ISGジェネレーション   作:京勇樹

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織斑プロジェクト

「死者数千名、生存者は……二名」

 

「それが、この二人か」

 

小惑星基地から帰還し、アメノミハシラのある部屋に生存者

織斑百春と十秋の二人を閉じ込めた

そしてこれから、尋問をするところである

その連行に、一足先に帰還していた直哉達が付いた

一夏からは、凄まじい怒りが湧いていた

 

「さて……名前は織斑百春と十秋……で、合っているな?」

 

「ああ……」

 

「はい……」

 

マークの問い掛けに、二人は頷いた

すると、マークは

 

「リボンズ達は、あの基地で何をしていた? お前達は、何を研究していた?」

 

と問い掛けた

すると、百春が

 

「彼等はあそこで、私達に様々な研究をさせていた……私達がやっていたのは、量子コンピューターと強化人間の研究だった」

 

と言った

すると、マークが

 

「量子コンピューター……それは、完成しているのか?」

 

と再び問い掛けた

その問い掛けに、十秋が

 

「一応、完成はしました」

 

と語った

それを聞いたマークが

 

「完成していたか……」

 

と呟いた

すると、百春が一夏と千冬を見て

 

「ロットナンバー千と千一か」

 

と呟いた

それを聞いて、箒が

 

「ロットナンバー……だと?」

 

と怪訝な表情を浮かべた

すると、一夏が

 

「俺と千冬姉が……何らかの研究個体……ってことだよな」

 

と言った

それを聞いた鈴が

 

「どういうことよ!?」

 

と声を張り上げた

それに答えようとしたのか、十秋が顔を上げた

だが、それより早く

 

「織斑プロジェクト……人工的に天才を造り上げようという計画……」

 

と束が言った

束に視線が集まると、束は続けて

 

「ちーちゃんはその千番目……いっくんは、その次に遺伝子組み換えで産み出された……ただいっくんの時に偶然、双子になった……一卵性双生児……しかも、異性……それが、円夏(まどか)……」

 

と言った

千冬と一夏の名前の数字は、その織斑プロジェクトのロットナンバーから来ていたのだ

 

「番外個体、円夏……この子のあらゆる能力は、ちーちゃんやいっくんには、遠く及ばなかった……だからだよね……円夏を強化人間にしたのは」

 

束のその説明に、誰もが言葉を失った

能力が及ばなかった

たったそれだけて、強化人間にした

それならば、円夏が一夏に向けた殺意の強さに納得がいった

円夏の殺意の理由は、比較からくる怨み

恐らく円夏は、二人によって連れていかれた後、何度も比べられたのだろう

頭の回転

IS適正

身体能力

そして比較され続けた挙げ句に、実の親達によって強化人間にされた

恐らく、円夏に施された強化施術は、グリプス戦役時のと超兵の技術だろう

両方とも、その技術を知っている奴が居る

それは、直接戦った一夏だから知っている

憎しみに染まった感応波

そして、今の一夏に近い身体能力

その時、一夏が百春の襟首を掴んで

 

「俺は別に、あんたらが俺の親だとは思わない……だけどな……あんたらみたいな人間がな、大嫌いなんだよ! 人の命を、なんだと思ってやがる! 自分達の実験台扱いか!? それに自分達の子供を使ってまで、自分達の実験がしたいのか!?」

 

と怒鳴りだした

掴んでる右手とは逆の左手は、爪が食い込む程に握り締めている

必死に、怒りを抑え込もうとしているようだ

しかし、その左手は震えている

今までの怒りが、吹き出してきているようだ

 

「あんたらみたいなのを、なんて言うか知ってるか!? 人でなしだ! 科学に魂を売り渡し、自分がしたいがままに人を傷付ける! それを、人類の進化だとか嘯いてな! それで涙を流すのは、何時だって子供達だ!!」

 

一夏は、これまで自分達が撃破してきた機体に使われた子供達を思い出した

強化施術を施され、人としての尊厳を奪われて、機体の部品にされた

それを撃破したのは自分達で、その罪から逃げるつもりは毛頭無い

だが、その根源たる二人を、許すことが出来なかった

 

「あんたらみたいなのはな、生きてちゃいけないんだよ

!!」

 

一夏はそう言って、腰の拳銃を抜いた

次の瞬間

 

「落ち着け、バカが!」

 

その一夏を、直哉が殴り倒した

そして直哉は、そんな一夏の肩を掴んで

 

「怒る気持ちも分かる! だがな、こいつらにはまだ理由価値がある! 貴重な情報源を殺すつもりか!? 下手すれば、それでリボンズ達の企みが阻止出来なくなるだろうが!?」

 

と怒った

すると一夏は、荒く呼吸を繰り返して

 

「悪い……途中から、ワケわからなくなった……」

 

と謝罪した

それを聞いた直哉は、一夏の肩を軽く叩いて

 

「分かればいい……今は取り合えず、その手の治療をしてこい」

 

と促した

それを聞き入れて、一夏は立ち上がり

 

「最後に、これだけは言っておく……俺はあんたらを、親とは思わない……二度と、その顔を見せるな」

 

と言って、部屋から出ていった

その一夏を追って、鈴と箒、ラウラが部屋から出た

それを見送り、マークが

 

「部下が失礼した」

 

とだけ詫びた

そして、二人を何の感情も籠ってない目で見て

 

「貴方達には、あの小惑星基地でしていた研究を、洗いざらい吐いてもらう」

 

と言った

場所は変わり、医務室

そこでは、エターナが一夏の手を治療していた

治療を受けている一夏は、一言も喋らない

すると、エターナが

 

「彼が遺伝子調整を受けてたことを知ったのは、本当に偶然だったのよ……」

 

と呟いた

それは、今から二年前

直哉達三人がスピリッツに入隊し、艦のデータベースに三人のメディカルデータを登録するために、様々な検査を受けた

その際に、エターナが一夏の遺伝子に不自然な点があることに気づいた

そして調べた結果、遺伝子調整が施されていたことに気づいたのだ

それを知った当初、一夏は動揺した

だが、直哉と弾が

 

『だからどうした』

 

『そんなことで、俺達の友情が終わるか』

 

と言いながら、一夏の肩を叩いた

それが一夏の精神を建て直し、三人の結束をより強めた

その結果、スピリッツでも秀でた連携に繋がったのだ

エターナの話を聞き終わり、箒達は

 

「一夏」

 

「そんなこと、あたし達は気にしないわよ」

 

「その通りだ」

 

と言って、一夏の肩に手を置いた

三人のその言葉に、一夏は小さく

 

「ありがとう……」

 

と呟いたのだった


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