ISGジェネレーション   作:京勇樹

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二日で書き上げてやったぜ!
今回はいつもよりも長いよ!


追撃戦1

燃え盛るトリントン基地

そして、損傷から燃えている白い戦艦

アルビオン

その側面ハッチから、ハッチを切り裂いて一機のガンダムが姿を現した

巨大な楯を装備した、いかついガンダムだった

 

『この機体と核弾頭は頂いていく! ジオン再興のために!』

 

という男の声が、機体の外部スピーカーで響き渡った

それを聞いて、殆どのメンバーが目を見開いた

 

「核弾頭!?」

 

「それに、ジオン再興だと!?」

 

核弾頭

それは、人類が開発した兵器の中でも、特に使ってはいけない兵器の1つだろう

その兵器が一番最初に使われたのは、宇宙世紀にとっては、遥か昔

今からしたら、約80年前の第二次世界大戦末期

二発の核爆弾

当時は原爆が、日本の広島と長崎に投下された

その結果、その2つの都市はほぼ壊滅

その原爆から放たれた放射能により、広島と長崎は百年単位に及ぶ放射能汚染

爆発による直接被害、並びに、放射能による二次被害により約二十万人以上が亡くなった

核弾頭の原型兵器たる原爆でそれほどの威力を発揮したのだから、核弾頭ではどれ程になるのか

況してや、宇宙世紀の戦術核弾頭は更に改良されている

どれ程の威力になるのかを想像しただけで、その場のメンバーは背筋に悪寒が走った

 

「あのガンダムタイプの型式と名前は、GPー02A・サイサリス」

 

「一年戦争後に、連邦軍の将官。ジョン・コーウェン中将が推し進めたガンダム計画で開発された、試作2号機だ」

 

「サイサリスの開発は、南極条約を真っ向から無視してた」

 

と説明した

 

「南極条約?」

 

南極条約というのが分からなかったセツコが首を傾げると、直哉が

 

「南極条約というのは、一年戦争時に締結された軍事条約で、戦時下における捕虜の扱いや、使用禁止兵器を決めたものだ。そして、戦術核弾頭は使用禁止兵器になっている」

 

と説明した

それを聞いて、全員が察した

サイサリスは、その禁止兵器たる戦術核弾頭の運用を前提に開発された機体

つまりは、連邦軍にとっては一年戦争後最大級の汚点だということに

それを敵たるジオンの残党に奪取され、もし地球の都市に放たれたら

どれ程の被害になるのかは、想像すら出来なかった

 

「勿論だが、連邦軍も追撃を行うことを決定」

 

「それに当たったのが、サイサリスともう一機のガンダム。GPー01・ゼフィランサスを載せてた戦艦アルビオンと搭載MS部隊と俺達だった」

 

三人がそう説明すると、追撃戦力が表示された

MS約二十数機

戦艦二

支援艦が一

たった一機の敵機を追いかけるだけだったら、過剰戦力だろう

しかし、デラーズ・フリートの決起に呼応して、地球各地に散って地下活動していた各ジオン残党勢力が集結

アルビオン隊とスピリッツを妨害した

それにより追撃は幾度も振り払われ、サイサリスとそのパイロット

アナベル・ガトーはジオン残党勢力の基地たるダイヤモンド鉱山跡地に入り、宇宙への打ち上げを待つ段階に入った

 

「なお、サイサリスを奪ったパイロットは、ジオン公国宇宙突撃機動軍。宇宙要塞ソロモン配属だった、アナベル・ガトー少佐。ソロモンの悪夢という二つ名を持つ、ジオン切ってのエースの一人だ」

 

「そして、それを追撃するアルビオン隊のガンダムパイロットは、連邦士官学校を卒業したばかりの新人パイロットのコウ・ウラキ少尉だ」

 

三人の説明を聞いて、数人が微妙な表情を浮かべた

卒業したばかりの新人パイロットと聞いて、頼りなく思ったのだろう

しかも、敵対するのはジオン残党の中でもトップの二つ名持ちのパイロット

戦力差は大きいと判断されたのだろう

 

「まあ、そんな表情を浮かべる気持ちは分かる」

 

「士官学校を卒業したばかりって聞いて、頼りなく思うわな」

 

「けど、コウ・ウラキ少尉は他とは違ったんだ」

 

三人がそう話してる間にも、ダイヤモンド鉱山跡地での戦闘は続いていた

なんと、コウ・ウラキ少尉が搭乗したガンダム

ゼフィランサスは、手練れのジオン残党に善戦していたのだ

それも、高速機動中のドム・トローペンをビームライフルで狙い撃ちしたのだ

高速機動中、しかも不規則に進路を変更していたのだから、進路予測するのは難しい

しかし、コウ・ウラキはドム・トローペンが機動変更する時のほんの僅かな速度の低下を見逃さず、狙い撃ちにしたのだ

 

