ISGジェネレーション   作:京勇樹

82 / 265
ちょっと端折ったり、駆け足だったりしますが、ご了承ください


ユニコーン事変1

「宇宙世紀0096年……インダストリアル7にて、一機のガンダムが開発されました」

 

「型式はRXー0……機体名はユニコーンガンダム」

 

「ある意味では、地球連邦政府を根底から覆すことになる物へと至る鍵の機体です」

 

三人がそう説明すると、その機体の写真が表示された

純白の機体に、額から伸びている一本の角

まさしく、一角獣(ユニコーン)

そのユニコーンを見て、シャルロットとセシリアの二人が

 

「あ、この見た目……」

 

「今の直哉さんの機体に、似てますわね」

 

と呟いた

それを聞いて、直哉は頷き

 

「多分、予備機で運用した兄弟機のデータからだろうな」

 

と言った

なお、直哉が運用したというのはRXー0ー2

バンシィである

直哉はバンシィが遠近中と運用がしやすかったので、試験運用をしたことがあるのだ

そして、それらの運用データをOSに反映させているのだ

恐らく、OSにそのデータの痕跡があったから、セカンドシフトした時に似た見た目になったのだろう

 

「それで、その連邦政府を根底からひっくり返す代物とはなんだ?」

 

「……ラプラスの箱」

 

千冬が問い掛けると、直哉は端的に答えた

 

「ラプラスの……箱?」

 

流石にそれだけじゃ分からなかったらしく、カオルが首を傾げた

 

「今は、それだけしか言えない」

 

「だが、その存在は間違いなく、連邦政府にとっては鬼札と言えた」

 

「それを所持してたから、ビスト財団は百年近く繁栄してきたらしい……だが、ビスト財団当主は世界を変えるためにある組織に引き渡すことにした」

 

「……ある組織?」

 

三人の話を聞いて、簪が首を傾げた

その問い掛けに、直哉が

 

「通称、袖付き……ネオ・ジオン軍の残党だ」

 

と答えた

次の瞬間、その場の全員が動揺した

 

「ネオ・ジオンの残党!?」

 

「そんな連中に、政府をひっくり返す代物を渡す!?」

 

「そんなことをしたら、何が起こるか!?」

 

直哉の説明を聞いて、口々にそう叫んだ

確かに、事実だろう

一度は、地球へアクシズを落とそうとすらした連中である

何をするのか、分かったものではない

だからだろう、メンバーは慌てていた

しかし、それを直哉は片手を上げて制した

 

「落ち着いて……確かに渡そうとしたが、渡せなかったんだ」

 

「どうも、ビスト財団内部で意見の対立があったらしくてな」

 

「敵対した奴は、地球連邦軍にその情報をリークしたんだ……結果、引き渡しは失敗……たまたま居合わせた一人の少年に託されたんだ」

 

三人がそう説明すると、顔写真が表示された

まだ幼さが残る、一人の少年だった

 

「名前は、バナージ・リンクス」

 

「この事変の中心に立つことになる少年だ」

 

「あ、化け猫とは関係ないからな」

 

直哉と弾が説明し、一夏が最後にそう付け加えた

すると、鈴が小さく舌打ちしていた

何を考えたのか

すると、映像が始まった

映ったのは、一基のコロニーだった

よく見れば、中から煙が見える

 

『隊長、本当にいいんですか?』

 

『ああ……俺達の任務は、ユニコーンガンダムの護衛で、中に入るなと言われている。最初は待つしかない』

 

直哉の問い掛けに、マークがそう答えた

どうやら、コロニー内部で戦闘が起きているようだ

 

『しかし、中にロンド・ベルが入ってもう……』

 

『つっ!? 隊長!』

 

エリスの言葉に被せるように、一夏がコロニー

インダストリアル7を指差した

その直後に、中から二機のMSが出てきた

片方は、ユニコーンガンダム

そして、もう片方は緑色に四枚の羽が付いた大型のMSだった

機体名は、クシャトリヤ

袖付きが保有する、数少ないNT用の機体である

 

『片方は袖付きの機体か……』

 

『離れたな』

 

