ISGジェネレーション   作:京勇樹

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少ないです


越界

地球によく似た世界

ジェネレーションワールド

月にあった旧ジェネレーションシステム入り口跡地

そこには、白亜の巨艦が二隻止まっており、その下では十数機のガンダムタイプが瓦礫を撤去していた

 

『今日で一週間……ビーコンの反応すら無い……そっちはどうだ、ラナロウ?』

 

『こっちもだ……機体の残骸すら見つからない………クソッ!』

 

不死鳥を彷彿させる機体

フェニックスガンダムに乗った男

マーク・ギルダーが問い掛けると、クロスボーンガンタム・フルクロスに乗ったバンダナが特徴の男

ラナロウ・シェイドは結果を報告すると、悪態を吐いた

彼らが探しているのは、自分達を助けるために母艦を押し上げたトライアド隊である

特に必死に探しているのは、小さい女の子

カチュア・リィスが乗っている、フォーエバーガンダムだった

彼女は手当たり次第に瓦礫を退かしては、センサーをフル稼働させていた

 

『カチュア……残念だが……』

 

マークがそう言って機体の肩にフェニックスの手を置いたが、カチュアは

 

『嫌!』

 

と拒絶して、ビームサーベルを使って巨大な鉄塊を切り崩した

 

『カチュア! 貴女ね!?』

 

と補給に戻っていた女性

ニキ・テイラーが語気を荒げるが、カチュアは涙を流しながら

 

『約束したんだもん!』

 

と叫んだ

そして、涙声で

 

『最終決戦が終わったら……一緒に、ご飯を作るって……約束したんだもん………』

 

と語った

 

『カチュア………』

 

『つっ………』

 

カチュアの心からの叫びを聞いて、同い年の少女

シス・ミットヴィルは唇を噛み締め、紫色のガンダム

ハルファスガンダムに乗った少女、エリス・クロードは悲しそうな表情を浮かべた

正直に言えば、誰だって諦めたくはなかった

しかし、一週間も探して残骸すら見つからないのでは、生存は絶望的だった

捜索中のMS部隊の悲痛な通信を聞いて、白亜の巨艦の一隻

アークエンジェルの艦橋(ブリッジ)の艦長席に座っていた白髪の男性

ゼノン・ティーゲルは唇を噛み締めた

 

「儂はまた、若者を見送るのか………」

 

ゼノンはそう言いながら、懐から取り出した写真を見た

それは、ある日にスピリッツ全員が集まって撮影したものだ

しかし、今は居ないメンバーが何人か居る

そして、仲良く肩を組んでる直哉達を見て、ゼノンは直哉達の居る部分を優しく指先で撫でた

 

「本当なら、子供が戦場に出ないで済めばいいのだがな……死ぬのは儂みたいな、老人でいい……」

 

ゼノンは一人呟きながら、艦長席に深く腰掛けた

彼は歴戦の猛者として、年老いた自分が生き残り、代わりに若い隊員達が散っていくのか

 

(納得出来るわけがない……)

 

ゼノンがそう思いながら写真を懐に仕舞った時、艦橋内部にけたたましい警報音が鳴り響いた

 

「何事だ!!」

 

ゼノンが声を張り上げると、オペレーター席に座っていた女性

ラ・ミラ・ルナが

 

「インディゴ・ブラボー・29に不明な力場を確認!!」

 

と報告した

それを聞いて、ゼノンは立ち上がり

 

「MS部隊、全機帰投後、エウクレイデスと共に回頭して離脱!」

 

と指示を出した

その指示を受けて、捜索中だったMS部隊はアークエンジェルとファクトリー艦、エウクレイデスに全機戻った

エウクレイデスはラー・カイラムをベースにして、戦闘力をある程度下げて、代わりに工場艦としての機能を追及した艦である

スピリッツの活動に、無くてはならない重要な艦だ

もちろん、MS運用能力も有している

閑話休題

MS部隊を全機収用し、アークエンジェルとエウクレイデスは現宙域からの離脱を計ろうとした

しかし離れるどころか、二隻はその力場に少しずつ引っ張られていた

 

「何をしている! 引っ張られているぞ!!」

 

「ダメだ! 推力全開なのに、引かれる!」

 

ゼノンが声を張り上げると、操舵手の男性

エルンスト・イェーガーは操舵捍を全身全霊で動かしながら、叫ぶように返答した

そうしている間にも、二隻の艦は件の力場へと引き寄せられていき、黒い球体へ取り込まれた

そして、スピリッツの活躍の場所は世界を越え(オーバーワールド)する


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