ISGジェネレーション   作:京勇樹

16 / 265
出撃

「あの機体は……」

 

一夏はバリアーの穴から現れた機体群を知っていた

 

現れたのは、白灰色にX字状にある光学カメラとスラスターが十数機

 

そして、その上に3機の特徴的なデュアルアイとV字形のアンテナが配置された、ダークブラウン、オレンジ、ワインレッドの機体

 

そしてそれら全てに共通してるのが、背中にあるコーンと、まるで鮮血の如き赤い粒子だった

 

その頃、ピット内では

 

「なんだ、あの機体は!?」

 

「アリーナのバリアーを、突破してきた……!?」

 

「なんという威力なんですの……!?」

 

ほとんどのメンバーは一様に驚いていたが、弾と直哉、そしてジュリとカオルは落ち着いて画面に映った機体群を見ていた

 

「あの機体は……」

 

「ジンクスにガンダムスローネか……」

 

「だな」

 

「さっきのは、アインのGNメガランチャーですね」

 

と冷静に話し合うと、直哉が入り口側のドアの近くの壁に備え付けられている通信端末を押して

 

「織斑先生、山田先生、聞こえますか?」

 

と管制室と通信を始めた

 

その頃、管制室はパニック状態にあった

 

「ダメです! 外部からのハッキングにより、アリーナ全てのドア及びハッチ開きません!」

 

真耶がパニック気味に報告すると、千冬は腕組みしながら

 

「校舎への通信はどうなっている?」

 

と真耶に問い掛けた

 

「そちらもダメです! 有線も無線も一切通じません!」

 

と真耶が報告すると、千冬は舌打ちした

 

そのタイミングで

 

『織斑先生、山田先生、聞こえますか?』

 

と直哉から通信が開いた

 

「神崎か……なんだ?」

 

千冬が問い掛けると、直哉は真剣な表情で

 

『俺達が出撃します。ついでに、リミッターの解除許可を』

 

と言った

 

「何を言ってるんですか! ここは、教師部隊に任せてください!」

 

真耶がそう返すと、直哉は淡々と

 

『ハッキリ言って、教師部隊なんてアテに出来ません。それに、出撃出来るんですか?』

 

と返した

 

すると、真耶は口を噤んだ

 

外部からのハッキングでハッチが開かず、教師部隊はとあるピット内に閉じ込められていた

 

手空きの教師と電子課の生徒達によりクラッキングが試みられているが、それも何時開くか分からないのが正直な所である

 

「お前達ならば、対処出来ると?」

 

千冬が問い掛けると、直哉は首を振って

 

『俺達にしか対処出来ないんです』

 

と断言した

 

「織斑先生……」

 

真耶が千冬を見上げながら問い掛けるような視線を向けると、千冬は数瞬してから

 

「いいだろう……お前達の出撃及び、リミッターの解除を許可する」

 

と告げた

 

『了解しました。あ、ハッチは吹き飛ばしますんで、ご了承をば』

 

「なに? おい!」

 

直哉の最後の言葉が聞き捨てならず、千冬は声を荒げるが、その前に直哉は通信を切った

 

場所は戻って、ピット内

 

「弾、聞いてたな?」

 

「おうよ!」

 

弾が頷くと、直哉は続いてカオル達の方に視線を向けて

 

「カオル、ジュリも出撃だ」

 

「あいよ!」

 

「了解」

 

二人が返答したのを確認すると、直哉は一旦ハッチの方に振り向いたが、すぐに箒達の方に向き直して

 

「先に言っておくが、これから見るのは他言無用だ。もし誰かに喋ったら、対価は自分の命と思え……」

 

と言うと、直哉はハッチの方へと一歩踏み出した

 

すると、セシリアが

 

「待ってくださいませ! 戦うんでしたら、私も!」

 

と言った

 

すると、直哉は肩越しにセシリアを見ながら

 

「セシリア……ここから先は、命の保証が効かない殺し合いの戦場だ……」

 

直哉が言い始めた途端、セシリアだけでなく、箒達も途轍もないプレッシャーを感じた

 

まるで、鍛えあげられた刃のように、鋭く全身に刺さってくるプレッシャーだった

 

「来るのならば、命を捨てろ……人を殺す覚悟を持て……ここから先は、戦争という名の戦場だ」

 

喋っているのは直哉だけなのに、弾とジュリからも強烈なプレッシャーを感じた

 

そして固まっていると、直哉が微笑む気配がして

 

「悪いことは言わない……お前達は、平和な世界に居ろ……」

 

と言うと、今度こそハッチの前に立った

 

その直後、四人は一斉に機体を展開した

 

すると、簪が目を見開いて

 

「全身装甲に、黄金色の機体……」

 

