ISGジェネレーション   作:京勇樹

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ポイント・オブ・ノーリターン

動きを止めたバンシィを見て、直哉は

 

『こいつを、拘束する』

 

と言った

すると、シャルロットが

 

『そうだね。もしかしたら、敵の情報が入手出来るかもしれないよ』

 

と同意した

その時、バンシィの装甲が解除された

そして、現れた姿を見て、シャルロットやセシリアは固まった

現れたのは、サイドポニーにした長い黒髪に眼鏡を掛けた女子

長月綾香だった

 

『長月さん!?』

 

『そんな!?』

 

二人は驚くが、直哉としては予想的中だった

それは、簪達に聞いた後のことだった

簪達から追加情報として、教えられたことがあった

 

《長月綾香という女子は、二人居る》

 

ということだった

同じ読みだけならば、幾らか存在するだろう

しかし、同姓同名

さらに、プロフィールの大部分も同じ

となれば、話は別である

しかしその違いは、死人と生者だ

死人の方は、今から五年前に事故で亡くなっていた

そして、今倒れている方の戸籍データが確認されたのが丁度その時期だった

話では、帰化した日系人ということになっている

しかし、余りにもタイミングが良すぎたのだ

何せ、事故が起きて三日程で帰化してきたことになっていたのだから

そして望月桜の方だが、こちらは問題無しと教えられた

IS学園に滑り込みで入学してきた理由は、彼女が代表候補生試験で補欠合格だったかららしい

補欠合格の理由だが、IS適正や成績は良かったが、体力が無かったらしい

しかし、貴重な代表候補生を減らす訳にはいかない

そう判断し、補欠合格としてIS学園に編入させたのだ

特に、スパルタとして知られている千冬のクラスに編入させて、体力作りをさせることにしたのだ

そして今現在、それが成功しているらしく、本人の持久力は上がっているとか

閑話休題

そして、シャルロットとセシリアが長月綾香を拘束した時

 

『これで終わりだ!』

 

とマークが、フェニックスガンダムの必殺技たるバーニング・ファイアで最後のデストロイを撃破した

バーニング・ファイアは、バード形態に変型したフェニックスガンダムの表面に、超高温の液体金属を纏って体当たりするという技である

そして、デストロイが爆散したのを確認した一夏が

 

『どうする、フォビドゥンのパイロット……そっちの戦力は、お前だけになったぞ?』

 

とフォビドゥンに問い掛けた

すると、フォビドゥンは

 

『今回は退いてやる……次こそ、貴様を殺す……そして私は、私になる……』

 

と言うと、海中に姿を隠した

そして少しすると

 

『HQより、迎撃部隊と傭兵達に告げる。敵戦力の喪失を確認。状況終了。迎撃部隊は帰還し傭兵達は指定する場所に来てほしい』

 

と千冬から通信が来た

それを受けて、迎撃部隊とスピリッツは学園裏手の資材搬入用ゲートに向かった

そして、全員が着地した

その数瞬後、重火器を持った数機のISが布陣

スピリッツに狙いを定めた

スピリッツは意に介していないが、教師IS部隊の一人が

 

「貴様ら、今すぐそのISを解除しろ! でなければ、発砲する!」

 

と言った

その直後

 

「お前達、何をやっている!!」

 

と千冬の怒鳴り声が響いた

すると、先程の教師が

 

「ブリュンヒルデ、この所属不明部隊は、不法にISを所持し、傭兵等と言う汚れたことにISを使っています! 即刻没収すべきだ!」

 

と言った

すると、千冬が

 

「貴様の頭は飾りか! 先程の戦闘、彼等の助力無しには全滅すら有り得た!」

 

と言った

しかし、その教師は

 

「それとこれと話は別だ! そもそも、ISは条約により戦闘行為に使用することは禁じられている! それをこいつらは、堂々と破っている! ならば、報いを受けさせるべきだ!」

 

と言った

だが千冬は

 

「だから、実力行使に出ると? 貴様、先程の戦闘を見ていなかったのか? 彼等の実力は、貴様達を遥かに上回っている。それに今の数ならば、間違いなく秒殺で終わりだ」

 

と言った

それに怒ったのか、その教師は顔を赤くして

 

「そんな筈はない! どうせ、出来レースだ! なんなら、今証拠を!」

 

とライフルを構えた

だが、引き金は引けなかった

何故ならば、その教師の眼前にフェニックスのビームライフルの銃口が突き付けられていたからだ

そしてマークは、わざと銃口を上下に動かしながら

 

『チェックメイトだ』

 

と告げた

そして気付けば、他のスピリッツも布陣していた教師IS部隊に武器を向けていた

それは、直哉達もだった

そしてスピリッツの動きに、教師IS部隊は反応出来ていなかった

 

「ば、バカな……男のクセに……」

 

『そっちは、ISっつー玩具を得てはしゃいでる子供みたいだぜ?』

 

教師の言葉に、ラナロウがそう言った

彼等からしたら、教師IS部隊などかの世界の新兵にも劣る相手だ

正しく、赤子の手を捻るようなもの

と言えるだろう

そして、今のでようやく実力差を把握したのか、教師IS部隊は銃口を下ろした

それを確認したスピリッツも、ゆっくりとだが武器を下ろした

すると千冬が

 

「こちらのバカ共が失礼した。謝罪する」

 

と言って、頭を下げた

するとマークは

 

『まあ、傭兵なんて仕事してるからな。慣れてるさ』

 

と軽い調子で返した

すると千冬は、シャルロットが抱えている綾香を見て

 

「そいつは、どうした?」

 

と問い掛けた

それに対して、直哉が

 

『戦域にて意識を失っている状態で発見。保護しました』

 

と言った

そして、秘匿回線では

 

『敵に操られていた可能性アリ。こちらで調べたいんですが』

 

と千冬に問い掛けた

千冬は肉声と秘匿回線による同時報告に、軽く驚いたがすぐに

 

「わかった。医療区画に運ぼう」

 

『あまり手荒にはするな』

 

と返答した

こうして、IS学園攻防戦は幕を下ろした

もしかしたらここが、帰還不能点(ポイント・オブ・ノーリターン)だったのかもしれない

だが、歴史にifは存在しない

あるのは、結果のみ


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