ISGジェネレーション   作:京勇樹

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それは、すれ違いから始まった


コスモバビロニア建争

「この後の事は、俺達は知りません」

 

「ラプラスの箱に関しては、ビスト財団が展開していた回線にて世界規模で放送されたようです」

 

「だけど、世界は変わらなかった……結局、地球連邦政府により地球圏は統治され続けた……そして、新たな戦争が始まった」

 

三人がそう語ると、コロニーが映された

 

「時は、宇宙世紀0123年」

 

「起きた戦争は、コスモバビロニア建争」

 

「コロニーの企業、ブッホ・コンツェルン。その私兵部隊、クロスボーン・バンガードが起こした戦争です」

 

三人が再び語ると、海賊旗が映された

クロスボーン・バンガード

海賊旗の下に、という意味を持つ私兵部隊

 

「彼等は、どうして戦争を起こしたんだ?」

 

「まあ、理由は単純。地球連邦政府が無能だからとしか言えないな」

 

「世界は、敬われる貴族が統治すべきだって、ことだったな」

 

箒からの問い掛けに対して、一夏と弾が答えた

それは、無能な地球連邦政府が原因だった

スペースノイドへの重税

不当な圧政

それに憤りを覚えて、立ち上がったのがクロスボーン・バンガードだった

ブッホ・コンツェルンは独自に新型機を開発し、投入した

これまでの大型機とは正反対の小型化されたMSを

その新型機により、クロスボーン・バンガードはあっという間にフロンティア・サイドを制圧した

これには、複数の理由がある

まず、地球連邦軍がもはや名ばかりの軍になっていたこと

なぜなら、その襲撃の時に連邦軍兵士は逃げまどい、ある将官は民間人を楯にして逃げようとしたほどだ

次に、MSが旧式だったこと

この時の連邦軍の主力MSはいまだにジェガンだった

その理由は、長きに渡って戦闘が無かったために新型機開発が遅々として進まなかったからだ

少し前に、新型の小型MSが開発されたが、それも性能的にはジェガンより少し上程度

一応、ガンダムタイプが開発されたらしいが、それに関しては完全に未知数だった

機体名は、ガンダムF91

新技術が多数投入されており、かなりの性能を有しているらしい

とはいえ、それに見合ってコストはかなり高いらしい

閑話休題

この時スピリッツは、連邦軍とクロスボーン・バンガード双方から依頼が入っていた

しかし、連邦軍は二つの依頼だった

片方は練習艦の艦長から

もう片方は、なんとカムナ・タチバナからだったのだ

しかも、三機将を指定してきていた

なんでも、本当は予備役だったらしい

だが、フロンティア・サイド近くの艦隊司令官が逃げてしまったので、副官だったカムナの後輩が復帰を要請し、受諾したそうだ

その艦隊はフロンティア・サイド奪還作戦を敢行しようとしたが、クロスボーン・バンガードの移動要塞が邪魔で出来ないらしい

その援軍に、三機将を要請したようだ

その三つの依頼を、スピリッツは話し合った

そして、連邦軍側の依頼を受諾したのだ

しかも、両方を

そして、直哉達はカムナが指定してきた宙域に向かった

そこには、ラー・カイラム級三隻を含む艦隊が展開していた

 

『止まれ! 貴様ら、何者だ!?』

 

ふと気付けば、直哉達を囲うようにジェガンや新型機

ヘビーガンが展開していた

 

『こちらは、スピリッツから派遣されたトライアド隊だ。カムナ司令の要請に馳せ参じた』

 

直哉がそう言うと、若いパイロットが鼻で笑い

 

『貴様らのようなガキが三人来たところで、どう変わると言うんだ? しかも、機体は旧式? 話にならん!』

 

と罵倒してきた

その直後

 

『待て!』

 

と渋い声が聞こえた

ふと気付けば、一機のジェガンが近寄っていた

 

『今の声……スピリッツのトライアド隊……それに、黒色に塗装されたガンダム……まさか、黒翼(こくよく)か!?』

 

黒翼

それは、直哉個人に与えられた二つ名だった

理由は、黒色に塗装された機体で戦場を舞うように戦っていたことからだった

 

『貴官は?』

 

『自分は、ネスト・アガサ大尉です! 第二次ネオ・ジオン抗争の時に、君達に助けられたパイロットです!』

 

どうやら、シャアの反乱の時に直哉達に助けられたパイロットらしい

見た目から判断するに、シャアの反乱の時が初陣だっただろう

 

『大尉、このガキ共を御存知なんですか?』

 

