ISGジェネレーション   作:京勇樹

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ユニコーン事変4

次に映ったのは、遥か上空だった

直哉達の機体は、それぞれ別のベースジャバーの上に乗せられている

 

「これは、どういう状況だ?」

 

その状況に首を傾げながら、千冬が問い掛けた

 

「ユニコーンと俺達の機体を、ラー・カイラムからガルダに移送して、そこからビスト財団の私有研究所に持っていく算段だったらしい」

 

「けどまあ、裏で色々とな」

 

千冬からの問い掛けに、一夏が答えて弾がそう言った直後、下方の雲の中からガランシェールが姿を現した

そのガランシェールから、MSによる砲撃が放たれた

その直後、ユニコーンや直哉達は行動を始めた

直哉達は隣に居たジェガンを殴り飛ばしたり、頭を破壊

ユニコーンはバンシィと交戦を開始

その両方を鎮圧するために、ガルダからMS

アンクシャが次々と出撃してきた

アンクシャ隊は直哉達とガランシェールに別れて対応を始めた

 

『アッシマーの量産型機体か!』

 

『だが、パイロットが慣れてないのが丸分かりだ!』

 

『ふっ!』

 

三人はそう言いながら、次々とアンクシャを撃破

その時だった

 

『つ! リディ少尉か!?』

 

リディ少尉のデルタ・プラスが、直哉達にビームを撃ってきた

 

『全部出来レースなんだろ、トライアド!』

 

『ちいっ!』

 

直哉はリディからのビームを、ベースジャバーからドッキングアウトして回避

MS形態だったデルタ・プラスに、直哉は蹴りを放った

リディ少尉はそれを盾で防いだが、機体性能では直哉のデルタカイの方が上である

一撃で押し飛ばされた

リディ少尉は直ぐに機体を変型させると、直哉機から離れた

直哉機はその間に、ベースジャバーに着地

一夏と弾は、それぞれ襲撃してきたアンクシャを戦闘不能にしていた

気付けば、リディ機はガルダの中に

ユニコーンとバンシィは、ガルダの上で戦っていた

しかも、ユニコーンとバンシィが戦っている場所ではサイコフィールドが展開されていた

 

『こりゃ、下手には近付けないぞ』

 

『俺達は、ガランシェール付近のMS隊の迎撃に集中だ』

 

『了解』

 

直哉の指示に従い、一夏と弾はガランシェールの周囲のアンクシャやジェガンに攻撃を開始した

少しすると

 

『ん? まさか!?』

 

と直哉が、ガルダから落ちていく人影を捕らえた

すると、それを追い掛けるようにユニコーンも降下していった

その途中で、ユニコーンはNTーDを発動

落ちていった人物を助けた

 

『間に合ったか、後は……バンシィの方か』

 

直哉はそう言うと、ガルダ上に居るバンシィを見た

その時、シャルロットが

 

「今、ユニコーンが助けた人は誰?」

 

と問い掛けた

すると、その人物の写真が表示された

幼さが残る顔立ちだが、強い意志が感じられる瞳だった

 

「バナージに名乗った名前は、オードリー・バーン。だがその本名は、ミネバ・ラオ・ザビ。旧ジオンの姫だ」

 

直哉のその説明を聞いて、誰もが驚いていた

なぜ、ジオンの姫が地球に居るのか

しかも、なぜバナージが助けたのか

 

「ミネバ姫は、ビスト財団が袖付きにラプラスの箱に至る鍵を渡すと聞いて、それを阻止しようとガランシェールに乗り込んでたんだ。その存在が、新たな戦争の火種になると判断してな。だが、まあ紆余曲折あって、地球に居たんだよ」

 

と直哉が説明した

実を言うと、バナージはそんなミネバに惹かれて手伝う事を決意

ミネバも、何時しかそんなバナージを頼りにしていた

ミネバを保護したユニコーンは、スラスターを噴かしてガルダの後部ハッチからハンガーに侵入した

すると中では、バンシィがデルタ・プラスを破壊していた

その直後、バンシィの足下に一人の男性

スベロア・ジンネマンが現れて

 

『マリーダ! 降りてこい! お前が戻れば、全て元通りだ!』

 

と声を張り上げた

その言葉を聞いたからか、バンシィの動きが止まった

その光景を見て、真耶が

 

