ISGジェネレーション   作:京勇樹

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少し書き方を変えてみました


ドイツとの諍い

十数分後、直哉はシャルルと共に部屋に到着した

 

「神崎君は、どっちで寝てるの?」

 

「俺は、窓側だな」

 

シャルルの問いかけに直哉が答えると、シャルルは持っていたキャリーバッグを置いて、空いてるベッドへと座った

 

「うわっ、凄いフカフカだ」

 

「だよな。一流ホテルみたいだよな」

 

直哉はそう返答しながら、カバンを机に置いた

すると、シャルルが

 

「神埼くん、シャワーは?」

 

と直哉に問い掛けた

その問い掛けに直哉は、少し考えてから

 

「シャルル、先に浴びていいぞ?」

 

と答えた

 

「いいの?」

 

シャルルがそう首を傾げると、直哉は頷いて

 

「メールの確認とかするから」

 

と返した

 

それを聞いて、シャルルはキャリーバックからタオルと替えの下着等を取り出して

 

「じゃあ、先に浴びるね」

 

と言いながら、シャワールームに入っていった

直哉はシャルルを見送るとパソコンを起動し、メールの確認を始めた

十数分後、シャルルが出てきて入れ替わりに直哉がシャワールームに入った

そして時は経ち、直哉達は食堂で食事を終わると眠った

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

翌日、一日の授業も終わり、直哉達はアリーナに居た

目的は、直哉とシャルルが模擬戦するためだ

二人は向き合い、機体を展開した

シャルルは直哉の機体を見て、目を見開いた

全身装甲は初めて見たのだろう

そして、シャルルの機体はフランスの第二世代機

ラファール・リヴァイブを改造した機体

ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡである

機体の色は普通のネイビーグリーンからオレンジに変更されており、スラスターも原型機体より大きいらしい

 

「いくよ、直哉」

 

シャルルはそう言いながら、両手にマシンガンを構えた

それを見て、直哉も盾を前に構えて

 

「ああ…………」

 

と短く答えた

それから数秒間、二人は無言で向き合い、二人は激突した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

結果から言えば、直哉の勝ちだった

しかし、直哉として驚いたのは、シャルルの武装の切り替えの早さだった

ISの武装変更は、量子変換機能を使っているので、普通だったらどんなに早くても二秒から三秒はかかる

しかし、シャルルの場合はそれをほぼ一瞬で終わらせていた

だから、最初はマシンガンだったが、直哉が気づいた時には全く違う武装だったというのがザラだった

 

「直哉、強いね? 本当に、ISを使って半年未満なの?」

 

「ああ、それは間違いない」

 

嘘は言ってない

確かに、《ISと化した愛機を使っては》半年未満である

 

「しかし、武装変更スピードが早いな。驚いたぞ」

 

「ラピッドスイッチって言ってね、ボクの得意技術なんだ」

 

直哉の言葉を聞いて、シャルルは朗らかな笑みを浮かべながら返した

しかし、シャルルの技術はそれだけではない

距離の取り方が絶妙なのだ

離れようとしたら接近されて、逆に近づこうとしたら距離を取られる

ラピッドチェンジと合わせて、砂漠の逃げ水《ミラージュ・デ・デザート》と呼ばれる戦闘技法である

その時だった

突如として、周囲がざわつき始めた

 

「ウソ! あれって、ドイツの第三世代機!?」

 

「まだ、ドイツ本国でトライアル中って聞いてたけど……」

 

ドイツと聞こえて、直哉達はある方向に視線を向けた

敵意の視線を投げかけてきている人物の居る方向を

視線の先に居たのは、黒いISを纏った小柄な銀髪の少女

ラウラ・ボーデヴィッヒだった

そんなラウラが見ていたのは、鈴や箒と格闘話をしていた一夏だった

 

「おい貴様。貴様も専用機持ちだそうだな? だったら、私と戦え」

 

ラウラは一方的に、一夏に向けてそう言った

だが、一夏は面倒だと言わんばかりに手を振って

 

「嫌だね。戦う理由がない」

 

と拒否した

その直後

 

「だったら……戦う状況にしてやる!」

 

