラと抱き合った

そして彼等は、木星帝国軍との決戦のために動き出す


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。