ISGジェネレーション   作:京勇樹

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はい、奴が出ますよー


赤き傭兵との邂逅

戦闘が始まって、数分が経過

ソード隊の攻撃は、その殆どが福音の見事なまでの機動により避けられていた

そして戦闘によって得られた情報は逐一、HQ(ヘッドクォーター)に送られていた

それによって分かったのは、事前に見せられた情報よりも、機体の性能は高かったこと

さらに、近接戦闘用にビームクローが装備されていることだった

 

「ちっ、アメリカさんめ! 情報を秘匿するなんざ、いい気なもんだな!」

 

「どうせ、千冬さんが抗議するだろうさっ!」

 

悪態を吐きながらも、直哉達は攻撃を行っていた

しかし、その攻撃は的確で、福音の攻撃の機会を著しく減らしていた

箒はその光景を見て、唇を噛んだ

 

(専用機を得れば、一夏と同じ舞台に立てると思っていたのに……甘かった! 余りにも、次元が違うっ!)

 

この戦いが始まってから三人は終止、箒へのカバーを忘れてはいなかった

その反面、箒は自分のことで手一杯だった

しかも、途中で何回か死ぬ可能性すらあった

 

(私は、一夏と肩を並べて戦いたいだけなのに……その背中が、余りにも遠すぎる……っ)

 

今の箒にとって、三人が立っている場所は、壁一枚どころか、遥か先のような感覚だった

その時だった

四人の視界の端に、通信ウィンドウが開いて

 

『ソードマムより、ソード隊各員に通達。ライオット隊が合流するまで、残り約三十秒を切りました!』

 

と山田先生が告げてきた

それを聞いて、直哉はサブウィンドウを開いてライオット隊の位地を確認した

 

「ソード1より、ソード隊全員に通達! ライオット隊から支援攻撃が来る! 当たるなよぉ!?」

 

「はっ! んなドジ踏むかよっ!」

 

「いくらIFFを切ってるって言ってもな!!」

 

直哉の言葉を聞いて、一夏と弾はそう返した

そう、この作戦をするにあたり、全員はIFFを最初から切っていた

これは、機動力の高い福音と戦うにあたり、福音が絶好のチャンスを作った際に近くに味方が居たら攻撃出来なくなるということを無くすためである

これに関して千冬からは、余りにも危険過ぎる。と抗議があった

しかし直哉の、短時間で作戦を終わらせるため

という力強い言葉に、不承不承といった体だったが受け入れた

 

「全機、散開!」

 

直哉の指示に従い、一夏達はバラバラに離れた

その直後、先ほどまで直哉達が居た場所を、レーザーやビーム、ミサイル、衝撃砲といった攻撃が雨霰と通り福音に殺到した

そう、直哉達は直前まで自分達を使って、ライオット隊の攻撃を隠していたのである

そうすることにより、福音にソード隊がロックオンしていると誤認させるためだった

しかし、福音はその攻撃の殆どを紙一重で回避した

 

「ライオット隊、敵機攻撃圏内(バンデット・インレンジ)! 全機、全兵装使用自由(オールウェポンフリー)! 畳み掛けろ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

ライオット隊の隊長たるカオルの号令に従い、ライオット隊は一斉攻撃を開始した

その間に、直哉達ソード隊は僅かに下がった

そして、これまで戦って思ったことがあった

 

「一夏、弾、気づいたか?」

 

「ああ……」

 

「福音、無人機じゃねぇな……間違いなく、有人機だ」

 