と驚愕の呟きを漏らした

 

簪が見ていたのは、カオルの機体、アカツキである

 

アカツキはヤタノカガミと呼ばれる特殊装甲を採用しており、ビーム兵器に対して絶大な防御力を誇っている

 

しかし、その特殊な装甲故に、機体の色は金色に輝いているのだ

 

そして、ジュリが纏っているのは、オーブの最新鋭機、アストレイ三型

 

本来だったら、入学式の前に渡される筈だったのだが、ジュリのNTとしての反射速度に追いつかず、その調整と機体の組み換えに手間取っていたのだ

 

だがようやく、GWの時に手渡されたのだ

 

アストレイ三型の特徴は、パイロットに合わせて機体の構成を替えられる点にある

 

そしてジュリは、射撃戦が得意なので、射撃戦重視に組み換えてある

 

「ハッチを吹き飛ばす。カオル、オオワシを」

 

「あいよ」

 

直哉に促されて、カオルはバックパックをシラヌイからオオワシに換装した

 

アカツキはバックパックを換装することにより、砲撃戦重視型と独立機動兵器使用型に能力を振り分けることが出来るのだ

 

「ジュリ、下がって構えてろ」

 

「了解」

 

直哉に促されて、ジュリは数歩下がった

 

「それじゃあ、全機、リミッター解除!」

 

「「「解除!」」」

 

直哉が号令を下した直後、三人も機体に掛けられていたリミッターを解除した

 

すると、四人の機体から今までとは比べ物にならないほど甲高い駆動音が響き渡った

 

すると、何か気になったのか簪はメガネを軽く叩いた

 

簪のメガネは視力矯正用ではなく、特殊なデバイスである

 

ISと同期させることにより、機体を展開せずにハイパーセンサー等が使用出来る優れものである

 

「え……なに、これ……?」

 

「簪、どうした?」

 

簪が呆然と呟くと、箒が不思議そうに問い掛けた

 

「神崎君と五反田君の機体のエネルギー値が……無限?」

 

「無限!?」

 

簪の呟きを聞いて、虚は驚愕した

 

「それに、カオルとウー・ニェンさんは10万……」

 

「なっ……」

 

「デタラメですわ……」

 

簪の呟きを聞いて、セツコやセシリアも固まった

 

普通、ISのエネルギー値というのは、競技用は大体千から千五百ほど

 

軍用は最大で五千ほどである

 

だというのに、カオルとジュリの機体はそれを優に超える10万

 

直哉と弾の機体に至っては、無限というエネルギー値

 

その余りのデタラメさに、箒達は呆然とした

 

そんな間にも、直哉達は着々とハッチを吹き飛ばす準備を進めていた

 

「カオル、弾、トリガーの同調を回せ」

 

「了解」

 

「回すぜ」

 

直哉からの要請に従って、弾とカオルは機体のトリガー権を直哉の機体に同調させた

 

それを箒達が呆然と見ていると、ジュリが箒達に近寄って

 

「どこか物陰に隠れて」

 

と促した

 

「あ、ああ……」

 

「分かりましたわ」

 

ジュリに促されて、箒達は柱の陰に隠れた

 

「バーストモード」

 

直哉がそう言うと、直哉が持っていたビームライフルの銃身が二つに割れてバチバチと放電が始まった

 

「行くぞ……衝撃に備えろ!」

 

直哉がそう言うと、ジュリは大型の盾を出して床に突端を突き刺した

 

その直後、直哉のビームライフル、弾のバラエーナプラズマビーム砲、カオルの高出力ビーム砲が放たれて、ハッチは吹き飛んだ

 

「なんて威力……」

 

「どれだけ制限が掛かってますの……」

 

簡単にハッチを吹き飛ばした三人の威力に、箒達は目を見開いた

 

アリーナのピットのハッチは、プラスチック爆弾を百kg使っても壊れないという触れ込みの合金とバリアーが副層式で展開されている

 

それを一撃で吹き飛ばすなど、箒達には予想出来なかったのだ

 

そして、ハッチに大穴が空いたのを確認すると、直哉は

 

「トライアド1、神崎直哉、ガンダムデルタカイ・EX……出る!」

 

と宣言すると、スラスターを吹かして出撃した

 

それに続き、弾達が

 

「トライアド3、五反田弾、フレイム・フリーダムガンダム……行くぜ!」

 

「ガーディアン3、ジュリ・ウー・ニェン、アストレイ三型……行きます!」

 

「フォース1、カオル・リオ・アスハ、アカツキ、出るぜ!」

 

と次々と出撃していった

 

四人が出撃すると、残った四人は無事を祈った

 

そしてこれが、少年達の戦乱の幕開けだった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。