ISGジェネレーション   作:京勇樹

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ZZ短くて、すいませんでした
計算してみたら、ジェネレーションワールド語りで30話以上書くことになりそうだったので、これからも一部は簡略化するかもしれません
そこはご了承ください


終結

戦況が変わったことに気付いたのは、戦い始めてから暫くした時だった

 

『なんだ……グレミー軍の動きが……』

 

『鈍くなったな……』

 

それまで統率された動きだったのが、突如として鈍ったのだ

特に、生き残っていた量産型キュベレイ部隊は動きが止まっていた

 

『グレミー・トトに、何かあったのか?』

 

『それは分からんが、まだネオ・ジオン軍は居るぞ!』

 

直哉が疑問を口にするが、それを遮るようにカムナが声を上げた

その光景を見て、シャルロットが

 

「ねえ、この時にあの子達に何があったの?」

 

と問い掛けた

すると、直哉が

 

「実はこの時、グレミー軍の首魁だったグレミー・トトが戦死。それによって、グレミー・トトをマスター設定されていたプルシリーズの士気が瓦解したんだ」

 

と説明した

 

「マスター設定?」

 

「マスター設定ってのは、強化人間の反乱を防ぐのや命令を遵守させるためにする設定だな」

 

簪が首を傾げると、一夏がそう説明した

強化人間というのは、身体能力は軒並みに普通の人間を越えている

それは、見た目が幼いプルシリーズも同じである

彼女達も本気を出せば、並大抵の大人にも勝てる

そんな存在が反乱を起こしたら、どうなるか

それは、推して知るべし

例え強化人間が少人数だろうと、あっという間に基地は陥落するだろう

それを未然に防ぐために有るのが、マスター設定だ

これは、元々人間に存在する服従や忠誠に関する遺伝子を薬物や後催眠暗示で刺激し、マスターに設定された人物に絶対に近い束縛を施すのだ

この場合は

《グレミー・トトに絶対の忠誠心を誓い、守り、戦果を》

となるのだ

しかし、このマスター設定は諸刃の剣なのだ

強化人間というのは、マスター設定された相手をその感応波で強く認識する

それは即ち、マスターが死ぬと、マスターが死んだことも強く認識してしまうのだ

そうなると強化人間は、何をすればいいのか分からなくなってしまうのだ

そして戦闘どころか、普通の行動すらままならくなってしまうのだ

そうなってしまっては、戦場ではいい的だ

結果、プルシリーズはあっという間に壊滅

それに連なるように、プルシリーズを戦力の中心にしていたグレミー軍は、瞬く間にエゥーゴとハマーン軍により掃討されたのである

そして戦場に残ったのは、ハマーン率いるネオ・ジオン軍とエゥーゴ&スピリッツのみとなった

しかし、突如としてハマーン軍も何処かに姿を消したのだ

 

『なんだ……?』

 

『ハマーン軍が………ネオ・ジオン軍が、消えた?』

 

『一体、何が……』

 

三人が不思議そうにしていると、カムナ機が近寄ってきて

 

『理由は分からないが、今は一度母艦に帰投しよう。推進材も大分減ってしまったからな』

 

と言ってきた

確かに、激戦により大分推進材を消耗してしまっていた

敵が居ない今、補給に戻るチャンスだった

そして、それぞれ母艦に帰投して補給を受けようとした

その時だった

直哉が、コロニーの方に機体を向けた

 

『直哉?』

 

『どうした?』

 

二人が問い掛けるが、直哉は返事すらしない

コロニーを見たまま

 

『ジュドーとハマーンが戦っている……』

 

と呟いた

 

『なに!?』

 

『本当か!?』

 

二人は驚くが、直哉は気にした様子もなく

 

『そうだ、ジュドー……お前の思いを告げろ……ハマーンに!』

 

と言った

その直後、コロニーの一角で爆発が起きた

 

『なんだ!?』

 

『何が起きた!?』

 

『ハマーン……お前は……』

 

この時、ジュドーとハマーンの戦いに決着が付いていた

そして、ジュドーが問い掛けていたのだ

 

『なぜ、もっと早くに素直にならなかったんだ。ハマーン!』

 

だが、ハマーンはそれには答えずに

 

『帰ってきて、よかった………強い子に、出会えて……』

 

と言うと、機体をコロニーを構成していた資源小惑星に激突させて自害したのだった

その二人の言葉が、宇宙を走ったのだ

なお、直哉達は知らなかったが、カムナもそれを感じていた

カムナもまた、本人や軍が気づいていなかったNTだったのだ

しかしこの時、ジュドーは危機的状況だった

ジュドーはハマーンと戦闘しながら、コロニーのかなり奥深くまで入っていたのだ

しかも、機体はハマーンとの戦闘により中破

最悪だったのが、戦闘しながらだったので来た道が瓦礫で塞がってしまったのだ

そして、ジュドーが居るのはネオ・ジオンの本拠地

中の構造が分かる訳がない

その時だった

 

『大丈夫……私に任せて……』

 

と弱々しい声が聞こえた

その声は、死んだエルピー・プルによく似た声だった

その声の主は、保護したプルツーだった

 

『プルツー……お前は……』

 

直哉はこの時、プルツーのあることに気づいていた

だが、止めなかった

プルツーの意志を、尊重したのだ

 

『ジュドー……その道を進んで、そう……次の角を右に曲がったら……二番目の角を左に……』

 

プルツーは小さく呟き始めた

まるで、すぐ近くで教えているように

そして、プルツーが呟き始めて数分後だった

 

『つっ! 味方のIFFを確認! これは……ジュドーのだ! ジュドーのコアファイターだ!』

 

ネェル・アーガマのオペレータが嬉しそうに言った直後、喝采が巻き起こった

絶望的と言っても過言ではなかった程の数の差の戦闘

だがしかし、誰一人としてその命を散らすことなく帰還した

正しく、大勝利だろう

 

『プルツー、ありがとう! ……プルツー? どうし………え』

 

『エル、どうしたの?』

 

絶句したらしいエル・ビアンノに、ルー・ルカが問い掛けたが、エルは答えなかった

それどころか、泣きながら

 

『プルツー………なんで……っ!』

 

と言った

実はこの時、プルツーは既に息を引き取っていたのである

その理由は、あのダブリンの後に施された度重なる強化処置

それが、プルツーの命を大幅に削っていたのである

それに加えて、グレミー・トトと共にMAクイン・マンサで出撃

数多いファンネルを、一人で全て操っていたのだ

それが負担となり、救出保護した時点でプルツーの命は風前の灯火状態だったのだ

だと言うのに、プルツーはジュドーを助けるために最後の力を振り絞って、感応波でジュドーに道筋を教えたのだ

そしてプルツーは、満足そうに微笑みを浮かべながら息を引き取ったのだ

この戦闘を最後に、第一次ネオ・ジオン抗争は終結

ジュドー達は退役し、各々の道を選んで進んでいった

そして、次の戦場は絶望的な状況の中で人々の意志が奇跡を起こす


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