「マリーダとは、誰ですか?」

 

と問い掛けた

すると、写真が表示された

精悍な顔付きの凛々しい女性だった

 

「マリーダ・クルス。ガランシェール配属のパイロット……だけど、その正体は……プル・トゥエルブ……第一次ネオ・ジオン抗争時のプル・シリーズ……確認された中では、唯一の生き残りです」

 

直哉のその説明を聞いて、真耶は驚いた表情を浮かべた

恐らくは、生き残りが居るとは思ってなかったのだろう

すると、ラウラが

 

「なぜ、マリーダという名前で呼ばれているんだ?」

 

と問い掛けた

それに対して、直哉は言いづらそうに

 

「彼女は、第一次ネオ・ジオン抗争後に、娼婦として扱われたんだ……それを、ジンネマンさんが保護したんだ。その時に与えられた名前が、マリーダ・クルスという名前だったんだそうだ」

 

と説明した

その説明を聞いて、シャルロットが辛そうな表情を浮かべた

恐らくは、実家での扱いを思い出したのだろう

本妻には一人息子が居たのだが、一度シャルロットに襲いかかってきたのだ

その時は、その一人息子が入れない区画に入って事なきを得たのだ

それ以降は襲わなくなってきたことから、本妻が何か言ったのかもしれないが、最早関係無いことだ

今のデュノア社は、エト・デュノアの手により再建を果たしており、本妻の息の掛かった人材は全員居なくなり、本妻により不当に解雇された人員が再雇用されたらしい

それにより、第三世代の開発が軌道に乗ったらしく、首の皮一枚繋がった状態でデュノア社はISの開発ライセンス剥奪を免れたらしい

なお、本妻の逮捕後にその一人息子も逮捕されたとか

なんでも、相当な悪ガキだったらしい

しかし、フランスの一大企業だったデュノア社の社長本妻の一人息子という立場を悪用し、脅迫していたらしい

閑話休題(話を戻して)

動きを止めたバンシィに、ジンネマンが何回も声を掛けていると、負傷しているリディ少尉が拳銃を発砲しながら

 

『ガンダム! ガンダム……ガン、ダム……』

 

と言って、倒れた

その数秒後、劇的な変化が起きた

発動していたNTーDが解除されて、バンシィが両膝を突いたのだ

そして、そのまま前のめりに倒れそうになったのを、ユニコーンが支えた

その直後、バンシィのコクピットが開いて、中からパイロット

マリーダが落ちてきたのを、ジンネマンが上手く受け止めた

その後、バンシィをガルダのハンガーの壁に寄り掛かせてからガルダから離脱

ガランシェールに着艦した

だが、問題はここからだった

直哉機を直ぐに収容すると、すぐに換装を始めた

宇宙仕様だ

そして、その時が来た

 

『見つけた! ネェル・アーガマ改です!』

 

『フラスト!』

 

『了解!』

 

バナージの言葉に応えるように、ガランシェールのスラスターが出力を上げた

そして、ネェル・アーガマからケーブルが射出されたが、ガランシェールの高度が下がり始めた

 

『クソッ! メイン二番スラスターに異常発生! 出力低下!』

 

『押せぇぇ!』

 

そんなガランシェールを、トライアド隊とギラ・ズールが押していた

その時、ユニコーンがガランシェールのアンカーユニットとネェル・アーガマ改から射出されたケーブルを掴んだ

 

『無理だ、バナージ! 機体が裂けるぞ!』

 

『バナージ!』

 

その行為を見て、ジンネマンとミネバが声を上げた

その直後

 

『行けるな、ユニコーン!』

 

とバナージが声を上げた

すると、NTーDを発動していた証のサイコフレームが発していた光に、変化が起きたのだ

破壊を象徴するような赤色から、安らかな緑色に

そして、その光はユニコーンから徐々に広がっていき、ガランシェールとネェル・アーガマ改を包み込んだ

すると、確実に二隻の高度が上がっていった

その現象を見て、誰かが

 

「アクシズ・ショック……」

 

と呟いた

そう、それはあのアクシズ・ショックの再来と言える現象だった

それにより、ガランシェールは大気圏を突破できたのだった

だが、問題はここからだった


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