ISGジェネレーション   作:京勇樹

8 / 265
話し合いと部屋決め

時は過ぎて、昼休み

 

三人は昼休みになると直ぐに、カオルとジュリに近づいた

 

休み時間に話し掛けるのは無理と諦めて、昼休みに昼食を食べながら話すことにしたのだ

 

「なあ、一緒に飯食いながら話さないか?」

 

「ああ、いいぜ。ジュリは?」

 

直哉が声を掛けると、カオルは頷いてからジュリへと視線を向けた

 

するとジュリは、メガネを直しながら

 

「いいわ。私も話したいことがあったし」

 

と答えた

 

「オーライ。なら、早く行こうぜ」

 

弾が親指で外を示しながら言うと、全員で食堂へと向かった

 

そして、それぞれ食券で注文し端の方のテーブル席を確保すると

 

「そんじゃあ、まずは軽く自己紹介と行こうか。俺はオーブ連邦首長国から来た。カオル・リオ・アスハだ。一応オーブ代表の息子だが、気にしないで接してくれ」

 

とカオルが自己紹介すると、三人は姿勢を正して

 

「俺は神崎直哉だ。好きに呼んでくれ」

 

「俺は織斑一夏。一夏でいい」

 

「五反田弾だ。弾でいいぜ」

 

と名乗った

 

そして最後に、ジュリが

 

「私はジュリ・ウー・ニェン。ジュリでいいわ」

 

と名乗った

 

三人はそれに軽く会釈すると、一旦間を置いてから

 

「まず、直球に聞きたい……ジュリ……君は……」

 

そこまで直哉が言った時、ジュリは頷いて

 

「ええ……覚えてるわ……あなた達のことを……そして、ジェネレーションワールドのことも」

 

と告げた

 

「なっ!?」

 

「マジかよ……」

 

一夏と弾は驚くが、直哉は落ち着いた様子で

 

「やっぱりか……」

 

と呟いた

 

直哉の呟きを聞いて、一夏と弾が視線を向けて

 

「気づいてたのか、直哉」

 

「いつ気づいた?」

 

と問い掛けた

 

すると、直哉はジュリを見つめて

 

「最初からだよ。それに、これは俺の感覚だが……ジュリ。NTに目覚めたな?」

 

と言った

 

すると、ジュリは頷いてから

 

「ええ、その通りよ……ただ、レベルは大体2か3ってところね」

 

と言った

 

ジュリの言葉を聞いて、直哉は頷いてから

 

「だったら、人より直感がかなり高い位か……」

 

と言い、ジュリはその言葉に頷き

 

「そうね……ただ、あなたと視線が重なった瞬間、私達は通じ合った」

 

「ああ……俺も感じたから、ジュリがNTだと確信した」

 

直哉はそう言うと、一旦目を閉じてからカオルを見て

 

「カオル……俺達のことは……」

 

と言うと、カオルは頷いて

 

「父上から聞いてるよ……父上が知ってる限りね」

 

と言った

 

「それで、カオルの父親ってのは……?」

 

一夏が問い掛けると、カオルは頷いてから

 

「俺の父上の名前は……ウズミ・ナラ・アスハだ」

 

と答えた

 

カオルの答えを聞いて三人が固まっていると、ジュリが懐に手を入れて

 

「ウズミ様からあなた達宛てに、これを預かっているわ」

 

と言って、三つのUSBを取り出して三人の前に出した

 

「これは?」

 

弾が問い掛けると、ジュリは肩をすくめて

 

「詳しくはなにも」

 

と言った

 

三人はUSBを手に取ると、それを見ながら首を捻った

 

すると、カオルが手を叩いて

 

「それよりさ、さっさと飯食おうぜ」

 

と言った

 

それを聞いて、三人はUSBを仕舞いながら

 

「そうだな」

 

「作ってくれた人に申し訳ないしな」

 

「冷めないうちに食べるか」

 

と言った

 

そして、全員両手を合わせると

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

と言ってから食べ始めた

 

なお、この食事自体は十分程度で終わった

 

早飯は軍人の基本である

 

そして、時は経って放課後

 

