ISGジェネレーション   作:京勇樹

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刻に抗う者達2

映ったのは、本当に小さな島だった

恐らく、数十人がギリギリ住める位だろう

その島に、直哉達三機とケラウノス隊の三機が展開していた

そして、その島に接近してくるティターンズのMS部隊

 

『ダニカ、敵の数は?』

 

『17……いえ、18!』

 

『二個中隊規模か……』

 

『過剰な戦力だな、おいっ!』

 

ダニカからの報告を聞いて、直哉達は悪態を吐いた

一連の会話を聞いて、箒が首を傾げて

 

「二個中隊? ならば、24機ではないのか?」

 

「……多分、4機が小隊の定数だけど、3機編成なんだと思う。それで、9機で一個中隊」

 

箒の疑問に、簪がそう答えた

すると、弾が指を鳴らして

 

「簪、正解。特に、一年戦争が終わってから軍備縮小が進んでたからな。それが顕著だ」

 

と肯定した

そうこうしてる間に、ティターンズのMS部隊は大分接近してきていた

それを見たからか、直哉がティターンズ部隊を指差して

 

『弾、開幕の花火だ。盛大にぶっ放せ!』

 

と指示を出した

 

『了解!』

 

弾は指示を聞いて、ライフルを連結し構えた

次の瞬間、極太のビームが発射された

そして、ビームを放った直後に今度は両肩のランチャーからミサイルを一斉発射した

数秒後、弾が

 

『っしゃあ! 4機撃破っ! つか、かなり後方にザクフリッパーとかレア物が居るぞ?』

 

と言った

 

『マジか。よく稼働機体があったな』

 

『お喋りは後だ。こっちに団体客だ! 出迎えるぞ!』

 

『了解!』

 

『じゃあ、後は手筈通りに』

 

ルシアンの言葉を皮切りに、全機体は一斉に動き出した

数としては、直哉達の方に8機

ケラウノス隊に6機向かった

 

『相手は全部、ジムⅡか………』

 

『近くの基地からかな?』

 

『推測は後回しだ。来るぞ!』

 

直哉がそう言った直後、弾の迎撃を生き残った機体がSFSから降下してきた

直哉達は一機でも減らすために、対空砲撃を開始した

しかし、相手は仮にも精鋭たるティターンズ

三機が放った砲撃は、悉く防ぐか回避した

そして、敵MS部隊は着陸

機動戦闘に入った

その中で一番動いてるのは、格闘型の一夏機だった

一夏機は相手の中に突入し、高い機動性と軽やかなステップを駆使して撹乱しつつ攻撃

相手は味方誤射を恐れたのか、格闘戦を挑んできた

だが、それは悪手だった

一夏機は相手の攻撃を軽く避けると、ビームトライデントを振り回して不用意に接近してきていた三機を切り裂いた

その光景を見たからか、他の機体は離れてビームライフルで攻撃しようとした

だが、それは直哉と弾によって阻まれた

二人は牽制射撃をして止めると、一夏機を挟むように布陣

弾はライフルを連結させると、対装甲散弾砲で二機纏めて撃破した

直哉はビームライフルを連射し二機撃破、そして最後の一機は盾でコクピット部分を殴って、潰して無力化した

 

『よし、俺達の方は終わったな』

 

『彼らは……』

 

『終わったらしい』

 

三機が見てみると、ケラウノス隊は罠を駆使し、陸戦部隊と連携してジムⅡを全て撃破

更に、一機のジムクゥエルを戦闘不能にしていた

その時だった

一機の黒い機体が、崖下から上昇してきた

 

『増援か!?』

 

『新型か!? 特定出来ない!』

 

『ハイザックをベースにしたカスタム機体? しかし、このGは……普通のパイロットじゃない! 強化人間か!?』

 

三人の会話を聞いて、真耶が

 

「強化人間とは?」

 

と問い掛けた

 

「一年戦争を境に確認された存在、NTを人工的に再現しようとした人間。それが、強化人間です。外科的手術、薬物投与、催眠術、あらゆる手段で人間を越えた人間を作り出すんです」

