ISGジェネレーション   作:京勇樹

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お待たせ


ユニコーン事変2

「俺達はこのパラオに連れてかれたバナージを助けるために、攻略作戦をすることにした」

 

「とはいえ、こういう要塞を攻略するのならば、相手戦力の三倍用意するってのが、まあ常識だわな」

 

「だけど、スピリッツを入れてもようやく同等だ。だから、ネェル・アーガマ改に搭載されてるハイパーメガ粒子砲を使うことにしたんだ」

 

三人がそう語った直後、ネェル・アーガマ改からはハイパーメガ粒子砲

アークエンジェルからは、ローエングリンが発射された

二隻からの砲撃を受けて、パラオは各所で爆発が発生

それに巻き込まれて、MSや艦が爆発・轟沈していった

その隙を突いて、隠れていたスピリッツ・ネェル・アーガマ改MS隊が一気に動きだした

パラオ周辺で警戒していた袖付きのMS隊は、予想外の事態に固まり反応が遅れた

その僅かな間に、二隊のMS隊は次々と袖付きMS隊を撃破

パラオに接近した

しかし、袖付きのパイロットの中には手練れも居たらしい

すぐに態勢を建て直し、迎撃を開始してきた

 

『ハッ! ギガンにドラッツェ、マラサイにアイザック、ドライセン……ここは博物館かよ!』

 

『一年戦争から、最新鋭まで揃ってるな!』

 

『確かにな!』

 

三人はそう言いながら、袖付きのMSを次々と撃破していた

なお、袖付きの名の由来は機体の手首に服の袖を彷彿させる装飾が追加されているからだ

なお、階級や所属で柄が違うのが確認されている

とはいえ、誰がどこの所属かなどは直哉達には知ったことではない

直哉達は、目の前の敵機を次々と撃破していった

その時だった

 

『つっ!』

 

直哉が一発のビームを避けた

その方向を見てみたら、相手は真っ赤な機体だった

 

『シナンジュ……フル・フロンタルか!!』

 

『また敵となるか……ガンダム!』

 

相手

フル・フロンタルはどうやら通信回線をオープンチャンネルにしているらしく、その会話を皮切りに戦闘が始まった

しかし、その戦闘で驚くべき光景が一同の目に入った

フル・フロンタルは破砕されて広がっている岩の群れの中を、高速で動き回っているのだ

その岩塊も不規則に動いており、下手すればぶつかって大惨事になりかねない

だが、フル・フロンタルはそんなこと気にしないと言わんばかりに動き回っている

例えるならば、人々が歩いている商店街をローラースケートで動き回っていると同じことだ

それを見て、ラウラが

 

「なんてパイロットだ……余程、空間把握能力が高いのか……」

 

と呟いた

それを聞いてか、箒が

 

「一夏、あいつは何者だ?」

 

と問い掛けた

 

「あいつは、フル・フロンタル。ネオ・ジオン残党、袖付きの総大将だ」

 

「まあここでぶっちゃけると、シャアの遺伝子を使って作られたクローンの強化人間だ」

 

一夏に続いて弾がそう言うと、誰もが目を見開いた

あの、シャア・アズナブルのクローン

しかも、強化人間

それを聞いて、誰もが納得した

フル・フロンタルの強さに

その時、ビームライフルを構えたシナンジュが後退した

その直後に、ビームの弾幕が駆け抜けた

すると、ビームが来た方向からビームガトリングを持ったユニコーンが姿を現した

どうやら、脱出してきたらしい

それを確認したからか、ネェル・アーガマ改から信号弾が上がった

 

『全機、作戦目標は達した! 離脱する!』

 

ネェル・アーガマ改からの通信を聞いて、ネェル・アーガマ改とスピリッツのMS隊は離脱

この場での戦闘は終了

次に映ったのは、地球間近だった

 

「ここは?」

 

