ISGジェネレーション   作:京勇樹

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ようやく、デラーズ戦役も終わった
次だ


戦争なんだから、仕方ないよね………


追撃、終戦。そして………

「シーマ艦隊がコロニーを襲い、移動を始めさせたという情報を得た俺達は、追跡を開始」

 

「同じように、観艦式に参加しなかった連邦軍宇宙艦隊も動き出した」

 

「当初は、月の月面都市の一つに落ちると予測された。だが、それは覆された……」

 

三人がそう説明していると、航路が表示された

そして、同じようにコロニーの移動経路も映された

その経路は確かに、月面へと落ちるものだった

しかし、それが覆されたのはコロニーが月面に近付いた時だった

 

「追跡してた俺達は、コロニーが月面都市に落ちる前に破壊しようとした」

 

「だけど、月面都市にもジオン残党が居たらしく、予想外の出来事が起きた……」

 

「月面のレーザー照射装置が起動して、コロニーのスラスターにレーザーを照射……それによって、コロニーが加速。落下軌道を脱して……地球へ向かう軌道になったんだ」

 

三人のその説明を聞いて、数人が息を飲んだ

そして、誰かが小さく

 

「地球への……コロニー……落とし……」

 

と呟いた

そう

デラーズ・フリートの星の屑作戦

その真の目的は、地球へのコロニー落としだったのだ

それに気付いた連邦宇宙艦隊の動きは早く、コロニーを追撃した

しかし、レーザーによって加速していたコロニーに追い付く艦は無かった

快速を誇るスピリッツの母艦と、同じレーザーで加速するアルビオン以外は

さらにシナプス少佐は、事態を少しでも正確に把握

及び、少しでも早く戦力を投入するために、GPー03を吶喚させることにした

それにより、ウラキ中尉はコロニー付近にまで早く到着出来た

しかしその時、驚くべき通信がなされた

それは、デラーズ・フリートのシーマ艦隊は、味方だということだった

それと同時に、まずデラーズ・フリート旗艦をシーマ艦隊の乗組員が占拠

更に、コロニーの進路上に巨大な鏡

地球連邦軍の戦略兵器、ソーラーシステムⅡが展開されていた

コロニーが軌道変更してからでは、展開は間に合わない

ならば、答えは一つ

このソーラーシステムⅡの展開を指示した将官

ジャミトフ・ハイマン准将は、最初から知っていたのである

デラーズ・フリートの計画

星の屑作戦の最終目的が、地球へのコロニー落としだということを

それならば、幾つか納得出来ることがあった

まず、初期

ガトーがサイサリスを奪取した後、その追撃中に特務部隊が投入されたのである

それは、余りにも早い投入だった

なお、その特務部隊はガトー一人に全滅したのだが

そして、観艦式の時

その観艦式に、ジャミトフ・ハイマン指揮下の艦隊は参加していなかったのだ

ジャミトフ・ハイマンは准将である

准将となると、大抵の事に参加すべきである

しかし、参加しなかった

それが、ソロモンにて行われる観艦式をガトーが襲撃

核を放つと知っていたのならば?

次に、月のアナハイム社でのこと

アナハイムに現れた警備隊

その警備隊

特殊警備隊だったのだが、それを動かせるとなると階級は限られる

最後に、コロニーの進路上に展開されていたソーラーシステムⅡ

これも、コロニーが月付近でレーザー加速し、地球への落下軌道に入るのを知っていたのならば?

そして、ジャミトフ・ハイマンは絶対的な地球至上主義者だった

もし、ジャミトフ・ハイマンがシーマ・ガラハウと内通し、星の屑作戦を全て知っていて、自分の権威拡大に使うと画策していたのならば、辻褄が合うのである

つまりは、全てが出来レースだったのだ

ジャミトフ・ハイマンが、自分の計画を推し進めるためにデラーズ・フリートを利用したのである

犠牲者が出ると知っていながら、利用したのだ

自分のために

 

「自分の権威拡大のために、助けられる命を……見捨てた?」

 

「そんなことの、ために……っ」

 

「一体、何人死んだのよ………っ!!」

 

ジャミトフ・ハイマンの計画を知り、殆どのメンバーが歯を食い縛った

その余りにも傲慢にして、強欲な計画に怒ったのだ

 

「……軍閥政治だよな……けど、戦いは止まらなかったんだ……」

 

「デラーズ・フリートの首領、エギーユ・デラーズが言った言葉を聞いて、シーマ・ガラハウは激昂し、エギーユ・デラーズを射殺」

 

「それを見て、ガトーは旗艦を攻撃。艦が沈む中、シーマ・ガラハウは一人脱出。戦闘が始まったんだ……」

 

