ISGジェネレーション   作:京勇樹

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幕開け

文化祭から一週間後

IS学園は文化祭の片付けと平行しながら、戦闘によって壊れた部分の修理を始めた

しかしその中に、直哉達の姿は無かった

その理由となったのが、翌日早くにあったアメリカ・ロシア・ドイツの三か国が発表した共同声明だった

 

『我々は、オーブをテロ支援国家に指定し、国連軍を編成し討伐する』

 

という共同声明だった

それを出した理由は、二つ

1、確認されているテロ集団の使用ISがオーブのものと設計が酷似していること

2、IS学園から逃走したテロ集団の最終ルートが、オーブに向かっていること

 

これらを挙げて、オーブをテロ支援国家として声高に批難した

勿論だが、オーブは事実無根だと否定

テロ支援国家指定を解除してもらうように求めた

しかし、三か国は無視

安保理にて国連軍編成を提案し、受諾された

そして、IS委員会もそれを受けて、IS部隊の派遣を決定

三か国だけでなく、世界各国にIS部隊の派遣を要請した

それにより、今のIS学園には専用機持ちは一人も居ない状態だった

そして今、オーブ近海に編成された国連軍艦隊が展開していた

それは、アメリカ海軍第六機動艦隊を中心に編成された艦隊だった

艦艇の数は、優に50を越える

そして、アメリカ海軍第六機動艦隊旗艦

新鋭艦、フィラルド級原子力空母一番艦《フィラルド》

そのブリーフィングルームに、集められた専用機持ちが全員集まっていた

そして今、作戦説明が終了したところである

殆どの専用機持ちが真剣な表情の中、IS学園から集められた直哉達と関わりの強い一同は複雑そうな表情だった

彼女達とて、国家に所属している為に上からの命令には従う

だが、納得がいかなかったのだ

 

「今回のこと、どう思う?」

 

「……明らかに、女性権利主義者が関わってる」

 

シャルロットの問い掛けに、簪がそう言った

簪が言ったのは恐らく、IS委員会や各国に居る過激派のことだろう

本来ならば専守防衛のための自衛隊IS部隊も、過半数が国連軍に編成されている

明らかに、女性権利主義者が動いたとしか考えられなかった

 

「それに、今居る中に……カオルやウーニェンだけじゃない……一夏達も居ない」

 

「間違いなく、オーブに居ますわね」

 

箒の言葉を聞いて、セシリアがそう言った

するとダリルが

 

「だあ……出たくねえ」

 

と椅子の背もたれに、上体を預けた

その時だった

 

「なによ、鈴。全然やる気無いみたいじゃない」

 

と誰かが声を掛けた

全員が視線を向けると、そこに居たのは長い髪をサイドポニーテールにした一人の少女だった

すると鈴が

 

「乱……あんたまで来てたの?」

 

と言った

彼女の名前は、凰乱音(ファン・ランイン)

鈴の従妹にして、台湾の代表候補生である

 

「なによ、その言い方は。せっかく、世界の敵と戦いに来たってのに」

 

鈴の言い方にイラついたのか、乱は眉をひそめながらそう言った

そこに、褐色肌の少女

タイ代表候補生

ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーが現れて

 

「あの……彼等は、なぜ居ないのでしょうか?」

 

と一同に問い掛けた

すると、乱が

 

「彼等って誰よ?」

 

とヴィシュヌに問い掛けた

 

「IS学園防衛戦闘において多大な貢献をした、神崎直哉、織斑一夏、五反田弾です。彼等が居なければ、下手したら死者も出ていたかもしれません」

 

ヴィシュヌの説明を聞いて、乱はへー、と言った

なお、スピリッツに関しては箝口令が敷かれている

余計な混乱を避けるためだ

すると、乱が

 

「どうせ、恐くなったから逃げたんでしょ?」

 

と侮蔑したように言った

すると、そんな乱の首根っこを鈴が掴んで

 

「あんたに、あいつらの何が分かるってのよ」

 

と睨みつけながら、拳を握り締めた

 

「待て、落ち着け鈴!」

 

「今問題を起こすのは!?」

 

と一同が鈴を引き留めた

そのタイミングで

 

『全作戦要員に通達する。専用機持ちは総員、甲板に集合せよ。繰り返す。全専用機持ちは総員、甲板に集合せよ』

 

と放送が掛かった

それを聞いて、鈴は

 

「ふん」

 

と言いながら、その手を離した

そして、ブリーフィングルームに残っていた全員は甲板に向かった

これから、戦場に向かうのだ

これが、この世界に於ける最初の大規模IS投入戦闘だった

そうして世界は、戦争に足を踏み入れることになる


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