ISGジェネレーション   作:京勇樹

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次で終わらせたいグリプス戦役


刻に抗う者達13

機体の補給が終わると、直哉達は再び出撃

宙域を所狭しと駆け回った

そして、ティターンズのMS隊を撃破した時

 

『つっ……カミーユ?』

 

と直哉が、コロニーレーザーの方を見た

 

『どうした?』

 

『カミーユの言葉が、走った……』

 

『言葉が、走った?』

 

直哉の言った言葉の意味が分からず、一夏と弾の二人は揃って首を傾げた

実はこの時、グリプス2内部のある一室でカミーユとクワトロがハマーン・カーンとパプテマス・シロッコの二人と対峙

言葉を発していたのだ

その言葉が強い意志を持って発せられていたので、直哉も感じ取ったのだ

その時

 

『トライアド1、聞こえるか?』

 

とノイズ混じりで、通信が入った

 

『艦長、聞こえます。どうしました?』

 

『オビノ少尉とエーヴィ曹長を見てないか?』

 

ラムザットからの言葉を聞いて、直哉は二人を見た

だが、一夏と弾は首を振っている

 

『いえ、自分達は見ていません』

 

『そうか…………ということは、やはり……』

 

直哉からの報告を聞いて、ラムザットは真剣な表情で小さく何事か呟いている

そして、少しすると

 

『トライアド隊、緊急任務を伝える』

 

と言った

それを聞いて、一瞬にして三人は真剣な表情を浮かべて黙った

 

『今から数分前に、ラクシャサを追撃してオビノ少尉とエーヴィ曹長がコロニーレーザーの射線上に行ってしまい、そのまま通信途絶。未だに連絡すら取れない』

 

ラムザットのその説明を聞いて、三人は目を見開いた

コロニーレーザーは、既に発射態勢に入っていた

つまりは、発射まで秒読み状態

そんな射線上に入ってしまったら、どうなるか

 

『トライアド隊は大至急二人を見つけ出し、射線上から離脱させよ!』

 

『了解!』

 

その命令を聞いて、直哉達も動き出した

繰り返し言うが、コロニーレーザーは既に発射態勢だ

そんな射線上に、捜しに向かわせる

それは、自殺行為に他ならない

そんなこと、ラムザットとて百も承知だ

だが、最後の最後まで仲間を見捨てる訳にはいかないのだ

それが例え、自分達の命を投げ出す行為だと知っていても

直哉達は、機体を最速でコロニーレーザーの射線上まで進ませた

すると、付近のティターンズが次々と直哉達に攻撃してくる

それを直哉達は、避けられるのは避けて、邪魔な敵は一撃で無力化して進んだ

 

『邪魔あ!』

 

『退けや!』

 

『こなくそっ!』

 

時には相手の胴体を蹴り飛ばし、相手の頭部を切り飛ばし、艦橋を吹き飛ばした

一撃離脱戦法を繰り返しながら、直哉達は探した

だが、なかなか見つからない

その時だ

 

『一夏、弾! 離脱するぞ!』

 

と直哉が声をあげた

先を見ると、コロニーレーザーの砲口が眩く光輝いていた

臨界状態だ

 

『ちいっ!』

 

『見つからなかったか!』

 

二人は舌打ちしながらも、直哉に続いて離脱を始めた

その時、直哉は見つけた

白地に青いラインが入ったリックディアスを

ビーコンを確認するまでもなく、そんなカラーリングのリックディアスはたった二機だけ

アレイオーン所属の、ルシアン・ベントとソウイチ・オビノの二人のみ

だがもう、間に合わない

次の瞬間、コロニーレーザーが発射された

その光の濁流は、瞬く間にオビノ機を呑み込んだ

そして数秒後、コロニーレーザーが通過した場所には残骸しか残っていなかった

 

『……つっ』

 

『これじゃあ、オビノ少尉とエーヴィ曹長は……』

 

と二人が諦めかけた時、直哉がキーボードを叩きだした

 

『直哉?』

 

『一体、どうした?』

 

二人が問い掛けると、直哉は高速でキーボードを叩きながら

 

『二人はまだ、生きてるかもしれない!』

 

と答えた

それを聞いて、一夏と弾は目を見開いた

 

『先程、オビノ機がMSのコクピットポッドを抱き締めた状態で艦艇の通信アンテナの陰に隠れていた!』

 

それは、咄嗟の判断かもしれなかった

それは、ほんの僅かな希望だった

オビノ機はエーヴィ機のだと思われる脱出ポッドを抱き締めた状態で、アイリッシュ級の艦橋部分の残骸

それの通信アンテナに、トリモチを使って機体を固定していた

それは、恐らく賭けだったのだろう

艦艇の通信アンテナは、至近距離での高出力レーザー通信に耐えるために対レーザーコーティングが施されている

それと、リックディアスを使って耐えようと考えたのだと

そして計算が終わり、直哉はある方向に視線を向けた

その直後、直哉達のすぐ近くをオビノ機とは違う白地に青いラインが入ったリックディアスが通り過ぎて、直哉が見た方向に向かった

どうやら、救出に向かったらしい

そのことに、三人は安堵した

その直後、直哉がある方向を見た

その方向に有ったのは、一隻の大きな艦艇

地球・木星間航行艦のジュピトリス

パプテマス・シロッコの座乗艦だ

 

『カミーユっ!』

 

『なに?』

 

『カミーユがどうした?』

 

直哉の言葉に二人が問い掛けたが、直哉は答えずに目を閉じて

 

『俺の力も、使え……』

 

と言った

その直後、直哉の機体から不思議なオーラが溢れた

それを見て、この時の二人だけでなく誰もが息を飲んだ

 

「この現象は、後にサイコフィールドと呼ばれます。NTの力がサイコミュ装置で増幅されたもので、俺達が見た中にはコロニーレーザーを受け止めたものもありました」

 

直哉の説明を聞いて、全員絶句した

あの破壊の光の奔流たるコロニーレーザーを、受け止めたというのが信じられなかったからだ

そして、数秒後

 

『シロッコ……お前のその考えは、傲慢なんだよ……天才が居たって、他に人間が居ないと世界は動かないんだっ!』

 

と言った

その直後

 

『ぐっ!?』

 

と呻いたかと思ったら、直哉が被っていたヘルメットのバイザーが砕けた

 

『直哉!?』

 

二人が驚くと、直哉はバイザーが砕けたヘルメットを脱いで

 

『俺は、大丈夫だ』

 

と言って、ヘルメットを予備のものに替えた

ふと気付けば、ジュピトリスの艦影が無くなっている

どうやら、轟沈したようだ

そのジュピトリスが存在していた方向を数秒間見てから、直哉が

 

『母艦に戻ろう……』

 

と言って、母艦への帰投コースに入った

この戦闘により、ティターンズは事実上で壊滅

これにてグリプス戦役は終わったと思われた

だが、まだ終わらなかった

帰還して少しした後に、直哉達は恐るべき計画を知ることになる


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