五人が教室で談笑していると、真耶と千冬が現れて

 

「あ、まだ居てくれたんですね。良かった」

 

「入れ違いにならずに済んだか」

 

と言った

 

五人が視線を向けると、真耶がバックの中から五枚のカードキーを取り出して

 

「皆さんには、今日から寮に入ってもらいます」

 

と言った

 

その言葉を聞いて、直哉が

 

「あれ? 確か、向こう一週間位は自宅からのはずでは?」

 

と問い掛けた

 

「政府からの通達でな。安全のために、寮に入れるようにと」

 

「ですので、部屋割りを調整して空けました……」

 

千冬に続いて、真耶が疲れた様子でそう告げた

 

その様子から察するに、真耶が調整したのだろう

 

「まず、アスハくんとウー・ニェンさんは1030号室です」

 

「確か、ウー・ニェンはアスハの護衛だったな?」

 

千冬の言葉に二人は頷きながら、真耶から1030という数字の書かれたカードキーを受け取った

 

「神崎くんは1045号室です」

 

「了解」

 

直哉はカードキーを受け取ると、それを胸ポケットに仕舞った

 

「それで、五反田くんなんですが……」

 

真耶は弾を見ると、少し申し訳ないと言った様子で

 

「今のところ一年生寮に余裕が無くて、五反田くんだけ三年生寮になってしまったんです……」

 

と言うと、3047という数字が書かれたカードキーを弾に差し出した

 

「あー……了解です」

 

弾は仕方ないといった様子で頷きながら、カードキーを受け取った

 

「あ……家に荷物取りに行かないと……」

 

と思い出したように一夏が言うと、千冬が

 

「安心しろ。お前達の荷物ならば、既に搬入済みだ」

 

と告げた

 

「え?」

 

「何時の間に……」

 

千冬の言葉に直哉と弾が驚いていると、真耶が

 

「実は、お昼休みの時点で通達が来てまして、その時点で実家やホテルに連絡して送ってもらいました」

 

と説明した

 

五人は真耶の説明に納得すると、寮に向かうことにした

 

そして、途中の道で別れて弾は一人で三年生寮を見上げていた

 

「なんで俺なんだ……」

 

弾はそう呟くと、部屋へと向かった

 

「3047……3047っと……あ、ここだ」

 

弾は目的の部屋を見つけると、カードキーを使ってドアを開けて中に入った

 

そして、視界に入ったのはシャワーから出たばかりと思われるメガネを掛けた少女が、下着姿で立っていた

 

「……」

 

その少女は呆然と弾を見ていたが、みるみるうちに顔を真っ赤にしていった

 

その光景を見て、弾は思わず

 

「やっちまった……」

 

と呟いた

 

その直後、弾の顔面に大きなファイルがめり込んだ

 

そして、十数分後

 

先ほどの少女と弾は向かい合って座っていて

 

「「すいませんでした……」」

 

と互いに頭を下げた

 

ちなみに、彼女の名前は布仏虚(のほとけうつほ)というらしい

 

今の彼女は髪を三つ編みにしており、その雰囲気は敏腕マネージャーという感じであり、完全に弾の好みのドストライクだった

 

「あ、いえ……悪いのは俺なんで、虚さんが謝る必要なんて……」

 

弾がそう言うと、虚は首を振って

 

「いえ……私も山田先生から男の子が同じ部屋になるという話を聞いてたんですが、忘れていたんです……」

 

と言った

 

どうやら、少しオッチョコチョイな所も有るらしい

 

そんな所も、弾の好みに直撃である

 

「それに、大変お見苦しい姿を見せてしまいました……」

 

と虚が言うと、弾は慌てた様子で

 

「見苦しいなんてとんでもない! 虚さんスタイルも良いですし、何よりも俺の好みドストライクです!」

 

と口走った

 

弾は自身の発言に固まるが、虚は弾の言葉を聞いて顔を赤らめて固まった

 

実を言うと、虚は今のような言葉を初めて言われたのである

 

故に、今虚の頭の中では弾の言葉が繰り返し響いていた

 

すると、一足先に弾が我に帰り

 