 

直哉の説明を聞いて、誰もが息を飲んだ

それは、倫理を無視した方法だと

だが、何か気になったのか

 

「そもそも、NTとはなんだ?」

 

とラウラが問い掛けた

それを聞いた直哉は、忘れてたと呟いて

 

「NTというのは、新しい環境たる宇宙に適応した人間です。意識の拡張、脳波の増大、感受性の向上などが起きた新しい人類です。ジェネレーションワールドでは、呼び方は様々ですが、新しい人類が多数確認されてます。そして、俺はNTです」

 

と説明した

新しい環境に適応した人類

宇宙に適応した、人類

それが、NT

他にも、進化した人類が居る

それはいい

しかし、それを人工的に再現する

それは、狂気を孕んだ研究に他ならない

 

「NTは、戦うための存在じゃない……ですが、NT研究所の研究者達は、NTの兵器としての力のみに着目し、体を弄くりまわし、薬物で強化した……そして、人工NTたる強化人間を実戦に投入した……兵器としてね」

 

「グリプス戦役中に何人投入されたのかは、俺達は知りません……」

 

「ですが、狂気の研究によって多数の犠牲者が出たのは確かです……それと同時に、助かった人も居た……後に分かったことで、病気で余命幾ばくもない子供が被験者になる代わりに、病気を治療されたというのも居ましたから」

 

三人の説明を聞いて、殆どのメンバーは目を伏せた

強化人間計画

確かに、功績もあっただろう

しかし、余りにも罪の方が大き過ぎる

人道を逸脱した研究により、兵器となる若者達が産み出され、戦場に投入

それを、地球連邦軍は行っていた

そして、映像で一人の強化人間が現れた

 

「……っ」

 

ラウラは、強く歯を食い縛り、拳を握り締めた

彼女は、遺伝子改良されて産み出された存在だ

遺伝子強化素体(アドヴァンスド)

ある意味、同類とも呼べるだろう

だがそのラウラの肩に、シャルロットが手を置いた

ラウラが視線を向けると、シャルロットは微笑んでいた

それを見て、ラウラは頷いて視線を戻した

 

『ちいっ!? 太陽を背にされたか!!』

 

『ヴァン君を執拗に狙ってるのか……何があった?』

 

『そんなことより、牽制でいい! 撃て!』

 

直哉の指示の直後、一夏と弾は直哉と一緒に砲撃を開始した

しかし、牽制と分かっているのか、相手は回避行動すら取らなかった

 

『ちいっ! このままじゃあ!』

 

一夏が舌打ちした時、ジム改がソーラーパネルを背にした

 

『上手い! あれなら、太陽光が反射する!』

 

ヴァンの考えに気付き、直哉は称賛した

その直後、ジム改はビームライフルを発射

敵のハイザック《ヴァナルガンド》に当てた

それにより、ヴァナルガンドのバックパックは爆発

ヴァナルガンドは高度を失った

だが、まだ戦えたらしい

ビームライフルを連射してきた

 

『ちいっ! まだ動けるか!』

 

『どんな改造機体だ!!』

 

と一夏と弾が悪態を吐いた直後、別の方角からビームが放たれてヴァナルガンドに当たった

それにより、ヴァナルガンドの両足が破壊され、ヴァナルガンドは倒れた

ビームを放ったのは、ケラウノス隊が移動に使っていたドダイだった

どうやら、有人機だったようだ

それにより、ヴァナルガンドは戦闘不能になった

その直後、遠方で信号弾が上がった

どうやら、撤退信号らしい

一機のジムクゥエルがゲターに乗り、もう一機のゲターを使ってジムクゥエルとヴァナルガンドを回収

離れていった

こうして、尊き命を守る戦いは終結

抗う者達は、次の戦場に向かう

巨人達から、命を守るために




直哉の持ち物
サイフ
ハンカチ
拳銃
予備弾倉8
ナイフ2
胃薬&頭痛薬(瓶)←

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