「後から聞いたら、あのドム・トローペンのパイロットは機動変更する際に、少しだけ速度を落とす癖があったらしいんだ」

 

「彼はそれを見逃さず、狙い撃ちしたんだ」

 

「広い観察力がないと、出来ない芸当だな」

 

三人はそう説明するが、それだけではない。と他のメンバーは思った

MSに対する、広く深い知識がないと無理なはずである

パイロットの癖だけでなく、敵機種の性能

自機のポテンシャルの把握

それらが出来ていないと、出来ないはずだ

映像を見ていた限り、コウ・ウラキはまだガンダムに乗って間もない

だというのに、それだけの事が出来る

それだけで、コウ・ウラキが勤勉だと分かった

その時、鉱山に動きがあった

火口のハッチが開放されて、中からHLVが姿を現した

 

『あのHLVか!』

 

『止めろ!!』

 

『くそっ! しつこいんだよ!』

 

という三人の声と共に、三人の機体も全員に見えた

だが、三人の機体は変わっていた

直哉機は、水色を基調とした機体だった

一夏は、ファーストガンダムの流れを組んだ機体で、肩部分が細くなっている機体だった

そして弾の機体は、片手にガトリングが装備された赤い機体だった

 

「三人の機体、変わってるわね?」

 

「なんなんだ?」

 

鈴とラウラが問い掛けると、三人の機体が拡大表示された

 

「俺の機体は、フェニックスゼロ・ガンダム。隊長のフェニックスガンダムの簡易生産型だな。トルネードが俺の操縦に追い付かなくなったから、選ばれたんだ」

 

直哉がそう説明すると、トルネードとの比較性能が表示された

性能的には、約三割増しだろう

 

「俺のは、ガンダム7号機ライトアーマー。その名前の通りに、ガンダム7号機の軽装仕様の格闘型の機体だな。推進力が高く改装されてる」

 

一夏がそう説明すると、先程と同じようにトルネードとの比較性能が表示された

推進力が段違いに高い

 

「んで俺のは、ガンダムヘビーアームズ。射砲撃戦重視の機体で、移動火薬庫なんて二つ名が付く機体だな」

 

弾がそう説明すると、機体の武装が表示された

確かに、全身火薬庫のような機体だった

その時、一夏機の近くで爆発が起きた

 

『くそっ! 鬱陶しいんだよ!』

 

一夏はそう悪態を吐くと、坑道から姿を見せていたザクⅡに突撃しようとした

 

『よせっ! 深追いするな!』

 

と直哉が止めた直後、ザクⅡが消えた坑道の入り口で大爆発が起きた

追撃していたら、間違いなく爆発に巻き込まれてただろう

 

『忘れるな。地の利は完全に相手にある』

 

『ちっ……そうだったな』

 

『罠とかが、かなりエゲツないんだが』

 

と三人が会話していると、地響きが聞こえた

 

『なんだ!?』

 

『おい、あれ!?』

 

『なんだありゃ!?』

 

三人が視線を向けた先に見えたのは、異形としか言えない機体だった

下はMAをベースに、ザクⅠをくっつけているようだった

 

『まさに、ジオン残党の怨念が具現化したような醜悪な姿だ……』

 

と年老いた男性の声が聞こえた

 

「まるでキマイラだな……」

 

ラウラのその言葉が、全てを物語っていた

キマイラ

キメラの方が有名だろう

複数の生物が一つになった魔獣

その機体は、まさにそれだった

 

「機体名は、アッザム・リペア。鉱山跡地基地のジオン残党が、三年掛けて改修した機体らしい」

 

直哉がそう説明していると、その機体が動きだした

アルビオンに向けて、移動を始めたのだ

 

『行かせるか……ちぃ!』

 

もちろんだが、三人はそれを阻止しようとした

だが、それを妨害しにザクⅡやドム・トローペンが攻撃してきた

 

『くそっ! 付近のジオン残党まで集まってるのか!?』

 

『進めないっ!』

 

三人が手こずってる内に、アッザム・リペアはアルビオンに接近

メガ粒子砲を放った

どうやら照準システムが完璧ではないのか、直撃はしなかった

しかし、アルビオンは砲撃から身を守るために岩山の影に隠れた

スピリッツの母艦とエウクレイデスは、地上のジオン残党からの攻撃を回避しているために、中々アルビオンのカバーに入れない

スピリッツ本隊は、ジオン残党の坑道を使った戦法に、手をこまねいてるようだ

その時、一機の戦闘機

コア・ファイターがアッザム・リペアに攻撃した

 

