ISGジェネレーション   作:京勇樹

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コスモ・バビロニア建争4

『この!!』

 

『落ちろ!!』

 

一夏と弾はそう言うと、MA

ラフレシアに砲撃を集中させた

しかし、ラフレシアは機動力とIフィールドで無力化させて空振りに終わった

スピリッツ本隊も砲撃するが、それすらも回避した

しかも、戦艦の砲撃も無力化している

かなり出力の高いIフィールドらしい

そこに機動力による回避も合わさり、スピリッツ本隊も容易に撃破出来ずに居た

しかし、そんな状況下でも果敢に攻める機体が二機

F91とビギナ・ロナだった

F91が機動力を活かして近づき、ビギナ・ロナがそのカバーに入った

二人の連携はスピリッツから見ても高く、二機はラフレシアに接近

一気呵成に仕掛けた

 

『鉄仮面!』

 

『貴様はここで落とす!』

 

二人は気合と共に攻撃を開始した

しかし、ラフレシアに有効打を与えるには、Iフィールドジェネレータの出力を超えるビームを撃って貫通させるか、実弾兵器

近接戦闘を仕掛けるしかない

しかし、戦艦の砲撃を防ぐ程の出力を突破させるのは容易ではない

次に、二機は確かに実弾兵器を有しているが、ラフレシアの機動力の高さ故に簡単には当てられない

だから、答は一つだけだった

近接戦闘だ

しかし、それすらも容易ではない

ラフレシアの機動力の高さ

そして、触手状の武装

テンタクラーロッドは、遠近両用の武装だ

迂闊に近寄ろうものならば、あっという間に切り刻まれるのは目に見えている

だが、それで怖じ気づくスピリッツではない

 

『全機、対Gリミッター解除! 仕掛けるぞ!』

 

『了解!!』

 

マークの指示に従い、スピリッツ全機は対Gリミッターを解除

そして、突撃を始めた

異機種混合とはいえ、全てガンダム

流石の高い機動で、ラフレシアに近づいていく

すると、この時の全機の掛かるGが表示された

全機、10Gを優に越えている

最低でも10Gで、一番高いのは15G

直哉達は14Gで激しい機動戦闘を繰り広げている

その光景を見て、少女達は自問自答した

 

《今、一対一で戦って勝てるのか》

 

答は否だ

余りにも圧倒的な技量

そして、機体の性能

その二つが合わさり、スピリッツ全機は凄まじい高みに居る

そのどちらかが欠けても、今のようにはならないだろう

 

「言っとくけど、MSにはISのPICなんて機能は無いからな?」

 

一夏のその説明を聞いて、全員絶句した

彼女達はMSにもPICが有ると思っていた

だが、MSには無い

 

「だったら……G対策はどうなってるの?」

 

「前に聞いた限りだと、直哉達よりも幼い子供も居たんでしょ?」

 

簪と鈴が問い掛けると、直哉達は頷いて

 

「一年戦争時は無かったが、グリプス戦役時からリニアシートが普及し始めてな……それが、ある程度Gを緩和するんだ」

 

「だけど、完全には緩和出来ない。だから、対Gスーツや対Gリミッターを掛けてある程度は抑えられる」

 

「あとはまあ、耐G体質だな。そして、最終的には慣れだな……それしかない」

 

才能と装備

それで乗り越えてきた

そして、何よりも経験

二年

文字数にして、たった二文字

しかし、その二年の間に彼等は幾多の激戦を越えてきた

何回逃げたいと思ったのだろうか

何回死にかけただろうか

何回、地獄を見たのだろうか

だがそれでも、彼等は逃げなかった

諦めなかった

ずっと、戦場に立ち続けた

自分達の矜持と誇りに懸けて、戦場に立ち続けた

そして、帰ってきたのだ

自分達の世界に

 

『デルタアァァァァァ!!』

 