「えっと……今のは俺の素直な気持ちです!」

 

と開き直った

 

「あ、ありがとうございます……」

 

弾の言葉を聞いて、虚は素直に頭を下げた

 

何とも初々しい二人であった

 

場所は変わり、1025号室

 

「い、一夏……?」

 

「よ、箒」

 

シチュエーションとしては、先ほどの弾とまったく同じである

 

目的の部屋を見つけた一夏は、カードキーを使って中に入ったのだ

 

そして、部屋を見回していたらシャワーから出てきた箒と遭遇したのだ

 

一夏は普通に挨拶するが、箒の顔は瞬く間に真っ赤に染まった

 

そして、箒は一足飛びに壁に立てかけてあった木刀を掴むと勢い良く一夏目掛けて振り下ろした

 

しかし、一夏は素早く両手を腰に持っていくと大振りのナイフを抜刀して交差させて木刀を防いだ

 

「なっ!?」

 

防がれるとは思ってなかったのか、箒は目を見開いて固まった

 

だが、一夏は目を細めて

 

「箒……今の俺じゃなかったら死んでるぞ」

 

と言った

 

「な、なに?」

 

一夏の言葉に箒が首を傾げていると、一夏は箒を睨んで

 

「箒……お前武術家だろ? だったら、その一撃で人を殺せるって理解してるか? それなのに、感情任せで力を振るうな! そんなんじゃあ、ただの暴力だ!」

 

一夏のその言葉に、箒は息を呑んで固まった

 

この時、彼女の脳裏には昨年の剣道全国大会で戦った相手の言葉が蘇っていた

 

それは

 

『あなたの剣……それじゃあ、ただの憂さ晴らしの剣。暴力の剣よ!』

 

という言葉だった

 

その言葉を聞いて、箒はハッとした

 

確かに、感情任せで力を振るうのは武術家としてはあってはならないことだ

 

だが、自分はどうだ?

 

天災な姉のせいで、一夏から離されたからといって、その鬱憤を晴らすかのような暴力的な太刀筋

 

それでは、武術家としては失格だ

 

その時から修行したというのに、また感情任せで剣を振るってしまった

 

「私は……私は……っ!」

 

箒はそれを恥ずかしく思い、その場に座り込んだ

 

すると、ナイフを仕舞った一夏が

 

「箒……気に入らないことがあっても、まずは一回深呼吸でもして、感情を落ち着かせろ……そうしないと、いつか本当に人を殺してしまうぞ?」

 

とアドバイスした

 

「ああ……わかった……」

 

箒はそう言うと、木刀を壁に立てかけた

 

一夏はそれを確認すると、咳払いしてから

 

「それじゃあ、箒……服、着たら?」

 

と言った

 

一夏のその言葉に、箒は顔を真っ赤にして

 

「っーー!?」

 

と、声にならない悲鳴を上げた

 

そして、再び場所は変わって1045号室前

 

「ここだな」

 

と直哉は確認すると、カードキーを取り出すがハッとして

 

「っと……まずはノックするか」

 

と言ってから、二回ノックした

 

すると、すぐに

 

『はい……入って大丈夫ですよ』

 

という声が聞こえた

 

その言葉を聞いて、直哉はカードキーを使ってドアを開けて中に入った

 

「どうも。今日から同室になった神崎直哉だ」

 

ベッドに腰掛けていた少女を見つけると、直哉は自己紹介した

 

すると、少女は軽く頭を下げながら

 

「私はセツコ・オハラと言います。よろしくね」

 

と名乗った

 

「ん? その名前は確か……クラスメイト?」

 

名前に聞き覚えがあり、直哉は問い掛けた

 

「ええ、その通りよ。覚えてくれてて良かったわ」

 

セツコが肯定すると、直哉は安堵のため息を吐いて

 

「名前を覚えるのは、孤児院に居たから得意なんよ」

 

と言った

 

「孤児院……?」

 

セツコが首を傾げていると、直哉は手を左右に振りながら

 

「ああ、気にしないでいいから」

 

と言った

 

そしてこの後、直哉達は各同居人と細かいルールなどを決めてから食事を取ってから就寝したのだった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。