ISGジェネレーション   作:京勇樹

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それは、人類の罪………



地獄

大気圏突入したアーガマとスピリッツは、地上のエゥーゴ支援組織のカラバと共闘し、ネオ・ジオンと交戦

更に、ネオ・ジオン軍に呼応した旧ジオン残党もアーガマ隊とスピリッツに襲いかかってきた

しかしアーガマ隊とスピリッツは、カラバと共闘して撃破

そして、ある街に到着した時だった

宇宙のエゥーゴ残存部隊から、恐ろしい通信が来た

それは、コロニー落としだった

その落下予測地点が、今アーガマとスピリッツが居る街

ダブリンだった

それを聞いて、アーガマとスピリッツは動きだした

ダブリンの人々を、助けるために

 

『急げ! 動けない人々が最優先だ!』

 

『コロニーが落ちてくるまで、まだ時間はある! 正確に!』

 

『歩ける人々は、艦まで歩いてください!』

 

MSの手の上には、歩けない怪我人や病人を乗せてアーガマやスピリッツ母艦

更に、カラバの超大型飛行機のアウドムラに街の人々を避難させていた

しかし、幾ら三隻に乗せるとはいえ、限界が来た

 

『これ以上は乗せられないし、そろそろ危険だ!』

 

『出港せよ!』

 

その言葉の直後、三隻は離陸した

だがそこへ、ネオ・ジオンが襲撃してきた

どうやら、コロニー落としに巻き込むつもりらしい

 

『邪魔だ!』

 

『退けえっ!』

 

出撃していたスピリッツとアーガマ隊は、襲ってくるネオ・ジオン軍を次々と撃破していた

その時だった

一機のネオ・ジオン軍MS

ドライセンが、アーガマの直上を取った

 

『敵機直上!』

 

『回避!!』

 

『ダメです! 間に合いません!』

 

スピリッツもアーガマ隊も、アウドムラのMS隊も他のネオ・ジオン軍MS隊の対処で手が回らなかった

だが、その時だった

 

『ヤラセはしない!』

 

と一機のSFS

ドダイ・改が、ドライセンに突撃した

それにより、アーガマは窮地を脱した

しかし、そのドダイ・改はドライセンに撃破された

 

『ハヤト……っ!』

 

『ハヤト艦長!?』

 

そのドダイ・改を操縦していたのは、一年戦争時にアムロと同じように民間人から採用だったハヤト・コバヤシだった

ハヤトの挺身は、決して無駄ではなかった

短い時間だったが、その間にスピリッツのMSが敵機を撃破し、そのドライセンに攻撃をしかけた

それにより不利と悟ったのか、そのドライセンは離脱していった

その直後だった

 

『巨大な質量を検知! これは………コロニーです!!』

 

『全艦及び全MS隊、対ショック防御! 来るぞ!』

 

という通信から、数十秒後

雲の切れ間から、コロニーがその巨大な姿を現した

そして数秒後に、地表に落下した

そこから数十秒間は、凄まじい轟音と衝撃がアーガマ隊、カラバ、スピリッツに襲いかかった

それら全てが収まった後見えた光景に、誰もが息を飲んだ

あれほどの光景を見せていたダブリンの街並みが、跡形も無くなって、巨大なクレーターになっていた

乗せられなかった人々が何人居たのかは、分からない

だが、これだけは言える

残された人々は、決して生きてはいない

そして、ダブリンという街は、地図からその存在を消した……

 

「これが……コロニー落とし……」

 

「一体……何人が……」

 

そう語った彼女達だったが、その声は震えていた

確かに、話には聞いていた

そして、地図でも確認していた

だが実際に見て、その惨状を理解した

理解してしまった

戦争の一面を

 

「こんな地獄を……お前達は、経験したというのか……」

 

その光景を見て、千冬ですら言葉を失っていた

 

「まあな……」

 

「言っておくけど、これは序の口だぜ?」

 

「捨て駒にされたこともあったしな」

 

三人がそう返すと、千冬は息を飲んだ

これ以上の地獄が、まだあるのかと

その時、甲高い警報音が鳴り響いた

 

『12時の方向に敵機確認! これは……サイコガンダムMkーⅡ!?』

 

というラ・ミラ・ルナの悲鳴混じりの報告の直後、三隻とMS隊を幾つもの光条が襲った

だが、どうやら狙いは付けてなかったようで、一発も当たらなかった

そして、ビームが来た方向には確かに、紫色の巨人

サイコガンダムMkーⅡが居た

 

