ISGジェネレーション   作:京勇樹

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鬼札

ある日一夏は、不思議な夢を見ていた

それは、一面水に満たされた世界

しかし、その深さは精々足首まで

 

「ここは……」

 

「ここは、コアの世界だ……」

 

一夏が呟くと、そう男性の声が聞こえた

振り向いた先に居たのは、一人の男性だった

 

「貴方は……」

 

「私の名前は、神崎直隆……まあ、今となっては意味の無い名前だ」

 

一夏が問い掛けると、その男性

直隆はそう言った

すると一夏は、その名前と直隆の目を見て気付いた

 

「貴方は……直哉の父親ですね?」

 

「そうだね……父親らしいことは、何一つしてやれなかったが」

 

一夏の問い掛けに、直隆は自虐的にそう答えた

すると一夏は

 

「それで、意味の無い名前とは、まさか……」

 

と遠慮気味に問い掛けた

すると直隆は

 

「そう……私は既に、死んでいる……六華を助けようとしていた百合を庇ってね」

 

と言った

それを聞いて、一夏は一瞬辛そうな表情を浮かべた

しかし、気を持ち直して

 

「それで、ここはコアの世界と言いましたよね?」

 

と問い掛けた

すると直隆は

 

「ああ。つまりは、ISコアの世界だ……君は、クロッシング・アクセスという現象を知っているかな?」

 

と問い返した

それに、一夏は頷いて

 

「ええ……名前だけなら」

 

と答えた

クロッシング・アクセス

それは、二つのISコアが何らかの要因で繋がり、パイロット同士の意識が繋がる現象である

 

「これは、それの亜種といった所だね……さて、時間が無い」

 

「それって……つっ!?」

 

直隆の言葉に首を傾げた時、一夏は気付いた

直隆の体が、薄くなり始めていたのである

 

「直隆さん!?」

 

「慌てるな……言っただろう? 私は既に死んだ人間だ……一個のコアのお陰で、五年も意識は残っていたがね」

 

一夏が驚愕すると、直隆は冷静にそう言った

すると一夏が

 

「一個のコア?」

 

「どういう偶然かは分からないが、亡国機業の本部から日本に流れたコア……現在は、一機のコアになっているよ」

 

一夏の問い掛けに、直隆はそう答えた

それを聞いた一夏は、あることを思い出した

今、エウクレイデスにて保管されている四機のIS

その内の一機が、一切反応しないことを

 

「り、龍閃!?」

 

「ああ……さて、本題だ……まず、直哉に伝言を頼む……ロクでもない父親で済まなかったと」

 

一夏の言葉に頷いてから、直隆はそう言った

そして、直隆は

 

「最後に、君の機体に……亡国機業の支部と本部の場所……その全てのデータを転送しておいた」

 

と言った

この時、直隆の体は既に半分以上が消えていた

そして直隆は

 

「これで、完全記憶能力を持っていた私が……人の役に立てた……織斑一夏君……亡国機業本部には、君達の両親も居る……彼等は正に、科学者だ……科学に魂を売った、馬鹿者だ……自分の娘を実験台にするほどだからな」

 

と言った

それを聞いた一夏は

 

「娘……?」

 

と困惑した

一夏が知る限り、一夏の家族は姉たる千冬だけ

まさか、居るのかと

そんな一夏を無視し、直隆は

 

「こんなことを頼むのは、一人の大人として恥ずかしいし恥知らずだろう……だが、頼む……直哉と六華……そして世界を、頼む……」

 

と言って、完全に消えた

そこで、一夏の視界は暗転

そして目覚めた

 

「……つっ!!」

 

目覚めた一夏は、机の脇の私物入れの中からIS機体の待機形態たるペンダントを取り出すと二人部屋から出た

そして、束と千冬に宛がわれた部屋に向かった

そして、ドアを叩きながら

 

「束さん! 千冬姉! 開けてくれ!」

 

今の時間は、朝6時

普通だったら、まだ寝ているかもしれない時間だった

しかし、直ぐにドアが開いて

 

「どうした、一夏。そんなに慌てて」

 

と千冬が出てきた

千冬は最近、朝5時半に起きてランニングをするようになっていた

どうやら、MSの操縦が予想以上に体力を消耗することに気付いたらしい

その後ろには、束が眠そうにしている

どうやら、起きたばかりらしい

 

「束さん! データファイルを確認してください! もしかしたら、切り札になるかもしれません!」

 

「はへ?」

 

やはり起きたばかりだからか、束は間抜けな声を漏らした

その後一夏は、詳細を話した

すると、束は

 

「すぐに調べる!」

 

とパソコンに一夏の機体を繋げた

そして、千冬は

 

「……確かに、お前には妹が居る……双子だ」

 

と言った

 

「俺にも、妹が……」

 

「名前は、円夏(まどか)……知らないのも無理は無い……産まれてすぐに、両親が円夏を連れて消えたからな……」

 

千冬がそう言うと、束が

 

「これだーー!!」

 

と声を上げた

その声を聞いて、一夏と千冬は視線を束の方に向けた

すると、束が

 

「有ったよ! 厳重なロックが施されたファイルが! 流石は、量子力学の天才だ! 凄い堅かった!」

 

と興奮していた

そして続けて

 

「それに、場所だけじゃない! 亡国機業の幹部の氏名と写真まで有った! これは、正しく切り札だよ!!」

 

と言った

これが、亡国機業とスピリッツの戦争の幕開けだった

世界を巻き込んだ、戦争の


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