「衛星軌道上の、旧ラプラス官邸跡宙域だ。ラプラスプログラムが指定してきた場所だ」

 

シャルロットからの問い掛けに、直哉が答えた

このラプラス官邸跡は本来だったら、宇宙世紀において地球連邦首相官邸となる場所だった

しかし、年号が西暦から宇宙世紀に変わったその時に起きたテロにより、初代首相諸ともにスペースデブリと化した

その後も解体されずに、衛星軌道を周回しているのだ

 

『一体、ここに何が……』

 

と誰かが呟いた

その時

 

『……ん? なんだ?』

 

『これは……演説か?』

 

付近に展開していたMS隊と母艦は、ある通信を聞いた

それは、宇宙世紀元年に初代首相が行った演説だった

 

『どこだ! 何処から流れている!?』

 

『発信地は……ユニコーンです! ユニコーンから発信されています!』

 

地球連邦軍特殊部隊

エコーズ隊長、ダグザ・マックール中佐の問い掛けに、ネェル・アーガマ改のオペレーターが答えた

なお、エコーズの名前の由来は、地球、コロニー、宇宙の頭文字で、場所を問わずに展開するという意味である

その直後

 

『レーダーに感アリ! これは……袖付きの襲撃です!』

 

ともう一人のオペレーターが、叫ぶように告げた

その先頭には、赤いMS

シナンジュも居た

 

『対空! レーザー機銃、撃ちまくれ!』

 

ネェル・アーガマ改の艦長、オットー・ミタスの命令に従って、ネェル・アーガマ改はレーザー機銃で弾幕を形成した

だが、その機銃はただの一発もシナンジュには当たらない

シナンジュは弾幕の隙間をすり抜けるようにして進み、ネェル・アーガマ改の横を通り過ぎた

 

『狙いは、ユニコーンか!』

 

それを止めようと、直哉達が動こうとした

だが、それを他の袖付きMS隊が阻止

交戦が始まった

ラプラス官邸跡内部では、ユニコーンとダグザ中佐による連携作戦が行われた

その時

 

『つっ! ダグザ中佐!?』

 

と直哉が、ダグザ中佐の声を聞いた

それは

 

『お前は、我らの希望だ』

 

だった

その直後

 

『ダメだ、バナージ君! 怒りに飲まれるな!』

 

と声を上げた

すると、壁を突き破ってユニコーンとシナンジュが出てきた

ユニコーンは、NTーDを起動させていた

ユニコーンの機動は凄まじく、シナンジュに追い付いている

そして、ユニコーンがシナンジュの片足をもぎ取ると、紫色のギラ・ズールがユニコーンを狙って砲撃を放った

ユニコーンは盾を構えて防いだのだが、盾の中にはIフィールド発生装置が内蔵されていて、ギラ・ズールが放ったビームを欠き消した

そして一瞬にして肉薄すると、ビームトンファーで四肢を切断した

その戦いは、まるで獣のようだった

その時、ラプラス官邸とユニコーン、シナンジュが赤熱気流に包まれ始めた

気づかない内に、大気圏に近付いていたようだ

そしてそれは、直哉達も一緒だった

直哉達の機体も、赤熱気流に包まれていた

 

『くそっ! 重力に捕まったっ! 抜けられない!!』

 

『こいつは、ヤバイか!? 大気圏突入するしかないか!』

 

『隊長、俺達は地球に降ります! デルタの大気圏内用の部品を!』

 

直哉がそう叫んだ直後、ユニコーンはビームマグナムを発射

それは、狙ったシナンジュではなく、シナンジュを庇うように現れたギラ・ズールに当たった

その時

 

『ティクバ……家族を、頼んだぞ……』

 

という声が、この宙域に居た全員に走った

その直後に、スピリッツの母艦からコンテナが射出された

それを直哉達は掴んでから、ユニコーンを受け止めた偽装交易船

ガランシェールの上甲板に着艦した

そして、舞台は地球に変わる


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