ISGジェネレーション   作:京勇樹

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ドイツとの諍い、再び

直哉がシャルロットの正体を知った数日後、直哉達は放課後どうするか話し合っていた

 

「この後、どうしようか?」

 

「んー………近い内にトーナメントがあるから、模擬戦するか?」

 

「そうだな。開いてるアリーナは…………」

 

と一夏が唸っていると、いつの間にか居た箒が

 

「今日開いてるのは、第三アリーナだな」

 

「うおわっ!?」

 

「いつの間に!?」

 

箒に気づいてなかった一夏と弾が驚くと、箒が不機嫌そうに

 

「そんなリアクションされると、傷つくんだが」

 

と二人を睨んだ 

すると二人は、苦笑いを浮かべて

 

「悪い、箒」

 

「居ることに、気づいてなかったんだ」

 

と謝った

二人の言葉を聞いて、箒は深々と溜め息を吐いてから

 

「正確には、第一と第三アリーナが開いているが、第一は既に大勢の生徒が使っている。第三のほうが、比較的に少ない」

 

と説明した

その説明を聞いて、直哉達は顔を見合わせて

 

「それじゃあ、その第三アリーナに行くか」

 

「だな」

 

と話し合い、第三アリーナに向かおうとした

その時、数人の女子達が走りながら

 

「第三アリーナで、専用機持ち達が模擬戦してるんだって!」

 

「見に行ってみよう!」

 

と言った

それを聞いて、直哉達は嫌な予感がして駆け出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時は少し遡り、場所は変わって第三アリーナのとあるピット

そこでは、セシリアが一人目を閉じていた

セシリアは直哉からのアドバイスを受けて、最初にイメージによるトレーニングをしてから特訓するようにしていた

そしてイメージトレーニングが終わったのか、セシリアは目を開いて機体を展開した

その時、違うピットから鈴が現れて

 

「あら、セシリアじゃない。トレーニング?」

 

と声をかけた

 

「あら、鈴さん。ええ、その通りですわ」

 

セシリアがそう返すと、鈴はドウモウな笑みを浮かべて

 

「ならさ、アタシと模擬戦しない? 一人よりかは有意義でしょ?」

 

と言いながら、青竜刀を肩に担いだ

鈴の提案を聞いて、セシリアは微笑みを浮かべて

 

「よろしいですわ。そのほうが、ためになりますわ」

 

と返した

それを聞いて、鈴は頷くと

 

「OK。それじゃあ、早速始めるわよっ!」

 

と言いながら、二本の青竜刀を構えた

それを見て、セシリアもスナイパーライフルを構えて

 

「よろしくてよ!」

 

と返した

その数秒後、鈴はセシリアに向かって突撃しようとした

その直後、セシリアと鈴の間を一発の砲弾が通り過ぎた

二人は反射的に止まると、砲弾が飛んできた方向を見た

二人の視線の先に居たのは、黒い装甲を纏った銀髪の少女

ラウラだった

 

「あんた、いきなりどういう了見よ? 問答無用でぶっ放すなんてさ!」

 

鈴が問い掛けるが、ラウラは無視して

 

「イギリスのティアーズ型と中国の甲龍型か………ふん。データで確認した時のほうが強そうだったな」

 

と侮蔑の言葉を吐いた

その侮蔑を聞いて、鈴はラウラを睨み

 

「あんた、ボコボコにされるのがお望み? なんなら、スクラップにしてやってもいいけど?」

 

と言うと、セシリアもそれに乗って

 

「可愛そうですわよ、鈴さん。あの方は言葉が分からないようですし」

 

とラウラを睨んだ

しかし、睨まれたラウラはどこ吹く風

セシリアと鈴を見下ろすと、鼻を鳴らして

 

「歴史だけが取り柄の国の連中か………下らん種馬を誘惑するのは、楽しいか?」

 

と言った

その直後、セシリアと鈴の中で何かが千切れた音が響いた

 

「今、なんて言った? あたしからは、どうぞ、好きなだけ殴ってください。って聞こえたわよ?」

 

「祖国だけでなく、この場所に居ない方の悪口を言うとは。同じEUとして、成敗しますわ!」

 

と二人が啖呵を切ると、ラウラは敢えて挑発するように

 

「とっとと来い!」

 

と手招きした

 

「「上等(ですわ)!!」」

 

二人はそう叫びながら、ラウラへと突撃した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時は進み、三人が戦い始めて約十分後、直哉達は第三アリーナに到着した

そして見たのは、余りにも一方的な戦闘だった

セシリアの方は四基あったビットは全て破壊され、鈴は二基あった衝撃砲の内左側の衝撃砲が破壊されていた

それに対してラウラは、目立った傷は無かった

セシリアと鈴はそれでも諦めず、ラウラに攻撃を敢行

セシリアの攻撃は回避したが、鈴の放った衝撃砲はラウラのかざした右手の前で掻き消された

 