直哉が叫ぶと、デルタカイの関節部分から蒼い炎が吹き出した

つまり、ナイトロを起動したのだ

恐らく、手加減出来ないと判断したからだ

ナイトロはその特性上、迂闊に何回も発動出来ない

短期決戦

彼女達は知らないが、ナイトロが発動出来るのは安全装置で五分が限界である

それ以上発動したら、戻れなくなる可能性が高すぎるのだ

そして強化人間になったら、どうなるか分からない

ある者は記憶が無くなり、またある者は性格が破綻した

そして、ある者は短命だった

だから、スピリッツは強化人間だけにはしなかった

だがあるパイロットは力を欲して、仲間に黙ってある薬物を使って性格が破綻

結果、そのパイロットは命令を無視して特攻

そして、帰らぬ人となった

これは後で分かったことだが、そのパイロットはその薬物をある研究所跡地で発見し隠し持っていたのだ

それ以降、スピリッツでは艦内にそういった薬物の持ち込みを禁止

帰還時に手荷物検査をするようにした

そして、最後の難関

それが、デルタカイだった

デルタカイは一度造られた後、エウクレイデスの倉庫に封印されていた機体だった

それを、直哉が機体リストから発見

そして、使わせてほしいと交渉したのだ

何回も何回も

スピリッツでも、デルタカイは禁忌の機体だったのだ

直哉は根気よく交渉を続けて、そして、安全装置を設けることによって、ようやく了承されたのだ

そして、デルタカイは何年振りかにパイロットを得たのである

そして何故、直哉はデルタカイを選んだのか

それは、直哉のポジションが深く関係している

遊撃手

つまりは、遠近両用の機体が一番いい

しかし、生半可な機体では器用貧乏に終わってしまう

だから直哉は、探し続けたのだ

自分のNTとしての能力を活かせて、機動力が高く、高い火力を有していて、格闘戦闘が出来る機体を

そうして見つけたのが、デルタカイだったのである

閑話休題(話を戻して)

戦闘は激化していた

スピリッツもラフレシアの激しい攻撃に、中々近付けなかった

そんな中で、ビギナ・ロナがラフレシアに捕まってしまった

そして、パイロットだったセシリーが機体から放り出されてしまった

その直後だった

F91に驚くべき変化が起きた

機体が、黄金色に発光し始めたのだ

 

『なんだ!?』

 

『何が起きてるんだ!?』

 

と誰かが叫んだが、誰も答えられなかった

そして、次の瞬間

 

『分身したあ!?』

 

『レーダーにも映ってる……どういうこと!?』

 

F91が、次々と分身したのである

しかも、全てレーダーにも映っている

 

「これは、一体……」

 

「何が起きてるの~?」

 

と問い掛けたのは、布仏姉妹である

二人共に整備課なので、気になったのだろう

 

「通称でMEPE」

 

「正式名は長くて覚えてないが、金属剥離現象が起きてたんだ」

 

「その原因は、F91に搭載されているバイオコンピューターの放熱が追い付かないから起きた現象なんだ」

 

三人がそう説明すると、アニメが表示された

 

「バイオコンピューターは頭部に搭載されていてな、普段は頭部のマスクも閉まってる」

 

「だけど、そのバイオコンピューターが限界稼働すると、それじゃあオーバーヒートするから、頭部のマスクと機体各所に設けられた放熱フィンが開くんだ」

 

「けど、それでも間に合わないから、機体の装甲が薄く剥離していき、それが分身みたいになってるんだ。で結果は、質量を持った残像になる」

 

三人がそう説明している間にも、F91は猛攻を仕掛けた

この時、スピリッツ全機はマークの指示により後退していた

下手に手出しすると、シーブックの邪魔になると判断したからだ

事実、F91はラフレシアの周囲を残像を残しながら縦横無尽に駆けながら攻撃

ラフレシアに反撃の隙を与えなかった

しかし、無傷という訳にはいかなかった

避けきれなかった攻撃で、腕が、足が吹き飛んだ

だが、F91は一瞬の隙を突いてコクピットに肉薄

そして、直ぐに離脱した

だがそれにより、ラフレシアは自滅した

コクピットに肉薄したF91を排除しようと攻撃したのが、全てコクピットに命中

ラフレシアは、その花弁を真空に散らせた

 

『終わったか……』

 

『セシリー!!』

 

マークが呟いた直後、シーブックがセシリーの名前を呼びながら動き始めた

だが、機体はボロボロで長くは動けないだろう

そんな機体で、たった一人の人間を広大な宇宙で探すのは無謀に近い

しかし、シーブックは諦めなかった

機体の稼働するあらゆるセンサーを稼働させて、セシリーを探し続けた

その時だった

F91がある方向に進み始めたのだ

そして、コクピットが開いて中からシーブックが出てきた

その先には、セシリーが漂っていた

それは、シーブックの思いを受け取ったバイオコンピューターが起こした奇跡だった

広大な宇宙で、たった一人の人間を見つけた

それは、まさに奇跡だろう

 

『どうやら、依頼人も脱出したようだな……スピリッツ全機帰投!』

 

『了解!』

 

どうやら、依頼人たる訓練艦も脱出に成功したらしい

それを確認したマークは、スピリッツ全機に帰還命令を出した

こうして、コスモバビロニア建国戦争は幕を降ろした

そして、次に起きるのは木星からの狂気だった


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