ISGジェネレーション   作:京勇樹

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まだ続く、刻に抗う者達


刻に抗う者達6

直哉達は宇宙に上がり、そして、直ぐに戦闘が始まった

映ったのは、巨大な花のような物体だった

 

「なにあれ!?」

 

「あれも、コロニーなの?」

 

それを見て鈴は驚き、シャルロットは質問した

すると、直哉が

 

「これは、エゥーゴに協力している企業。アナハイム・エレクトロクス社の巨大ドック船のラビアンローズだ。艦艇やMSの修理、改修をする船だ」

 

と説明した

その直後、そのラビアンローズから次々とMS部隊が出撃を開始

その中に、直哉達の機体もあった

向かった先には、ティターンズのサラミス級巡洋艦が居た

数は二隻

最大で十二機のMSが出てくる

エゥーゴ側のMSは、直哉達を入れて十二機

数では互角だ

だが直哉達は、ティターンズの戦力に疑問を覚えた

 

『なあ、ティターンズの戦力……』

 

『ああ、少ないよな……』

 

『普通、ラビアンローズクラスのサイズなら大隊規模のMSが居ると思うだろ』

 

三人がそう話し合っていたら、二機のMS

メタスとネモが反転してきた

その二機のパイロット達もどうやら、ティターンズの作戦に気付いたらしい

 

『やはりな……ラビアンローズの上と下に、サラミス級が一隻ずつ!』

 

『間に合えっ!』

 

『ちいっ!』

 

三人は歯噛みしながら反転し、最高速で戻った

だが

 

『ああ……動いたか、ヴァン君』

 

と直哉が言った直後に、ラビアンローズから一機のMSが出撃

ビームを撃った

そのビームが直撃したマラサイは、腰部から真っ二つになって爆散した

その威力は、通常のビームライフルの威力を凌駕していた

そのビームを撃ったMS

ガンダムタイプは、凄まじい速度で下方のサラミス級に迫っていく

そのガンダムを食い止めるためだろう

ティターンズの残存MS部隊とサラミス級は、そのガンダムタイプに対して砲撃を開始した

しかし、ヴァンが駈るガンダムは通常のMSでは有り得ない機動でビームを回避

ビームを放った

そのビームを避けられないと悟ったのか、ハイザックは楯を構えて防御態勢を取った

だが、その楯すら貫通して、ハイザックは爆散した

 

『うはっ! 楯すら貫通するとはな』

 

『トンでもない威力だな』

 

『無駄話はそこまでだ。俺達は上のサラミス級をヤルぞ。分かってるだろうが、サラミス級は拿捕する』

 

『『了解!』』

 

直哉の指事に二人は短く返答すると、行動を開始した

上のサラミス級は下のサラミス級MS部隊と同調して攻撃するつもりだったからか、動きが遅くなっていた

どうやら、慌てているらしい

だがそれを見逃すほど、直哉達は甘くはない

直哉達は素早く接近し、対空機銃を破壊

そして、包囲した

 

『チェックメイトだ』

 

直哉が艦橋の真上に位置し、一夏は下

弾は艦橋の後ろに着いた

 

『こちらは無闇な殺しは望まない。降伏しろ』

 

直哉が接触回線を開いて勧告すると、通信回線越しに口論が聞こえた

その数秒後、突如銃声が響き渡った

その銃声に全員が緊迫感を感じた

すると、通信で降伏すると告げられた

それに全員が安堵していると、正面のサラミス級に向かったMS部隊が直哉達に近寄ってきた

どうやら、正面のサラミス級二隻は撤退したらしい

直哉達はそのMS部隊にサラミス級を任せると、帰投コースに入った

ふと気付くと、ヴァンのガンダムタイプとルシアンのホワイトコーラルが近くに居た

どうやら、ヴァンとルシアンもサラミス級を拿捕したようだ

こうして、宇宙に上がってからの初戦は幕を下ろしたのだった

 

「この後俺達は、このサラミス級の一隻を使って編成された部隊。デルフォイと一緒に、捕虜の交換をするために中立コロニーに向かったんだ」

 

「そこで俺達が出会ったのが、ダニカの兄のアーネスト・マクガイア」

 

「そして、強化人間のロスヴァイセだった」

 

三人がそう説明すると、その二人の顔写真が表示された

表示された顔写真を見て、メンバーは驚いた

強化人間たるロスヴァイセが、幼かったからだ

その顔から、中学生か高校生成り立てという感じだったからだ

充分に、まだ少女と呼べる年齢だった

 

「なお、ロスヴァイセというのは、強化人間としての開発コードと後で分かった」

 

「本名は、イシロギ・ユズ」

 

「なんでも、生まれつきで心臓病を患っていたらしい。で、人工心臓移植費用を免除する代わりに、強化人間の実験体とする約束だったらしいな」

 

宇宙世紀に於いて、様々な生体義肢や内臓が開発された

しかし、一年戦争を境に地球圏全域に散布されるようになったミノフスキー粒子

このミノフスキー粒子は電波だけでなく、様々な電子機器にも悪影響を及ぼした

軍事面で言えば、レーダーや通信の悪化だけでなく、ミサイルの精密誘導装置

民間で言えば、携帯やテレビ。そして、医療機器や人工義肢等に動作不良を引き起こした

軍や民間企業は、もちろん対策を行った

ミノフスキー粒子の悪影響を極力無くすようにした

しかし、対策を実施するに伴って、当然ながらコストも掛かる

それに比例し、価格も跳ね上がったのだ

こうなると当然のように、一部の富裕層しか手が出しにくい状況になる

当然ながら、民間企業もなるべく費用を抑えるように努力した

しかし、焼け石に水

どんなに安くしようが、最低でも数百万はした

しかし、ユズの父親だった研究者にはそんな大金は残っていなかった

故に、ユズの父親は断腸の思いで条件を飲んだのである

少しでも、娘に長生きしてほしかったから

長生きして、素敵な恋をしてほしかったから

それを聞いて、千冬は

 

(その父親の気持ちは、痛いほど分かる……私とて、一夏が大病を患ったら、あらゆる手段を取っただろう……だが……)

 

と思い、写真を再度見た

まだ幼い少女を、兵器とする強化人間計画

それの非道さに、千冬は強く拳を握り締めた

 


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