『貴様らこそ、なぜ知らない! スピリッツのトライアドと言えば、一年戦争のア・バオア・クーから数々の大規模戦闘を生き残ってきたエースパイロットだ! カムナ中将と肩を並べて戦ったこともある手練れだぞ!? 黒翼の名前は知っているだろうが!!』

 

どうやら、知らぬ間に直哉達は相当有名になったらしい

無線を聞いてみると、直哉達に気付いたパイロット達の士気が上がってきている

 

『また君達と戦えるとは、思っていなかった。光栄に思う』

 

『いえ、自分達は任務で来たまでです。それより、カムナ中将にお目通し願います』

 

『分かった。付いてきてくれ』

 

直哉達はそのジェガンに先導されて、一隻のラー・カイラム級戦艦

コンゴウに着艦した

すると、コンゴウが通信が繋がって白髪と白髭が生えた老人

カムナ・タチバナ中将の顔が映った

 

『久しいな、トライアド1』

 

『そうですね、カムナ中将……しかし、何故に秘匿回線を?』

 

そう

その通信は、秘匿回線で繋がっていた

映像から察するに、どうやら艦長室から繋いでいるようだ

 

『今回の依頼……私達の親子関係が原因と言ってもいい……』

 

『詳しく話してください』

 

直哉が先を促すと、カムナは少し間を置いてから話し出した

それは、今から約10年ほど前に遡る

その時、カムナはサイド3の最高司令官として赴任していた

しかし、そのサイド3で脱走兵による襲撃が発生

その襲撃で、カムナの妻

エレン・タチバナが死亡してしまったのだ

最初は助けようとした

だが、エレンはもう助からないから、その血液や薬は他の人達に使ってあげてとカムナに言ったのだ

カムナは苦渋の決断だが、軍人としてそうした

この時、カムナとエレンの間にはまだ幼かった双子の子供達が居た

シュン・タチバナとナナ・タチバナ

その兄

シュンは、母だったエレンに依存していた

そのシュンは、エレンが死んだ後にカムナに殴りかかったのだ

 

『なんで、母さんを見捨てたんだよ!!』

 

そこから、親子関係が悪化

予備役に入って、フロンティア・サイド近くのコロニーに来た後に、シュンは姿を消した

そして、起きたこの戦争

予備役だったカムナは、駐留連邦軍の兵士に保護されて基地に入ったのだが、その基地の司令官達はクロスボーン・バンガードの襲撃により逃げていた

故に臨時で指揮を執ったのだが、その時に基地に一機のMS

金色のベルガ・ギロスが襲撃したのだが、カムナを執拗に狙って攻撃した

それを迎撃したのが、F90Ⅱに搭乗したナナ・タチバナだった

この時、カムナはそのベルガ・ギロスに搭乗しているのがシュンだと分かったのだ

実は、シュンはずっと復讐の機会を待っていたのだ

母を見捨てた(とシュンは思っていた)カムナを

そして、ブッホ・コンツェルンが私設軍隊を作っているのを知ると、志願したのだ

名を偽り、シュテイン・バニールとして

そして、訓練をトップランクで卒業

金色の戦鬼と言う二つ名と専用機を与えられ、部隊を率いて襲撃してきたのだ

カムナを殺すために

そして、それを迎撃したのがカムナが知らない間にパイロットになっていたナナだった

そして、シュンが居るのが件の移動要塞だった

そこで、カムナは恥を偲んで依頼してきたのだ

親子関係による戦いを終わらせるために

 

『すまない……こんな事、君達に頼むのは筋違いと分かっている……だが、頼む……手伝ってくれ』

 

カムナはそう言うと、頭を下げた

すると、直哉は微笑んで

 

『お任せください。自分達に出来ることは、全てやります』

 

と答えた

そして、作戦が説明された

この移動要塞を破壊するために、スペースランチで特殊破壊工作班を潜入させる

そのために、MSを排除しないといけない

だが、クロスボーン・バンガードの方が機体性能は上

たった一機だけ

F90Ⅱだけが、機体性能が上だった

だが、この機体には問題があった

過去に一度、この機体は試験運用中に奪われたことがあったのだ

なんとか奪還したものの、奪われた時に敵が改造したせいでOSに不具合が発生

近接戦闘をしていると、OSに異常に負荷が掛かってフリーズしてしまうようになってしまったのだ

それを起こさせないために、F90Ⅱには超長距離狙撃戦闘用のバックパックを装備させて、100km超え狙撃をさせる

それにより敵MSをある程度排除してから、スペースランチを突入させるのだ

直哉達には、ナナの乗るF90Ⅱに敵を近づけないようにしてほしいとのことだった

そして、作戦が始まった


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