ラウラはそう言いながら、IS

シュヴァルツェア・レーゲンの右肩に装着されている大口径リボルバーレールカノンを《機体を纏ってない一夏目掛けて撃った》

それを見て、シャルルが左手に盾を展開しながら一夏の前に出ようとした

だが、それよりも早く、弾が抜き打ちでビームライフルを撃った

弾が撃ったビームによって、ラウラが放った砲弾はちょうど中間地点で迎撃された

 

「なっ!? (バカな!? 音速を超えてる速度の砲弾を、迎撃しただと!?)」

 

予想外だったのか、ラウラは目を見開いた

そんなラウラに、直哉はバーストモードにしたライフルを向けながら

 

「貴様、どういうつもりだ? 機体を展開してない相手を撃つなど……殺すつもりか?」

 

と殺気を滲ませながら、低い声で問い掛けた

その直哉の殺気に、ラウラは一瞬体をこわばらせるが

 

「その男が居なければ、教官は連覇という偉業を成し遂げていたんだ! そんな男、居る価値など無い!」

 

と言いながら次弾を装填して、再び砲撃体勢を取った

だが

 

『そこの生徒! 所属してるクラスと名前を言いなさい!』

 

と、スピーカー越しに怒鳴り声が聞こえた

どうやら、管理担当だった先生が騒ぎに気づいたようだ

すると、ラウラは舌打ちして

 

「水を差された。今回は引いてやる」

 

と言いながら、機体を消してから去っていった

直哉達がそれを無言で見送ると、鈴が

 

「なんて奴よ……問答無用でぶっ放すなんて……」

 

と、ラウラが去った方向を見つめて

 

「同じEU代表の一人として、恥ずかしいですわ……」

 

とは、セシリアの談である

すると、箒が

 

「一夏、あいつとなにがあったんだ?」

 

と心配した様子で、一夏に問い掛けた

すると一夏は、渋面を浮かべながら後頭部をボリボリと掻いて

 

「第二回モンドグロッソ決勝戦、千冬姉が不戦敗だったのは覚えてるよな……?」

 

と箒たちに問い掛けた

一夏の問い掛けに、箒たちは頷いて

 

「ああ。しかも、その直後に突然の引退宣言だったな」

 

「理由がわからなくって、疑問だったわね」

 

「それがどうしましたの?」

 

箒たちがそう言うと、一夏たちは歯を食いしばって

 

「決勝戦の直前、俺たちは誘拐されたんだよ……」

 

と地を這うような声で、告げた

 

「俺たち三人は、千冬さんが送ってくれたチケットで、大会を見にドイツまで行ってた……」

 

「だが、決勝戦前。俺たちはそろってトイレに行った時に誘拐されたんだ……」

 

「そんな俺たちを助けるために、千冬さんが決勝戦を放り出してまで来てくれたんだ……」

 

三人の話を聞いて、箒たちは息を飲んだ

そんな情報、一切報道されていなかったからだ

 

「それが、千冬さんの不戦敗の理由か……」

 

「そんな情報、流されたらドイツに非難殺到は間違いなしね……」

 

「ですわね。開催国でありながら、選手の身内とその友人達を誘拐されるなど、本来はあってはならない事態ですわ……」

 

と三人が会話していると、それまで沈黙を保っていた簪が

 

「……そして、千冬さんに織斑君たちの居場所を教えたのは、ドイツ軍だった……だから、千冬さんはお礼として一年間、ドイツ軍にISの教官として居た……そうでしょ?」

 

と一夏に問い掛けた

簪の問い掛けに、一夏は頷いて

 

「ああ、簪の言う通りだ……」

 

と言うと、ドアのほうに向けて歩き出した

その一夏の後に続いて、直哉と弾も歩き出した

 

「一夏?」

 

「直哉さん?」

 

「弾?」

 

箒、セシリア、カオルが呼び掛けると、三人は振り向いて

 

「悪い。先に戻るな」

 

「時間も時間だし、疲れたからな」

 

「お疲れ」

 

と言うと、アリーナを去った

そんな三人を、残ったメンバーは心配そうに見送った


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