ISGジェネレーション   作:京勇樹

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刻に抗う者達7

捕虜交換は予想外の出会いがあったものの、無事に終了

中立コロニーでの捕虜交換後、戦闘が起きた

とは言え、短時間で終了した

その理由の一つとしては、ティターンズ部隊の足並みが揃っていなかったこと

これは、サラミス級巡洋艦の艦長が功を焦って独断専行をして、艦載MS隊が全滅して、艦も中破したのだ

なお、これを助けたのがアーネストとロスヴァイセが乗る、もう一隻のサラミス級だった

そして、二つ目

ヴァンが乗るガンダム

ガンダムケストレルとロスヴァイセの機体のガブスレイ

この両機体のサイコミュシステムが繋がり、二人の脳波が繋がったのだ

それにより、ロスヴァイセに過大なストレスが発生

ロスヴァイセは行動不能に陥った

それに気付いたアーネストは、直ぐ様ロスヴァイセ機を回収し離脱していった

この現象が起こった理由は、ガンダムケストレルが元々、NT研究所で開発されたからだった

ガンダムケストレルはロスヴァイセが作られたオークランド研究所で、作り出される強化人間用ガンダムタイプのテストベッド機体として健造された

だから、ガンダムケストレルに登載されていたサイコミュ装置に、ロスヴァイセを含めた十数人分の脳波パターンが登録されていた

そこに新たに、強化人間ではないが、ヴァンの脳波パターンも登録された

それにより、二機のサイコミュ装置が繋がったのではないか。とされている

ではなぜ、そんな機体がエゥーゴにあるのか

簡単に言うならば、NT研究所も一枚岩ではない

ということだ

閑話休題

なお撤退していくティターンズを、直哉達は追いかけなかった

エゥーゴとしては、貴重な人員を消耗する訳にはいかないのだ

故に追撃はしなかった

そして、交換した捕虜を不足していたデルフォイのクルーにするのが決まった

そんな場当たり的な命令を聞いて、デルフォイの艦長たるクリスティアン・カーク少佐は

 

『そんな場当たり的な編成で、本当にイケると思ったのか。上の連中は』

 

と悪態を吐いていた

なお、このクリスティアン・カーク少佐は、ヴァンとダニカの二人が通い、アーネストが教官を務めていた士官学校の教官長だった

実直でありながらも人情味に溢れ、当時の訓練生達からは人気の高い教官長だった

なお、ヴァンがティターンズに捕まりダニカがケラウノスと連絡するために頼った人物でもある

そして、このクリスティアン・カーク少佐は少々変わった経歴の持ち主だ

一年戦争初期まではマゼラン級戦艦の操舵手を務め、ルウム海戦でMSの脅威を目の当たりにして、MSパイロットに転課

一年戦争を生き抜き、デラーズ戦役も生き残った

そして、一度はティターンズに誘われたが、彼はジャミトフ・ハイマンとバスク・オム両名の事が好きではなかったので、断った

その後、教官長に呼ばれて、その任に就いた

そして、今に至る

閑話休題その2

デルフォイは上層部からの命令通りに、交換した捕虜にて人員不足を解消した

それにより、慣熟訓練も兼ねてサイド2へと向かった

このサイド2は、《ダカールの演説》後にエゥーゴの支持を表明したコロニー群だ

ダカールの演説

それは、地球連邦の首都たるダカールにてエゥーゴの代表

クワトロ・バジーナこと、シャア・アズナブルが行った演説だ

この演説はダカールにて行われていた連邦政府の会議を占拠し、この会議を中継していたテレビを使って、ティターンズの非道さを問いただすために行った演説だった

この演説が行われるまで、地球に住む一般庶民やティターンズ派だったコロニーや中立だったコロニーの住民達にとっては、ティターンズは連邦政府直轄の特殊精鋭部隊という認識だった

だが、この演説が終わった頃には、その認識はすっかり真逆になっていた

もちろんだが、エゥーゴにも非はあった

本来、このダカールは戦闘行為禁止区域だ

そのダカールにて行われていた会議を、エゥーゴは武力でもって占拠

演説を始めた

このまま演説をしていたとしても、イメージは変わらなかっただろう

だが、ティターンズは自らボロを出したのだ

この演説が始まって少しした時、ティターンズが演説の中継を止めるために部隊を派遣したのだ

その目的が、演説の中継を行っていたテレビ局の破壊だったのだ

それに気付いたエゥーゴ側は、直ぐ様迎撃を開始

演説を最後までする為に

何よりも、民間人への被害を出させないために

この迎撃戦闘には、スピリッツの本隊の半数も参戦していた

民間人を守るために

だが、エゥーゴとスピリッツの総合数よりもティターンズのMS部隊のほうが多かった

しかも、エゥーゴとスピリッツ隊は戦いにハンデがあった

それが、市街地での戦闘回避

並びに、市街地上空で戦う時に、ライフルや遠距離武装の射線上に市街地が入った時は攻撃しないこと

この二つのハンデにより、幾らスピリッツとて戦い辛かった

結果、ティターンズの市街地への浸入を許してしまった

もちろん、エゥーゴとスピリッツ隊は何回も追い返した

しかし、ティターンズは諦めず侵攻

とうとう、エゥーゴのMSが一機撃破されて市街地に墜落した

それに気付いたエゥーゴ側は、民間人に被害が出ないように倒壊したビルなどの瓦礫をMSを使って弾いた

だが、ティターンズはそれを狙ってミサイルを大量に発射

エゥーゴとスピリッツ隊はミサイルを迎撃したが、全ては撃墜出来ずに着弾

市街地はあっという間に地獄絵図に変わった

だがその光景は、テレビで世界中に放送されていた

その後も戦闘は続き、戦況は一進一退だった

だがその時、ダカール防衛のMS部隊が接近してきた

エゥーゴとスピリッツ隊はそのダカール防衛MS部隊を、ティターンズ側への増援部隊だと思っていた

何故なら、今の連邦軍はティターンズの指揮下に入っていたからだ

だが、実際は違った

そのダカール防衛MS部隊は、ティターンズを制止したのである

 

