ISGジェネレーション   作:京勇樹

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しばらく、この作品が中心になりそうだ


正体の露見

アリーナから去った直哉達は職員室にて報告書を提出すると、それぞれ部屋へと戻った

そして直哉が部屋に戻ると、シャルルがシャワーを浴びているようだった

 

「シャワー中か……」

 

直哉はそう言いながら、シャワールームの前にあるトイレに入り用をたした

そして、出た時だった

そこには裸のシャルルが居たのだが、男ならあるはずのモノがなく、変わりに胸があった

そして、裸のシャルルの手にはボディーソープの詰め替えパックがあった

 

(ああ、そういえば、切れてたな)

 

直哉は先日、自分が使った時にボディーソープが切れたのを思い出した

シャルルはどうやら、それを取りに出たタイミングで直哉とかち合ったようだ

ふと気づくと、シャルルは顔を真っ赤にして固まっている

どうやら、羞恥心で固まっているようだ

 

「ほい、リターン」

 

直哉はそう言いながら、シャルルの肩を掴んでクルリと回すと、シャワールームへと押して、ドアを閉めた

その数秒後、シャルルの可愛らしい悲鳴がシャワールームから聞こえた

 

「さて、来てるかな」

 

直哉はそう言いながら、まるで何事も無かったように机のパソコンへと向かった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

それから十数分後彼女は出てくると、顔を真っ赤にしたままベッドに腰掛けた

すると、直哉がお茶を差し出しながら

 

「ほいよ、シャルロット・デュノアちゃん」

 

とその名を呼んだ

するとシャルル改め、シャルロット・デュノアは目を見開き

 

「なんで………」

 

と直哉を見つめた

シャルロットの言葉を聞いて、直哉は自身のパソコンに歩み寄りパソコンの画面をシャルロットに見えるようにした

パソコンの画面を見て、シャルロットは息を飲んだ

なぜならば、そこには《フランス政府によって秘匿されている筈の、自分のプロフィール》が表示されていたからだ

 

「なんで、それが………」

 

「オーブの諜報班の賜物だよ」

 

直哉はそう言いながら、シャルロットを見つめて

 

「それで、なんで男装(こんなこと)を?」

 

と問いかけた

そうするとシャルロットは、俯いてからポツポツと語りだした

自分の父親が社長のデュノア社が、倒産しかけていることを

デュノア社はIS企業世界シェア第三位ではあるが、開発出来たのは世界最後発の第二世代のラファール・リヴァイブのみ

他の国では第三世代機の開発が進んでいるのに、デュノア社は開発が難航

それにより、デュノア社が本社を置くフランスはEUの次期主力機選考プランの《イグニッションプラン》から外されてしまっていること

もし近い内に第三世代機が開発出来なかった場合、デュノア社はフランス政府からIS開発資格を剥奪されてしまい、それに伴って倒産

雇用している大勢の社員達が路頭に迷うことになるのだ

それとシャルロットが男装して、IS学園に来ることにはなんら関係が無いように思えるだろう

だが、シャルロットは今の社長夫婦の本当の娘ではないのだ

デュノア社社長、エト・デュノアと愛人であった故エカテリーナ・クラエの娘なのだ

しかも、シャルロットは幸か不幸か、ISの適性が高かったのだ

そして何を思ったのか、エト・デュノアはシャルロットに対して、IS学園に居る複数の男操縦者の使う機体のデータを盗んでこい

と命じたのである

もちろん、そんなことをして露見すればデュノア社はただではすまないだろう

しかし、どういう訳か、シャルロットの経歴データはデュノア社のデータベースには無かった

その変わりに、フランス政府の極秘ファイルに存在していたのだ

そこから分かるのは、フランス政府とデュノア社はもしシャルロットが捕まっても、知らぬ存ぜぬで通すつもりなのだろう

直哉がそこまで考えていると、喋り終わったシャルロットが

 

「全部話したら、スッキリしたよ………ごめんね? 騙すようなことをして」

 

と言いながら、悲しそうな笑みを浮かべた

それはまるで、全てを諦めているようだった

 

「クズが………」

 

直哉は地を這うような声で呟くと、お茶を飲んでるシャルロットを見て

 

「シャルロットは、この後どうなるんだ?」

 

と問いかけた

するとシャルロットは、俯いて

 

「どうもしないよ……良くて牢屋か、悪くて死刑かな?」

 

と呟いた

それを聞いて、直哉はシャルロットの肩を掴んだ

直哉の行動にシャルロットが驚いていると、直哉はそんなシャルロットを無視して

 

「本当にそれでいいのか? 生きたくないのか?」

 