「相性が、悪すぎるっ!」

 

「鈴さん!」

 

鈴が歯噛みすると、背後からセシリアが支援狙撃を行った

だが、ラウラは軽く回避

下がろうとした鈴に対して、数本のワイヤーブレードを射出、捕まえるとセシリアに向かって放り投げた

 

「さっきの鈴の衝撃砲を防いだのは、AICか」

 

その一連の光景を見ていて、直哉はポツリと呟いた

AIC

正式名称は、アクティブイナーシャルキャンセラー

ISに搭載されているPIC

パッシブイナーシャルキャンセラーの反対の装備で、ドイツが開発した第三世代兵装だ

通称で、慣性停止結界とも呼ばれている

それを使われた場合、鈴の衝撃砲は完全に無効化されてしまうのだ

二人が縺れるように地面に落ちると、その二人に向けてラウラはワイヤーブレードを射出

二人の首に巻き付けて、二人を引き寄せて殴り始めた

 

「酷いっ! あれじゃあ、二人の体が保たないよっ!」

 

シャルロットがそう叫んだ時だった

それまで黙っていた一夏が機体を展開

ビームサーベル二刀流で、目の前にあったアリーナのシールドバリアーを切り裂いた

その瞬間、直哉と弾も機体を展開

 

「ミッション内容、負傷者の救助並びに、暴徒の鎮圧」

 

「「了!」」

 

直哉の言葉の直後、一夏と弾は行動を開始

直哉はファンネルを飛ばして、鈴とセシリアを縛っていたワイヤーを途中から切り離した

ラウラは直哉のファンネルに気づくと、一夏と弾が動いてることにも気づいた

 

「二人から離れろっ!」

 

一夏がビームサーベルで斬りかかると、ラウラは鼻で笑い

 

「感情的だな! 分かりやすいぞ!」

 

と言いながら、一夏の攻撃を回避

距離を取った

それを一夏が追い、その隙に弾が鈴とセシリアに近寄った

 

「無事か、二人とも?」

 

「弾………」

 

「情けない所を、お見せしましたわ………」

 

二人が力が入ってない声でそう言うと、弾は二人を抱えた

そのタイミングで、二人の展開していた機体が消えた

相当ギリギリだったようだ

そしてなによりも、二人の傷が酷かった

弾はそれを見て、歯を食い縛った

弾が二人に負担を掛けないように移動を始めている傍ら、一夏はラウラに攻撃していた

だが、ラウラはそれら全てを回避している

ラウラはそれにより、一夏はやはり大したことはない。と思っていた

だが実際は、一夏がわざと当たらないようにしていたのだ

直哉があのミッションを言った時、一夏はすぐさま自分のするべき事を理解した

 

(俺の役割は、時間稼ぎだっ!)

 

ラウラは始めから、一夏を敵視していた

その一夏が二人を助けに行けば、ラウラは二人ごと攻撃を敢行するだろう

だから、一夏が助けに行くよりも、弾か直哉が助けに向かい、一夏は時間稼ぎを行う

だから、一夏はわざと牽制程度の攻撃しかしていなかったのだ

本音を言えば、一夏は今すぐにラウラを撃破したい

だが、力ずくでは何も解決しない

力ずくで解決を計ろうとしたら、それは戦争と同じになる

それでは、ジェネレーションワールドで戦争を起こした連中と一緒になってしまう

 

(それじゃあ、なんで俺はダブルオーライザーに乗っている!)

 

一夏はそう自問して、自分を落ち着かせていた

そして視界の端では、直哉に援護されている弾がセシリアと鈴の二人をビットに運び込んだ所だった

 

(後は、こいつを鎮圧するのみだ!)

 

一夏がそう意気込んだ時だった

 

「双方、そこまでだ!」

 

と声が響き渡った

その声に驚いて、戦っていた二人や直哉達は動きを止めて声が聞こえた方向を見た

その方向に居たのは、スーツ姿の千冬と連れてきたのだろう息が荒いシャルロットが居た

 

「教官!?」

 

「千冬姉!?」

 

二人が驚いていると、千冬は二人に近寄り

 

「模擬戦をするのは構わない。だがな、アリーナのシールドバリアーを破壊するのは見逃せない。よって、この試合は私の権限で止める。更には、来週のトーナメントまで、一切の私闘を禁じる。いいな?」

 

とまくし立てた

すると、ラウラは直ぐ様機体を仕舞い

 

「教官の指事ならば」

 

と従った

それを見て、一夏も機体を仕舞い

 

「了解した」

 

と頷いた

それを聞いた千冬は、手を叩きながら

 

「では、解散!」

 

と告げた

こうして、第二戦は幕を下ろした


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