ラナロウの言った通り、クシャトリヤとユニコーンは互いに距離を離した

すると、クシャトリヤの四枚の羽からファンネルが射出されてユニコーンに向かった

そして、ユニコーンに対してビームを放った

その直後、ビームが曲がったのだ

 

『なんだ!?』

 

弾が驚いた直後、ユニコーンが変型を開始

装甲が開き、中から赤い光が漏れだしたのだ

その時だった

 

『なっ……くそっ!?』

 

と直哉の慌てる声が聞こえた

この時、直哉の機体が見えた

Zから、デルタカイになっていた

 

『どうした、トライアド1!』

 

『ユニコーンに、引っ張られてっ!? ダメだ! デルタ!』

 

マークからの問い掛けに直哉がそう叫んだ直後、デルタカイの関節から蒼い炎が吹き出し始めた

 

「直哉……あの蒼い炎は、なんなの?」

 

「何か、良くないのは分かるのですが…、」

 

シャルロットとセシリアがそう言うと、直哉が

 

「この蒼い炎は、デルタカイに搭載されたサイコミュシステム……名前は、ナイトロシステムだ」

 

と説明した

 

「ナイトロシステム……」

 

「それは、一体?」

 

再度二人が問い掛けると、直哉が

 

「ナイトロシステムは、簡単に言えば普通の人間のパイロットを、強制的に強化人間にしてしまうサイコミュシステムだ」

 

と説明した

その説明を聞いて、誰もが息を飲んだ

そんな危険なシステムなのかと

 

「ああ、今は別のシステムに変わってるから、安心してくれ」

 

直哉がそう言うと、全員が安堵した様子で深々と溜め息を吐いた

 

「さて、続けるぞ? このナイトロシステムは、グリプス戦役終結を期に禁止された強化人間の研究。それを安価に、そして早期に前線に供給するために、開発されたサイコミュシステムです。まあ、理屈では『禁止されてるけど、なるのは仕方ないよね』的な考えで開発されたそうです」

 

直哉のその説明を聞いて、殆どのメンバーが憤りを覚えた

なんて身勝手な考えなのかと

 

「それでは、神崎君……この時は、何が起きたんですか? 確か、ユニコーンに引っ張られて。と言ってましたが」

 

という真耶の問い掛けに、直哉は肩を竦めながら

 

「この時は、まだ乗り換えたばっかりだったから、安全策が取られて無かったんです。だから、ユニコーンのサイコミュシステムに反応したと思われます」

 

と説明した

 

「……ユニコーンのサイコミュシステムって?」

 

「通称NTーD……」

 

「NTーD?」

 

簪からの問い掛けに直哉が端的に答えると、セツコが首を傾げた

そして、少し間を置いてから

 

「通称NTーD……本来の名称は、ニュータイプ・デストロイ。NTを破壊するために作り出されたサイコミュシステムです」

 

という説明を聞いて、誰もが戦慄を覚えた

NTを破壊するために開発された、サイコミュシステム

なんて、矛盾しているのかと

 

「NTーDが発動する条件は、一定の範囲内にNTか強化人間が居ること……しかし、ユニコーンはそのNTーDに支配されるだけじゃあダメなんだ……」

 

「支配されるだけじゃあ、ダメ?」

 

直哉の説明を聞いて、鈴が首を傾げた

 

「ラプラスの箱に至るためのプログラム。それが、ラプラスプログラム。それが発動する条件が、NTーDが発動しても、自分の意思で戦えるかどうかなんだ」

 

つまりは、精神力の強さ

それが鍵なのだ

 

「この時は俺のトラブルもあって、戦闘にはならなかった。で、俺の機体の改修とまあ、要らぬ事をしたデブのせいで、ユニコーンが袖付きに奪われたんだ」

 

「本当にな、あいつは余計な事をしてくれたよな」

 

「おかげで、二隻分の戦力で要塞攻略なんてしないといけなくなった」

 

三人がそう語ると、映像が変わった

見えたのは、巨大な岩の塊だった

 

「宇宙要塞、パラオ」

 

「確か表向きは、廃棄された資源採掘小惑星だったかな」

 

「これを、たった三十数機のMSで攻略しろってんだから、あのデブも無理を言ってくれたよな」

 

そして、これを契機に地球圏全域を股に駆けた物語が始まった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。