ISGジェネレーション   作:京勇樹

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少女たちの愁いと新たな出会い

「直哉さん……」

 

自室に居たセシリアは、先日起きた襲撃事件を思い出していた

 

突如侵入してきた、十数機の無人機群

 

それを直哉達五人は、圧倒的実力により排除した

 

さらに言動から、直哉達は殺し合いに慣れていることも分かっている

 

だが、余りにも不可解だった

 

セシリアは机に置いてあるパソコンに、目を向けた

 

そこには、セシリア付きのメイド

 

チェルシー・ブランケットが調べた直哉達三人の経歴が表示されていた

 

調べた限り、直哉達は普通の男子学生である

 

確かに、約二年の間行方不明だった期間はある

 

しかし、それ以外は至って普通の経歴である

 

幼稚園や保育園を出て、小学校に入学して卒業

 

そして、中学校一年末に行方不明になり、今から約2ヶ月ほど前に保護されたことになっている

 

どこにも、軍事教練を受けた形跡などない

 

有り得るとしたら、行方不明だった二年の間に受けた位

 

だが、それにしたって有り得ない

 

教練を受けた程度では、実戦では大して動けない

 

軍事教練を受けた後、何回か実戦をくぐり抜けて初めて、兵士となる

 

何せ、《人は同じ人を殺すのを躊躇う》からである

 

教練では紙か人形を的にするが、実戦はそうはいかない

 

同じ人を相手にして、生きる為に、敵となった人を殺さなければならない

 

そして人を殺した大半の新兵の内、約半数が精神に異常を来す場合がある

 

それは、罪悪感から来るものだ

 

人を殺したという罪悪感がプレッシャーとなり、精神を圧迫する

 

そこから、砲弾神経症(シェルショック)やPTSD

 

トラウマに発展し、最終的には自殺する例すらある

 

だが、中にはそれを乗り越えて、人を殺すことに躊躇いを覚えなくなる兵士も居る

 

それが、ベテランやエースと呼ばれる兵士である

 

そして、セシリアの考えでは、直哉達は間違い無くそれに属する部類だ

 

しかも、並大抵のエースではない

 

それは、あの戦いで一発の被弾も無いことから分かる

 

だがやはり気になるのは、その戦闘技術をどこで身に付けたのかである

 

セシリアはしばらく黙考するが、それが詮無き事と気づき

 

「はぁ……」

 

とため息を吐いた

 

そして、パソコンを閉じると立ち上がって

 

「夕食にしましょうか」

 

と言って、部屋から出ていった

 

なお、セシリアと同じ事を、あの時ピットに居た箒達も考えていた

 

直哉達に聞くのが一番手っ取り早いのだが、それは千冬に止められている

 

直哉達の事は、最高機密事項だと

 

それに何より、出撃する時の直哉達が放っていたプレッシャーを思い出すと、体が震えるのだ

 

納得は出来ない

 

だが、待つしかない

 

少女達はそう結論付けた

 

そして時は経ち、ある日の朝だった

 

「今日は皆さんに、転校生を紹介します。しかも、二人です!」

 

教壇に立った真耶がそう告げると、クラスメイト達は動揺した

 

「また転校生!?」

 

「先月二組に来たばっかりだよ!?」

 

約2ヶ月の間に、三人の転校生

 

どう考えても、異常である

 

その事に興奮したのか、クラスメイト達は口々に騒ぎ出した

 

すると、それまで黙っていた千冬が手を叩いて

 

「お前達、静かにしろ! 転校生が入れないだろ!」

 

と注意すると、クラスメイト達は一斉に黙った

 

全員が黙ったのを確認すると、千冬は真耶に視線を向けて

 

「山田君」

 

と言った

 

すると、真耶は頷いてからドアの方に視線を向けて

 

「どうぞ!」

 

と入るように促した

 

すると、ドアが開いて

 

「失礼します」

 

と、二人の人物が入ってきた

 

だが、何よりも視線を集めていたのが先頭に入ってきた人物だった

 

「自己紹介しろ」

 

「わかりました」

 

千冬が自己紹介するように促すと、その人物は頷いた

 

その人物の特徴は、短いポニーテールにした金髪にエメラルド色の瞳と中性的な顔立ち

 

何よりも、《男子の制服》を着ていた

 

「ボクの名前は、シャルル・デュノアと言います。ここにボクと同じ境遇の人達が居ると聞いて、フランスから来ました。よろしくお願いします」

 

と名乗った

 

「お、男の子……?」

 

「五人目の……?」

 

「男の子……?」

 

一夏や弾を含めたクラスメイト達が呆然とするなか、シャルルは淡い笑みを浮かべた

 

だが、そんなシャルルを直哉とジュリは懐疑的な視線で見ていた

 

こうしてまた、一つのトラブルの種が現れた

 

 


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