三人がそう説明すると、激戦が映った

コウ・ウラキ操るGPー03と、アナベル・ガトー操る巨大MA

小惑星アクシズで開発された、ノイエジール

その二機による、激しい高機動戦闘

そして、スピリッツ本隊とアルビオン隊とデラーズ・フリートの戦い

それは、熾烈だった

デラーズ・フリートの機体は、全て旧式

しかし、一年戦争から生き残ってきたが故に技量は高い

気付けば、コロニーはゆっくりと地球へと迫っていた

この時の三人は、それに気付いていなかった

コロニー付近のデラーズ・フリートと戦っていることに集中していたからだ

そして、それは起きた

コロニーが近づいてきていることに焦り、ソーラーシステムⅡの指揮をしていたジャミトフ・ハイマンの部下

バスク・オム少佐が、照射を指示したのである

まだ出力も足りず、射線上には味方も多数残っていたのに

 

『しまった!? 近すぎた!!』

 

『急いで離れるぞ!』

 

『クソっ! あのチョビメガネハゲが!!』

 

ソーラーシステムⅡが照射を始めたのに気付き、三人は慌てて離れ始めた

ソーラーシステムは、十字に展開した巨大な鏡群の角度を調整し、太陽光をレーザー化する戦略兵器だ

一年戦争時にも運用されて、ソロモン攻略に貢献している

その威力は、押して知るべし

MSが直撃を受けたら、結果は自明の理である

三人は機体のスラスターを最大限に吹かし、最高速で離脱を始めた直哉が先頭で、その後ろを二人が追随している

不意に、直哉が二人の後ろに回り二人の機体を押した

その直後、全員の視界を閃光が覆った

光はすぐに収まり、全員の視界も回復した

そして見えたのは、原型を保っているコロニーだった

 

『コロニーは無事なのか!?』

 

『ちくしょうっ……』

 

と一夏と弾の二人が悪態を吐いた

その時だった

 

『トライアド隊! 誰でもいい! 応答しろ!』

 

とマークから通信がきた

 

『隊長、どうしました?』

 

『トライアド1。直哉は無事か!?』

 

弾が問い掛けると、マークは切羽詰まった様子で問い掛けてきた

 

『え? 直哉なら、無事…………直哉!?』

 

マークに言われて直哉機を見た一夏は、驚愕した

直哉の機体の、下半身が無くなっていたのだ

しかも、コクピットハッチが大きく歪んでいる

それを見て、セシリアとシャルロットの二人が顔を蒼白にした

 

『ちくしょうっ! トライアド1、大破!』

 

『バイタル………全てフラット!?』

 

『カウンターショックだ!』

 

一夏の報告を聞いて、マークが反射的に指示した

その直後

 

『ガハッ!? あ……が……』

 

とうめき声が聞こえた

それを聞いて、二人はすぐに直哉の機体を保持して

 

『マザー! 緊急事態発生! トライアド1大破、負傷! 緊急着艦を要請する!』

 

『それと、ストレッチャー待機!』

 

と報告しながら、母艦へと向かった

それを見て、シャルロットが

 

「あの一瞬の間に、直哉に何があったの……?」

 

と問い掛けた

すると直哉は、視線を反らして

 

「いやぁ……二人を狙ってる敵に気付いてな? 反射的に二人を庇ったんよな……」

 

と答えた

すると、セシリアが

 

「それで、直哉さんが負傷してたら意味ないじゃないですか!」

 

「はい、その通りです」

 

セシリアの叫びを聞いて、直哉は素直に頭を下げた

反論出来なかったのだろう

なお、その敵は直哉が撃破している

ヤられるばかりではないのだ

そして三人は、全員が落ち着いたのを確認してから

 

「俺達の奮闘虚しく、コロニーは北米の穀倉地帯に落下……その地域は、不毛の大地となった」

 

「なお、表向きはコロニー移送中の事故と発表された」

 

と語りだした

そして、ガトーはジオン残党MS部隊のアクシズ艦隊への撤退支援のために、連邦軍宇宙艦隊へと攻撃を敢行

最後は、サラミス級に体当たりして爆散した

なお、この事件後にガンダム開発計画発案者

ジョン・コーウェン中将は更迭

ガンダム開発計画は白紙に戻された

それにより、命令違反並びに独断専行により禁固刑となったウラキ中尉は釈放され、地上のある基地に配属となり、同期のチャック・キースと共にテストパイロットを勤めることになる

そして、ジャミトフ・ハイマンはデラーズ戦役に端を発するジオン残党の活発化を指摘

それを理由に、ジオン残党狩りを目的とした地球生まれ兵士のみで結成されたエリート部隊

ティターンズを発足

そこから、地球連邦軍の内戦

グリプス戦役が始まる……


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