『コア・ファイター?』

 

『誰だ!?』

 

『バニング大尉じゃないだろうし……』

 

と三人が話していると

 

『ウラキ! 何してる!?』

 

『アレン中尉!? どうしてここに!?』

 

『俺のことはいい! お前があのMAを止めろ!!』

 

と会話が始まった

 

『しかし、ガトーがすぐそこに居るんです!』

 

『独り善がりなって、大事なことを見失うな! お前にとって、アルビオンを失う事の意味を考えろ!!』

 

アレン中尉のその言葉を聞いて、コウ・ウラキの動きが少し止まった

そして、数秒後

 

『………ニナ?』

 

と機体を、アルビオンの方に向けた

 

「ニナって?」

 

「アルビオンに乗ってる民間人だな。ガンダムを開発したアナハイムから、ガンダム開発チームを代表して、ガンダムの運用データを収集して機体の改修とかに使う為に同行してるんだ」

 

楯無が扇子を開きながら問い掛けると、(扇子には、?マークがあった)直哉が答えた

その間にも戦況は進んで、HLVの発射シークエンスが進み、アッザム・リペアはアルビオンに迫っていた

 

『HLVが発射態勢に入ったみたいだな。命令を無視して、向かってもいいんだぜ? ウラキ……因縁のガトーとやり合う、最後のチャンスかもしれないぜ?』

 

『……アルビオンへ向かいます。MAから、アルビオンを護ります!』

 

コウ・ウラキはそう答えると、ガンダムのスラスターを噴かしてアルビオンの方に向かった

そして、アッザム・リペアを護衛していた敵の一機を撃破した時

HLVが、轟音と共に打ち上げられた

すると、それを追うようにアルビオンも高度を上げて岩山の影から姿を曝した

すると、アルビオンを狙ってアッザム・リペアがメガ粒子砲を発射した

が、その砲撃はアルビオンの下を通過

入れ替わるように、今度はアルビオンがHLVに向けて主砲を発射した

アルビオンの主砲はHLVにグングンと迫ったが、惜しくも外れた

 

『くそっ! 外れた!』

 

『HLVが……』

 

『逃げられたか……』

 

三人のその言葉の通り、HLVはあっという間に見えなくなった

だが、戦闘はまだ終わらない

コウ・ウラキはアッザム・リペアに取り付くと、アッザム・リペアから伸びていたケーブルを切断した

どうやら、未完成らしく外部電源に頼っていたらしい

切られたことに焦ったのか、アッザム・リペアがガンダムを振り払って速度を上げてアルビオンに突撃していく

 

『あいつ! アルビオンに体当たりでもする気か!?』

 

『させるか!』

 

『当たれ!!』

 

三人はアッザム・リペアに対して砲撃するが、遠距離ゆえに中々当たらなかった

 

『回避!!』

 

『駄目です! 間に合いません!?』

 

その叫び声を聞いて、殆どのメンバーは息を飲んだ

その時、アルビオンの側面をコア・ファイターが通り過ぎてアッザム・リペアに迫った

 

『アレン! バカなマネはよせ!』

 

『アレン中尉!?』

 

『ウラキ……お前は、俺みたいに……』

 

アレンのその言葉の直後、コア・ファイターはアッザム・リペアのメガ粒子砲の砲口に体当たり

アッザム・リペアは爆発を起こした

 

『なっ……』

 

『アレン中尉……』

 

『なんで……』

 

この時の三人と同じように、その場のメンバーはまともに言葉を発することが出来なかった

だがその時、アッザム・リペアが最後の足掻きにと機体を浮上させて上部のザクⅠが保持していたバズーカを向けて撃とうとした

 

『しまった!?』

 

『まだ動けたか!?』

 

『間に合わない!!』

 

三人が焦り、アッザム・リペアがバズーカの引き鉄を引こうとした

その時、アッザム・リペアのコクピットをビームが撃ち抜いた

そのビームを撃ったのは、コウ・ウラキだった

その数瞬後、アッザム・リペアは完全に沈黙

地面に墜落し、爆散した

 

「この少し後に、集結してたジオン残党軍は投降。戦闘は終結した」

 

「そして、主戦場は宇宙になる」

 

「陰謀渦巻く宇宙にな……」

 

三人がそう言うと、画面は地球から宇宙に変わった

そして、星の屑の真髄に迫る戦いの始まりだった




一部は単行本版準拠

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