と問いかけた

静かだが、力強い問いかけだった

直哉のその問いかけを聞いて、シャルロットの体が震えた

 

「親だからって、子供を道具にしていいわけがないんだ。子供にだって、拒否する権利はある。自由に生きる権利があるんだ。シャルロットは、本当はどうしたいんだ?」

 

直哉がそう言うと、シャルロットは涙を流しながら

 

「生きたい……生きたいよぅ……ボクだって、好きに生きたいよぅ………」

 

と漏らした

 

「でも……でも、ボクにアソコ以外の居場所なんて………」

 

シャルロットが泣きながらそう言うと、直哉が

 

「居場所なら、作ればいい。なんなら、俺がなってやる」

 

と力強く言った

その言葉が予想外だったらしく、シャルロットは涙で濡れた瞳で直哉を見つめた

 

「なんで、そこまでしてくれるの? ボクは、騙してたんだよ?」

 

シャルロットがそう言うと、直哉は真剣な表情で

 

「俺はな、シャルロット……親に捨てられたんだよ」

 

と呟いた

それを聞いて、シャルロットは思い出した

直哉と一夏の二人は、親が居ないということを

 

「俺は産まれてすぐに、孤児院の前に捨てられてたそうだ。だから、親の顔なんて知らないし、会いたいとも思わない……だけど、生き方は自分で選んでるつもりだ。流石に好き勝手とは言わないけど、俺は自分の信念は貫くつもりだ」

 

「直哉の信念……?」

 

シャルロットが首を傾げながら問いかけると、直哉はシャルロットを見つめながら

 

「例え、偽善と言われようが、泣いてる人、困ってる人、助けを求めてる人が居たら、俺は助けたいんだ」

 

直哉のその言葉を聞いて、シャルロットは息を飲んだ

直哉の言葉に、嘘はないだろう

なぜならば、直哉の瞳には強い意志の光が有ったからだ

 

「だからさ、シャルロット……頼っていいんだ」

 

直哉がそう言うと、シャルロットは直哉に抱きついて泣き出した

直哉は泣き出したシャルロットを優しく抱き締めて、泣き止むまで撫で続けたのだった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

それから十数分後、シャルロットは泣き止んで

 

「ありがとうね、直哉。ボク、頑張ってみるよ」

 

と言いながら、微笑んだ

 

「ああ。それと、IS学園に居る限り三年間は安全は保障されるからな」

 

直哉はそう言うと、手をポンと叩いて

 

「そうだシャルロット。ちょっと質問するいいかな?」

 

と問いかけた

 

「ん、なに?」

 

シャルロットが首を傾げると。直哉は

 

「エトさんがシャルロットにIS学園に行くように言った時、近くに本妻のカトリーヌ・デュノアが居なかったか?」

 

と問いかけた

その問いかけを聞いてシャルロットは、数秒間視を上に向けてから

 

「うん……居たね」

 

と答えた

今から約数ヶ月前、シャルロットは社長である父親に呼び出されて社長室に向かい、男装してIS学園に向かうように命令された

その時、父親たるエト・デュノアは社長のイスに座っていたが、その後ろには確かに、本妻たるカトリーヌ・デュノアの姿があった

それを聞いて、直哉は笑みを浮かべた

 

「なるほどな……」

 

それはまるで、何かを確信したような笑みだった

直哉のその笑みにシャルロットが首を傾げていると、直哉は手を振って

 

「こっちの話だ。気にするな」

 

と言いながらパソコンのキーボードを打って、メールを送った

そして、パソコンの電源を切ると

 

「俺も、軽くシャワー浴びてくるから。カップは流し台に置いとけ。出たら洗うから」

 

と言いながら、寝間着やシャツを手に持った

そして、シャワールームに向かって一歩踏み出した時

 

「ねえ、直哉」

 

とシャルロットが直哉を呼び止めた

直哉が振り向くと、シャルロットは微笑んで

 

「後で、一緒に寝ていい?」

 

と問いかけた

その言葉が予想外だった直哉は数秒間固まると、微笑んで

 

「おう。わかった」

 

と答えると、シャワールームに向かっていった

シャルロットはそれを見送ると、顔を真っ赤にしてベッドに転がったのたった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

それから少し時は経ち、就寝時間も過ぎた夜半

本来だったら誰も居ない筈の寮の屋上に、一人の少女が居た

小柄な体躯に長い銀髪

そして、右目の眼帯が特徴の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒだった

ラウラは憎しみの籠った目で、夜空を見上げながら

 

「織斑一夏……貴様だけは、許さないっ」

 

と地を這うような声で呟いた

 


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