『これ以上の、ダカール市街地での戦闘は見逃せない。直ちに停戦せよ』

 

普通ならば、これで戦闘は終わるだろう

しかし、ティターンズは

 

『エゥーゴの賛同者が!!』

 

と言って、ダカール防衛MS部隊を撃破したのだ

その後、ダカール防衛MS部隊も巻き込んで戦闘は再開された

この光景も放送されており、分が悪いと判断したのか、少しするとティターンズは撤退

ダカール戦闘は終了した

これを期に、世論は徐々にエゥーゴへと傾いたのだ

そしてティターンズは、自滅の道を歩んでいくことになる

話しを戻して、直哉達はサイド2に向かう途中でラーディッシュと邂逅した

 

『こちらは、ラーディッシュMS部隊隊長のエマ・シーンです』

 

『こちらは、デルフォイ所属、ヴァン・アシリアイノと言います』

 

「スピリッツ所属、トライアド隊隊長の神埼直哉です」

 

直哉が自己紹介すると、エマ・シーンが驚いた表情を浮かべた

 

『あなた、若いわね……年は?』

 

「もうすぐで、14ですかね」

 

直哉達の年齢を聞いて、エマ・シーンは絶句した

直哉達の年齢は、子供と言って差し支えないだろう

しかし、スピリッツは簡単に言うと愚連隊

居場所が無くなった者達の寄り合い所帯だ

 

「本隊には、俺達より小さい子供が居ますよ」

 

直哉は驚いた理由を察したのか、そう語った

その時、ヴァンが

 

『前方、メガ粒子の光を確認!』

 

と叫んだ

それを聞いて、直哉とエマの表情が変わった

 

「こちらでも確認しました……サラミス級のメガ粒子砲と推測」

 

『しまったわね……ここら辺はこちらの勢力圏内だから、油断したわ。AE社からの輸送船が襲撃されてるみたい!』

 

エマがそう言うと、ラーディッシュから通信が入り

 

『こちらはラーディッシュのヘンケン・ベッケナー中佐だ! ティターンズのサラミス級が三隻。AEからの物資輸送船を襲ってる! 今外に居る連中、出られるか?』

 

『私は何時でも』

 

『僕も行けます』

 

「こちらは何時でも」

 

三人はそう返し、機体の出力を戦闘モードまで上げた

 

『よし、じゃあ頼んだ! 今、エゥーゴの戦力は日増しに増えてる! 沈めて構わない!』

 

『了解!』

 

三人は返すと、一気に加速してラーディッシュから離れた

ラーディッシュからの支援砲撃が始まるが、輸送船に当たらないように配慮しているので弾幕は薄い

 

『僕と彼が前に出ます。エマさんは、支援砲撃を頼みます』

 

「スーパーガンダムでは、近接戦闘は不向きです」

 

『分かったわ、御願いね。こちらも、出来る限り支援するわ』

 

エマはそう言うと、スーパーガンダムに装備されてるロングライフルを構えた

そして、ライフル発射と同時にミサイルも発射した

数秒後、複数の爆発が発生

そこに、ヴァンのガンダムケストレルが推力を最大にして切り込んだ

その間に直哉機が、AE社の輸送船に近づき

 

「貴方達はそのまま進んでください。こちらで押さえます」

 

と接触回線で言うと、ヴァンと同じように切り込んだ

その時、一機のマラサイがケストレルの背後でビームサーベルを振り上げているのが見えた

 

「ヴァン君!」

 

直哉は急いでライフルを構えたが、誰もが間に合わないと思った

しかし、ケストレルは右肘のビームブレイドを出力させながら反転

辛うじて防いだ

 

「そうか……サイコミュ装置……確か、シャーマンシステムだったか」

 

直哉はそう言うと、マラサイを狙ってビームを撃った

本体への直撃は回避したが、マラサイは右足を喪失

離脱していった

 

「ヴァン君、大丈夫か?」

 

『なんとかね……機体のおかげだよ』

 

ヴァンはそう言うと、離れていったマラサイを見て

 

『また、バーダー少佐か……』

 

と呟いた

どうやら、あのマラサイはバーダー少佐だったらしい

こう何回も会うと、もはや因縁めいている

ヴァンと直哉の二人は気を取り直すと、他のMSへと突撃した

数では、直哉達のほうが負けている

だが、腕に於いては負けてはいない

直哉達は一機ずつ確実に、ティターンズを撃破していった

そして、エマの砲撃で最後のマラサイも吹き飛んだ

その隙に、直哉とヴァンは逃げようとしていたサラミス級二隻に接近を始めた

どうやら、一隻は逃げたらしい

味方撃ちも平気でするバーダーらしい

二隻は機銃を撃ちながら転進するが、逃がすほど直哉とヴァンは甘くはない

二機は機銃を避けながら、それぞれ別々のサラミス級の下方に向かった

そこは、サラミス級の構造上で、最も砲撃が薄い場所だ

ヴァンは楯としても使えるビームマドゥを展開

直哉は両腕のガトリングガンを展開すると、一気に船底を攻撃

最後に、ヴァンはビームライフルを、直哉はメガ粒子砲を発射し撃沈した

そして、少年達は大規模作戦に参加する

仲間であり、愛しき少女を救うために

 

なお、一部の少女達は大人の魅力溢れるエマを見て、両手両膝を突いた


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