ISGジェネレーション   作:京勇樹

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短いです


兄と妹

エターナに呼ばれて、数分後

直哉は医務室に到着した

 

「エターナさん」

 

「来たわね」

 

直哉が入室と同時に呼ぶと、PCに向き合っていたエターナが振り向いた

そして

 

「彼女は、この向こう側よ」

 

と言って、PCを操作した

すると、それまで白く染まっていた壁

マジックミラーが透過

その向こう側では、一人の少女が大人しくベッドに腰掛けていた

その少女は、両手が手錠で拘束されていた

拘束されているのは、少女が強化人間だからだろう

しかし直哉は、その少女に違和感を覚えた

なにせその少女は、不安そうな表情をしていたからである

 

「エターナさん……まさか」

 

直哉が問い掛けると、エターナは肯定するように頷き

 

「彼女、どうしてここに居るのか、何も覚えてないそうよ」

 

と言った

そして続けて

 

「可能性として高いのは、後催眠暗示を用いた一部の記憶消去……もしくは、別の人格が植え付けられていて、そっちが表になっていて、覚えてないか……ね」

 

と言った

それを聞いて、直哉が

 

「嘘、という可能性は?」

 

と問い掛けた

するとエターナは、首を振って

 

「それは無いわね……少し検査したから。それに、話せば分かると思うけど……彼女、八歳位で記憶が止まってるみたいよ」

 

と告げた

それを聞いて、直哉は

 

「会っても?」

 

と問い掛けた

すると、エターナは

 

「構わないわ」

 

と言って、立ち上がった

そして、奥の部屋に入るドアの横のコンパネを操作した

そして、ドアが開くと直哉は入り

 

「起きたみたいだね」

 

と努めて、優しい口調で話し掛けた

すると、彼女は不安そうに

 

「お兄さん、誰?」

 

と幼い口調で問い掛けた

確かにその雰囲気は、10歳前後の印象だった

それを察して直哉は、目線を彼女に合わせるために片膝を突いて

 

「俺は、神崎直哉……君のお名前は?」

 

と問い掛けた

すると、彼女は

 

「私の名前は……神崎六華」

 

と答えた

その名前は間違いなく、妹の名前だった

それを聞いた直哉は、目を細めてから

 

「ああ、ようやくだ……やっと会えたな、六華」

 

と言いながら、六華の頭を撫でた

すると、六華が不思議そうに首を傾げた

それを見て、直哉は

 

「ああ、ごめんな……あのね、六華……俺と六華はな兄妹なんだ」

 

と言った

すると、六華は

 

「お兄……ちゃん?」

 

と直哉に問い掛けた

その問い掛けに、直哉は頷いて

 

「ああ……証拠に、ほら」

 

と言いながら、ポケットの中からあの写真を取り出して六華に差し出した

 

「こっちが俺で、こっちが六華……そして、この女性が俺達の母さんだ」

 

直哉がそう説明すると、六華があ……と声を漏らして

 

「この人……私を逃がそうとしてくれた人だ……」

 

と呟いた

 

「そうなのか?」

 

直哉が問い掛けると、六華は頷き

 

「私ね、気が付いたらある施設に居たの……そこでは、毎日注射されたり、何かのお薬を飲まされたの……それが辛くて、泣いてた……そしたら、この人が私を逃がそうとしてくれた……けど、悪い人達に捕まっちゃったの……」

 

と語った

そこが、亡国機業の基地なのだろう

そしてそこで、六華は強化施術をされたようだ

それを聞いた直哉は、静かに怒りを飲み込み

 

「そうか……辛かったな、六華」

 

と言いながら、優しく六華を抱いて頭を撫でた

すると、六華の目から涙が溢れて泣き始めた

静かに

ただただ、静かに泣いていた

直哉はそんな六華が泣き止むまで、優しく撫でていた

そして、六華が落ち着いたのは数分後だった

直哉は、ポケットからハンカチを取り出すと涙を拭いて

 

「さて、ごめんな、六華……俺には、やることが有るんだ」

 

と言って、立ち上がった

そして、手錠に触れて

 

「悪いが、これは俺だけじゃあ外せないんだ……でも、六華が良い子にしていたらすぐに外されるからな」

 

と言った

そして、六華に背を向けた

その時

 

「あ、お兄……ちゃん」

 

と六華が、遠慮がちに直哉を呼んだ

そして、直哉が振り向くと

 

「お母さんを……助けて」

 

と言った

それを聞いて、直哉は頷き

 

「ああ、その依頼……確かに引き受けた……またな、六華」

 

と言って、その部屋から出た

こうして、穏やかに兄妹の再会は終わったのだった


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