ISGジェネレーション   作:京勇樹

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ガンダムだったら、コレ、やらないとね?


リターナー

「織斑先生! これは完全に想定外です!」

 

「つっ!」

 

山田先生からの報告と映像の二つ

それらに、千冬は言葉を失っていた

 

「無人機が、セカンドシフトするなんて………」

 

セツコは映像に映っている福音

銀の福音・独唱(シルバリオ・ゴスペル・アリア)を見て、驚いていた

再度出撃した専用機持ち達は、最初から激しく攻勢に出た

避ける隙間すら無くす勢いで

烈迫気合いと共に

そして、鈴と箒の決死の肉薄格闘攻撃の結果、福音の翼を切断することに成功

福音は、海へと落ちていったのだ

その光景に、誰もが勝ったと思った

だが、その直後に福音がセカンドシフトしたのだ

切り落とした筈の翼は、まるで天使を彷彿させる三対六枚へと増えて新しく現れた

機体はより洗練された、流線型の装甲へ

理解が追い付かず、千冬達は呆然とした

だが

 

『ぐおっ!?』

 

気付けばカオルに肉薄、蹴り飛ばした

次の瞬間には、ジュリが増えたシルバーベルの火力で撃墜された

その光景を見て、千冬は作戦の中止をさせようとした

だがそうする暇もなく、次々と撃墜されていった

余りにも高い性能に、指示すら間に合わない

どうすればいいのか

千冬が迷っていたその時

 

「織斑先生!」

 

襖が開き、本音達が入ってきた

 

「何をしている! ここには入るなと言った筈だ!」

 

千冬がそう怒鳴るが、本音は涙を流しながら

 

「おりむーが………居なくなったんです!」

 

と告げた

それを聞いて、千冬が絶句していると

 

「織斑先生! 戦域上空、大気圏を突破してくる物体があります!」

 

とセツコが言った

 

「なに!?」

 

「隕石ではありません! 密度が小さいですし、何よりも、軌道修正してます!」

 

「映像、出します!」

 

セツコがそう言うと、赤熱化しながら降下してくる物体が映った

しかも、二つ

 

「一体なんだ!?」

 

「待ってください………これは、IS!?」

 

「ありえません! まだ、ISは宇宙に行けません!」

 

セツコの報告を聞いて、山田先生はそう叫んだ

しかし、千冬はあることを思い出した

ISであってISではない機体を

既存の技術を越えた、オーバーテクノロジーの塊

 

「まさか………!」

 

「降下してくるISのシグナル確認! つっ! これは……!?」

 

千冬が呟いていると、山田先生が目を見開いた

すると、千冬はすがる気持ちで

 

「報告しろ!」

 

と告げた

すると山田先生が、涙目で振り向いて

 

「トライアド1、3のシグナルです!」

 

と報告してきた

それを聞いて、千冬は目を見開いた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「ぐっ………つっ………」

 

福音の攻撃を受けて、箒は近くの小島に墜落していた

機体のダメージはそれほどではないが、エネルギーが尽きかけている

遥か頭上では、福音が悠々と箒を見下ろしている

 

「私達では………無理、なのか………」

 

箒は諦めの気持ちと共に、そう呟いた

 

「一夏………私は………一夏………っ!」

 

箒は涙を滲ませ一夏の名前を呟きながら、右手を虚空へと伸ばした

そして、その手から力を抜いて砂浜に落ちそうになった

その時

 

「おう、呼んだか?」

 

と声がして、箒の手を誰かが掴んだ

驚いて見た先に入ったのは、涙で滲んではいるが

確かに、一夏だった

 

「一夏………本当に、一夏なのか!?」

 

「おーう。俺以外の誰に見えるっての?」

 

箒が名前を呼ぶと、一夏は飄々と手を上げた

そんな一夏を見て、箒は体を起こして

 

「一夏! お前、怪我は!?」

 

と一夏を揺すった

 

「あぁ……治った」

 

「んな訳あるかぁ!」

 

シレッと一夏は答えるが、箒は思わず突っ込みをいれた

しかし、それも無理はないだろう

箒の記憶では、一夏はかなりの大怪我を負っていた

正直言って、生きてるのが不思議な傷だった

箒が突っ込みを入れると、一夏は苦笑いして

 

「嘘じゃねえって。俺も詳しくは知らないけどな」

 

と返した

確かに、一夏の声には痛みを堪えてる様子はない

 

「良かった………一夏………っ!」

 

「泣くなって……っと、今渡しておくか。丁度いいみたいだしな」

 

一夏はそう言うと、何処からか一本のリボンを取り出して

 

「箒、誕生日おめでとう」

 

と手渡した

この日、七月七日は箒の誕生日だったのだ

しかも、箒が着けていたリボンは福音の攻撃でボロボロだった

 

「一夏………お前、私の誕生日を覚えてくれていたのか………」

 

「あったり前だのクラッカー。んな薄情じゃないっての」

 

箒の言葉を聞いて、一夏はそう返した

すると一夏は、空を見上げて

 

「あいつらも、来たな」

 

と呟いた

箒も一夏の視線を追いかけた

その先に見えたのは、こちらに落ちてくる二つの流れ星

 

「まさか………っ!?」

 

「さってと………第三ラウンドと行きますか?」

 

一夏はそう言うと、飛んでいった

どうやら、あの二つの流れ星

二人と合流するつもりらしい

箒はそんな一夏を見送ると、立ち上がって

 

「私は………」

 

と一度、その手に持ったリボンを見てから空を見上げて

 

「私は………一夏の隣に居たい!」

 

と決意が籠った声を出した

その直後、劇的変化が起きた

紅椿が光り輝き、尽きかけていたエネルギーが一気に回復したのだ

 

「こ、これは………?」

 

箒が不思議そうにしていると、箒の視界にウィンドウが開いた

そこに表示されていたのは

 

《ワンオフアビリティー 絢爛舞踏》

 

という文章だった

絢爛舞踏

その能力は、今の状況から察してエネルギーの無限増殖だろう

しかし、箒としてはワンオフアビリティーが発現したことが不思議だった

ワンオフアビリティー

それは、ISに長い時間乗って、機体を熟知

更に、コアがパイロットを理解してようやく発現するとされている現象だった

今、世界中でこのワンオフアビリティーを発現させたのは、僅か数人しか確認されておらず、その内の一人が千冬だ

千冬はそのワンオフアビリティーによって、初代世界最強

ブリュンヒルデの称号を手に入れた

しかし、箒は専用機たる紅椿を手に入れてから一日と経っていない

だというのに、ワンオフアビリティーが発現した

どうしてワンオフアビリティーが発現したのかは、箒にはわからない

だが、一つだけ確かなことがある

それは

 

「私は、まだ戦える………一夏の隣に、立てる!」

 

箒の目に、力強い光が宿った

諦めではなく、希望と決意の光が

そして、一人の少女は今、戦場に立つ

己の意志で


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