ISGジェネレーション   作:京勇樹

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それは、覚醒の兆し


刻に抗う者達8

映ったのは、旧ジオン公国軍呼称ではソロモン

現在呼称は、コンペイトウだった

これから行われるのは、エゥーゴのコンペイトウ攻略作戦だった

この作戦には、エゥーゴの全戦力の内の約二割の戦力が投入されている

約二十隻の艦艇に、MSは優に百機を越えている

その戦力の中に、デルフォイ隊と直哉達が居た

彼等がこの作戦に参加している理由は、ただ一つ

このコンペイトウに囚われている、ダニカを助けるためだ

これは、このコンペイトウに居るエゥーゴの賛同者から得られた情報だった

しかも、コンペイトウに居る一般連邦兵は、エゥーゴの作戦に合わせて武装蜂起する算段らしい

デルフォイ隊と直哉達に課せられた任務は二つ

第一にダニカの救出

第二に、武装蜂起した連邦兵の援護及び救出

本来ならば、優先順位は逆なのだろう

しかし、彼等にとってはこれで正解だった

直哉達にとっては、大事な仲間

そして、ヴァンにとっては替えがたい半身

だから、何がなんでも取り返す

そして、いよいよ作戦開始の時間になった

 

『トライアド隊、全機出撃せよ!』

 

『了解! トライアド隊、出撃します!』

 

エイブラム艦長の指事に従い、直哉達は次々と出撃

コンペイトウに対して、進撃を始めた

とはいえ、本格投入は第二陣の予定だが

それに対して、ティターンズも迎撃を開始した

要塞各所と途中途中にある砲台や、人工衛星によるミサイルの迎撃

ミサイル程度ならば、MSに固定装備されているバルカン砲で対処が可能だ

問題は、ビーム砲だ

要塞固定砲台のビームの威力はMSを遥かに越えているし、砲身が過熱状態にもなりにくい

なによりも、発電可能量が段違いだ

激しい砲火に晒されて、エゥーゴ側のMSが大破、または撃破されていく

しかし、エゥーゴ側とて黙ってヤラれていく訳ではない

布陣していた艦隊から、次々と砲撃が放たれて、エゥーゴのMS部隊を追い越していく

そして、その砲撃により砲台や人工衛星が破壊されていった

それにより、弾幕の隙間が少しずつ広がっていく

そして滔々、ティターンズのMS部隊と交戦を開始した

ノイズ混じりに聞こえる通信を聞く限り、緒戦はエゥーゴが優勢のようだ

しかし、一体どういう皮肉だろうか

今の状況は正しく、一年戦争のソロモン攻防戦の再現だった

いや、グリプス戦役自体が一年戦争とまったく瓜二つだった

かつては地上を席巻し、一大勢力だったティターンズ

しかし、その非道さが明るみに出たら、地上での拠点は全て失い、今や宇宙での勢力図も徐々に失いつつあった

しかし、嫌な情報もあった

それは、ティターンズが禁断の兵器たるコロニーレーザーを建造したというものだった

詳細は今は不明で、エゥーゴの諜報班が動いている

今はそれを気にするよりも、目の前の戦場に意識を向けよう

直哉達がそう思い、レバーを握り直した

その時だった

直哉達より前に布陣していた艦隊の右翼端で、爆発が起きた

 

『なんだ?』

 

『………奇襲だ!』

 

一夏の疑問に対して、直哉が声を上げた

映像を拡大すると、一隻の緑色

エゥーゴカラーに塗装されたサラミス級が、真っ二つになって轟沈

もう一隻が、艦橋を潰されて隊列から落伍していた

 

『HQより、スピリッツ及びデルフォイに通達! 両隊は今すぐ前進し、右翼艦隊のカバーに入れ!』

 

『了解! 聞いたな? お前達は先行し、右翼艦隊のカバーに入れ!』

 

『了解!』

 

艦長の命令を聞いて、直哉達とヴァンが動き出した

ガンダムたる四機は他の機体より機動力が高い

故に、先行し味方のカバーに入れる

直哉達四機が突入すると、見えたのは母艦が撃沈されたことで混乱している様子の味方MS部隊だった

数で言えば、エゥーゴ側の方がまさっていた

しかし、相手は精鋭と名高いティターンズ

その実力差は、高かった

相手は一個小隊だと言うのに、中隊規模たるエゥーゴ側MS部隊を押していた

その動きだけで、相手が手練れと分かった

旧式のジムⅡだというのに、比較的新型機たるネモを相手に勝っている

今正に、一機のネモの腕を切り飛ばした

そのタイミングで、直哉達が介入した

 

『こいつらは、こちらで引き受ける! 下がって態勢を建て直せ!』

 

『すまない!』

 

直哉の言葉を聞いて、護衛MS部隊は後退していった

そして、一夏がビームトライデントで斬りかかろうとした

その時だった

 

『一夏、待て!』

 

『あ?』

 

直哉が静止し、一夏は反射的に従った

その直後、真上から大威力のビームが駆け抜けてジムⅡが吹き飛んだ

もし、ジムⅡと切りあっていたら、巻き添えは確実だっただろう

 

『なっ!?』

 

『貴様か………バーダー!!』

 

直哉機が上を見ると、遥か彼方にその機体は見えた

マンボウを彷彿させる縦長

その両側面からは、三つ指式の巨大なクロー

しかも、MSとは比較にならない火力と機動性

それは、MAだった

 

『このっ!!』

 

『ヴァン君! っちぃ!?』

 

ヴァンがそのMAに突撃し、直哉達も追いかけようとした

だが、残っていたジムⅡが離れていくサラミス級に対して攻撃しようとしたので阻止

ジムⅡと交戦を始めた

ジムⅡ二機はどうやら、直哉機に狙いを絞ったらしい

直哉機に対して、執拗に攻撃を仕掛けた

しかし直哉は、その攻撃を必要最低限の動きだけで回避

片方のジムⅡの頭を掴むと、もう一機のジムⅡにぶつけた

そして、ビームサーベルでコクピット部分を突き刺して撃破した

僅か二十秒足らず

たったそれだけで、直哉は手練れ二機を撃破した

一夏と弾の援護すら、必要としなかった

 

『直哉……』

 

『お前……』

 

『……行こう、ヴァン君の援護だ』

 

一夏と弾の言葉を聞き流し、直哉はそう言うと動き出した

この時、直哉はNTに覚醒しつつあったのだ

だから、手練れ二機の動きを読んで撃破したのだ

この時の一夏と弾には、それがまるで、アムロ・レイのように見えたのだった


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