ISGジェネレーション   作:京勇樹

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休み時1

エウクレイデスは全隊帰投後、海に潜行

今現在は、海底付近を航行していた

そして会議室では、入手した情報の精査が行われていた

その中で、気になる一文が見受けられた

それは、プロジェクトE

詳細は不明だったが、直哉達は嫌な予感がした

そして一行は、次なる作戦地域に向かった

ユーラシア大陸の総合拠点

キルギスへ

ただし、幾らスピリッツとは言っても休養は必要である

キルギスに入る前に、カナダのアサバスカに入った

カナダはアメリカと地続きであるため、やはり緊張感はあった

しかし、アメリカと比べればまだ落ち着いていた

そこで、息抜きすることにしたのだ

なお、アークエンジェルの方も欧州の統括支部の陥落に成功

情報の入手に成功したらしい

そしてアークエンジェルの方は、一路南下

アジア大陸に向かった

そこに、大規模拠点があることが分かったから潰す算段らしい

その後は、亡国機業の最大拠点を破壊する

そうすれば、後は情報戦で押さえられる

そしてエウクレイデスから降りた一行は、簡易的な変装で町を歩いていた

 

「まさか、こんな形で外国旅行とはな……」

 

と言ったのは、髪をスプレーで金色にしてサングラスを掛けている直哉である

その直哉の同行者は、髪をスプレーで銀色に染めたセシリア

そして、長い金髪のウィッグを着けたシャルロットだ

 

「気づかれたらって思うと……」

 

「怖いですわね」

 

直哉の言葉に同意するように、二人はそう言った

なお、この三人が居るのは街角の喫茶店である

セシリアは紅茶を

シャルロットはカプチーノ

直哉はコーヒーを飲んでいる

そして三人が見ている先では、軍人達が歩いている

やはり緊張状態だからだろう、その軍人達もピリピリしていた

だが、直哉は

 

「堂々としていれば、大丈夫さ」

 

と言って、コーヒーを飲んだ

それは、慣れてるから言える言葉だろう

慣れてない二人は、少しソワソワしながらカップを口元に運んだ

その時

 

「君達」

 

と先程の軍人の一人が、声を掛けてきた

それに二人が肩を僅かに震わせたのと同時に、直哉がその軍人を見て

 

「なんでしょうか?」

 

と問い掛けた

すると、その軍人は

 

「何やらソワソワしているようだが、どうしたのかな?」

 

と問い掛けてきた

その言葉に、セシリアとシャルロットは緊張から体を強張らせた

すると、直哉が

 

「ああ、軍人さん達が近くを歩いているのに慣れてなくて、少し緊張してしまいました」

 

と苦笑いを浮かべた

すると、その軍人は

 

「すまないな……我々も本当なら、街中なら私服で歩きたいんだがな……命令でな。何時、旧女性権利主義者達がテロを行うか分からないからな……」

 

と言って、被っていた帽子を目深に被り直した

それを聞いて、直哉は

 

「やはり、まだ居るんですか?」

 

と問い掛けた

すると、軍人は悔しそうに

 

「ああ……この間、過激派らしい所から襲撃予告が来たからな……そのために巡回しているんだ……分析では、近日中に起きるようだ……」

 

と言った

そして、振り向いて

 

「君達も、今日は早く帰りなさい」

 

と言って、離れた

直哉はそれを見送り

 

「大丈夫か?」

 

と問い掛けた

すると、セシリアとシャルロットの二人は深々と安堵の溜め息を吐いて

 

「き、緊張したぁ……」

 

「本当ですわ……」

 

と漏らした

そして、もう一口飲んで

 

「しかし、テロですか……」

 

「何というか……もう、どうしようもないのに……」

 

と呟いた

その後飲み終わった三人は、カップを返却

また街中に繰り出したのだった

その頃、弾は

 

「いやぁ……自然豊かですねぇ」

 

「そうですね」

 

借りたボートを漕いで、川を進んでいた

よく見れば、二人の手には釣竿がある

どうやら、釣りデートに興じているようだ

二人の乗ったボートはゆっくりと流れていて、ノンビリとしていた

すると、弾が

 

「カナダって、何が釣れたっけか?」

 

と首を傾げた

すると、虚が

 

「カナダですと……鮭と鱒が釣れたはずですよ」

 

と言った

それを聞いて、弾は

 

「ああ、そこら辺ですか……まあ、簡単に釣れる訳ないか」

 

と言った

その時だった

虚の持っていた竿の先端が、大きくしなった

 

「え、ええ!?」

 

「うおっ!? 掛かった!?」

 

弾は自分が持っていた竿を置いて、虚のカバーに入った

そして、格闘すること数分後

 

「釣れた!!」

 

「こりゃ、大物だ!」

 

虚の釣竿に掛かったのは、長さ80cmに届くだろう鱒だった

それをなんとかボートに引き揚げて、二人は深々と溜め息を吐いた

その時二人は、まるで抱き締める態勢になっていることに気づいて顔を赤くした

その後二人は、ゆっくりと釣りを続けたのだった

更に場所は変わり、直哉達が居るのとは別の街

そこでは、グラハムと薫子が喫茶店デートと洒落込んでいた

しかもその喫茶店は、高級感溢れる店だった

すると、薫子は

 

「あ、あの……本当に、いいんですか?」

 

とグラハムに問い掛けた

すると、グラハムは

 

「ふ、構わないさ。君には、機体の調整で苦労を掛けたようだからな。今回は、その礼さ」

 

と言って、薫子の注文も一緒に取った

そして、その支払いに使ったのは、黒いカード

それを見た薫子は

 

「わ、初めて見た」

 

と呟いた

すると、グラハムは

 

「ふ、なかなか使わなかったからな。貯まる一方だったのさ」

 

と言って、一括で支払いを済ませた

そして、席に座っていると

 

「お待たせしました。コーヒーとカフェオレ。アップルパイです」

 

とウェイターが、カートで運んできた

そして、机に丁寧に置くと

 

「それでは、ごゆっくりと」

 

と恭しく一礼して去っていった

それを見送り、グラハムは

 

「さあ、食べたまえ」

 

と薫子に促した

それを聞いて、薫子は

 

「で、では」

 

と言って、一口食べた

すると、驚いた表情で

 

「うわ、美味しい」

 

と呟いた

それを聞いて、グラハムは

 

「ふ、それは良かった」

 

と言って、コーヒーを一口飲んだ

はっきり言って、かなり様になっている

それを見て、薫子は

 

(うわぁ……グラハムさん、かっこいいなあ)

 

と思った

すると、薫子の視線を感じてか

 

「何かな?」

 

とグラハムは、薫子に問い掛けた

すると、薫子は

 

「あ、いえ。何でもないです!」

 

と言って、アップルパイを食べた

それを見て、グラハムは

 

(私達パイロットの役割は、本来はこのような少女達を戦場に出さないようにするべきなんだがな)

 

と思ったのだった

 


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