それは、戦っている内に確信したことだった

三人はジェネレーションワールドで数多のMSと戦い、生き残ってきた

その戦ってきた中には、無人機も存在した

そして、無人機には幾つかの特徴があった

まず、死を恐れないこと

これは、至極当たり前だろう

なにせ、パイロットが乗っていないのだから

次に、無茶な機動が可能になること

これもまた、パイロットが乗ってないから出きることである

MS戦において、Gは必ず発生する

そしてGというのは、機体を速く動かすのと急速反転などで大きく発生し、パイロットに負担を強いる

そしてそれは、ISにおいても例外ではない

ISにはPICという大変便利な機能がある

このPICというのは、ISを操縦中に起きるGを大幅に軽減するというのだ

しかし、このPICにも限界がある

その内の一つが、瞬時加速(イグニッション・ブースト)による直線機動中に無理矢理進行方向を変えることだ

上記のことをした場合、パイロットの骨が折れたりすることが確認されている

その他にも、最高速で移動中に急カーブしたりすると、肉体に強い負荷が掛かり、間接痛などになるのも確認されている

しかし無人機ならば、それらを心配する必要もない

例え機体に強い負荷が掛かって壊れても、直せばすむし、強化すれば耐えられるようになる

しかし、福音にはそういった無人機の特徴が見られなかった

回避は最低限に

攻撃に至っても、ある一定範囲内に居る敵に対してに集中して行われていた

それでは、まるで………

 

「意識が無いパイロットを、守ってるみたいだな……」

 

直哉のその呟きに、二人は同意するように頷いた

だから敢えて、三人は胴体や頭への攻撃を控えていた

戦い始めた時から少しずつ聞こえてきている《声》

何よりも、直哉は福音の頭部に見覚えがあった

頭全体を覆い、首筋辺りから機体に伸びている数多のコード

それは、ジェネレーションワールドでも最悪の一つに挙げられる研究の成果

そして、今回の作戦中の実戦部隊の指揮権は直哉に一任されている

 

「ソード1より、作戦に参加している全機に通達する! 即座に攻撃中止! 繰り返す、攻撃を中止せよ!」

 

直哉がそう言うと、驚愕の表情を浮かべながらも、全員攻撃を中止した

しかし、箒は納得いかないのか

 

「何故だ! 何故、攻撃の中止をした!」

 

と直哉に食って掛かった

すると直哉は、ビームライフルを腰に懸架して

 

「戦わないで済むなら、それでいいだろう……なあ、福音?」

 

と優しそうな声を出しながら、ゆっくりと福音に近づいていった

そして、福音にゆっくりと手を差し出した

その時だった

 

「おいおい、つまらねぇ事をするなよ……ええ? スピリッツのガンダムさんよぉ!?」

 

と、三人には聞き覚えのある声が聞こえた

その直後

 

「「「全機、散開! 乱数(ランダム)回避!」」」

 

と三人が同時に叫ぶように号令した

その瞬間、殆どのメンバーと福音はバラバラの方向に回避機動をしながら飛んでいった

その直後、全員が居た場所を、禍々しいまでの紅い攻撃があらゆる方向から空間を埋め尽くすように放たれていた

 

「な、なによっ!?」

 

「この攻撃はっ!?」

 

「私のブルーティアーズと同じ、オールレンジ!?」

 

回避に成功しているメンバー達は、驚愕の声をあげていた

しかし、たった一人だけ動けていない人物が居た

それは、箒だった

三人の咄嗟の指示に反応出来ず、箒はその場で防御態勢を取るので精一杯だった

 

「クソッ!」

 

それに気づいて、一夏は回避機動を止めて、最低限の回避行動のキリモミ機動をしながら箒の救出に動いた

 

「一夏っ!?」

 

「喋るなっ! 舌を噛むぞ!」

 

一夏は箒を横抱きに回収すると、最速で離脱した

しかし、強引に離脱したために、二三発程被弾した

攻撃は一分もすれば止み、三人は上に視線を向けた

そこに居たのは、赤を基調とした配色に、異様に長い手足と長大なバスターソードと赤い粒子を噴き出す背中のコーン

そして、特徴的なデュアルアイとV字状のセンサーの頭部を有する機体だった

その機体とパイロットを、三人はよく知っていた

人間のプリミティブな感情に従って生きる、赤き傭兵

その名を………

 

「アルケーガンダム……アリー・アル・サーシェス!!」

 

「さあ、おっ始めようぜ…………この世界における、とんでもねえ戦争ってやつをよお!!」

 

かの世界でのウルトラエースの一人との、邂逅だった……


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