『なんで、サイコMkーⅡが!?』

 

『どうせ、放棄されてたのを回収して直したんだろ!』

 

『戦場じゃあ、敵の兵器を鹵獲するのは常套手段だしな』

 

とスピリッツのメンバーが言った直後、再びビーム

拡散メガ粒子砲が放たれた

MS隊はなんとか避けたが、アーガマの甲板に一発当たった

どうやら、調整が完璧ではないようだ

 

『艦隊は迂回して、戦域を離脱しろ! このデガブツは、俺達がなんとかする!』

 

『了解した!』

 

マークの言葉に従い、三隻は舵を切って戦域から離脱を開始した

すると、ZZ

ジュドーがサイコMkーⅡに近寄り

 

『やめろ、プルツー! お前は騙されてるんだ!』

 

と声を上げた

 

「プルツー?」

 

「ネオ・ジオン軍が作り出した強化人間。そのクローンの一人だ」

 

簪が問い掛けると、一夏がそう返した

すると束が、幼い少女の写真を表示させた

大体、10歳くらいだろう

短く切り揃えたオレンジ色の髪が特徴の少女だった

 

「こんな幼い子供まで……」

 

「それに、クローンだなんて……」

 

流石に想像を絶していたらしく、真耶と虚は言葉が続かなかった

だが、そこで楯無が

 

「プルツーってことは、あの子は二人目ってことじゃないの?」

 

と問い掛けた

それを聞いて、直哉が

 

「楯無さん、正解。通称プルシリーズは、全部で三十人近く居ます」

 

と答えた

そう人数を聞いて、殆どのメンバーは絶句した

三十人もの同一人物のクローン

それは余りにも、人道と倫理に反している

この時、直哉達は語らなかったが、その産み出されたプルシリーズの殆どがこの戦役で散った

しかし、その中で生き残った個体が一人居た

それが登場するのは、少し先の話だ

 

『あっちはジュドー君に任せるぞ! 俺達は他のネオ・ジオン軍MSだ!』

 

『了解!』

 

マークの指示に従い、戦闘を始めようとした

その時

 

『待ってください! トライアド1が!』

 

と女性

マリア・オーエンスが駈る機体

ヴァーチェが、直哉のZを支えていた

 

『直哉!』

 

『大丈夫か!?』

 

SFSに乗った二機が近づくと、直哉が

 

『人々の………哀しみが……』

 

と声を震わせていた

そこへ、色違いのフェニックス

エリス・クロードが近寄り

 

『彼は、NTに覚醒したばかりです。上手く受け流せないのだと思います。今は、少し下がってください』

 

と言った

それを聞いて、弾機の乗ったSFSに直哉機を乗せて下がろうとした

そこへ

 

『おい、プル! よせ!』

 

とアーガマの通信士の声が聞こえた

それと同時に、転進していたアーガマの甲板から一機のMSが出撃してきた

その機体は

 

『プル、なにを!?』

 

それは、今は仲間として受け入れられている少女

エルピー・プルの機体

キュベレイMkーⅡだった

 

『あなたが気持ち悪い理由……私にはよく分かる……だって、同じ私だから!』

 

プルと呼ばれた少女が、幼い声で必死に声を掛けると、サイコMkーⅡから砲撃が次々と放たれた

それはまるで、子供の癇癪のように見えた

だが、その内の一発がキュベレイMkーⅡに当たった

 

『もうよせ、プル!』

 

『やめない!』

 

ジュドーが必死に呼び掛けたが、プルは制止を振り払ってサイコMkーⅡに近づいていく

 

『私は、ジュドーと一緒に居ると楽しい、嬉しい!』

 

プルはそうやって語り掛けるが、サイコMkーⅡは次々と砲撃を放ち、キュベレイMkーⅡに損傷を与えていく

だが、それでもプルは接近していき

 

『だから、ジュドーは私が守る!』

 

プルはそう言うと、スラスターを全開にした

そして

 

『消えちゃえぇぇぇ!』

 

とサイコMkーⅡに、体当たりした

 

『プルゥゥゥ!』

 

ジュドーは涙を流しながら、プルの名前を叫んだ

すると、煙の中から損傷したサイコMkーⅡの姿が現れた

その損傷は甚大で、もはや戦闘出来ないのは一目瞭然だった

だからだろうか、一機のネオ・ジオン軍MSが近づいた

そして、頭部のコクピットからパイロットたるプルツーを救出して、離脱していった

それを合図に、次々とネオ・ジオン軍は撤退

ダブリンでの戦闘は、幕を下ろした


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