ISGジェネレーション   作:京勇樹

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狂気の源

中では、ストライクとバスターが、指揮官仕様ゲイツとデュエルの二機と交戦していた

しかし、ストライクはMS戦闘では不利なランチャーを装備していて、ゲイツに押されていた

しかも一瞬の隙を突いて、ストライクは被弾墜落した

デュエルはディアッカに任せて、キラはゲイツに接近

ビームサーベルで、両足と頭を切り飛ばした

それによりゲイツは墜落

コクピットハッチが開き、中からパイロット

ラウ・ル・クルーゼが出てきた

 

『来るがいい、ムウ! この始まりの地になぁ!』

 

クルーゼはそう言いながら、残っていた建物の一つに入った

それを見たらしく、ムウも後を追って中に入った

 

『中に入ります!』

 

『了解した』

 

キラと弾も機体から降りると、二人を追うように中に入った

その建物は元々は何らかの研究機関だったのか、薬品が入っていた瓶やキャスターが散乱していた

キラと弾は銃を構えながら歩いていた

すると

 

『音が反響して、位置の把握が難しいな……』

 

と弾が言った

中ではムウとクルーゼが銃撃戦しているらしく、激しく銃声が響いていた

しかも

 

『懐かしいかね、ムウ! ここは、君も知っているはずだろう!?』

 

『知るか、バカ野郎!』

 

と二人の声が聞こえた

 

『君が知らないとは、罪だな。ムウ!』

 

『ムウさん!』

 

『キラか!』

 

ムウを見つけたらしく、キラはムウの名前を呼んだ

キラに僅かに遅れて、弾もムウを見つけた

 

『ムウさん、傷が!』

 

『大丈夫だ……キラ、撃つ気あるなら、セーフティー外しとけ』

 

ムウに指摘されて、キラは拳銃のセーフティーを外した

 

『まさか、君が生きているとはな! キラ・ヤマト! あの時の彼等の最優先対象だった君がなぁ!』

 

『僕の……僕の何を知っていると言うんだ!』

 

『奴のヨタ話に耳を貸すな!』

 

キラにそう忠告しながらムウは、銃を撃った

少しすると

 

『君にとっても、ここは懐かしい地の筈だ!』

 

『なにを!?』

 

クルーゼの言葉にキラが反論した直後に、声を頼りに弾が銃を撃った

だが

 

『ちっ……手応えがねぇ』

 

と漏らした

 

『ここは、始まりのコーディネーター。ジョージ・グレンが公開した遺伝子工学技術。それを研究していた場所……コーディネーターにとっての始まりの場所だ』

 

三人は周囲を警戒しながら、ある部屋に入った

そこは、朽ちた研究室だった

 

『ここでは、究極のコーディネーターの研究が行われていた……しかし、幾度も失敗した……その研究をしていた者の名前は、ユーレン・ヒビキ……資金が尽き掛けた時に現れたのは、アル・ダ・フラガ』

 

『お、親父だと!?』

 

ムウの父親、アル・ダ・フラガ

彼はかなり名の知られた実業家であり、資産家だった

そんな彼はムウに失望し、あることを為そうとした

 

『覚えていないかね、ムウ? 私と君は、かつて一度だけ、戦場以外で会ったことがある』

 

『なんだと!?』

 

クルーゼのその言葉で動揺し、拳銃を撃とうとしていたムウは僅かに動きを止めた

その直後

 

『があっ!?』

 

『ムウさん!?』

 

『少佐!? くそっ!』

 

ムウの肩に、クルーゼが撃った弾が命中

ムウは拳銃を落とした

そのムウに駆け寄り始めたキラを援護するために、弾は数発撃った

 

『少佐!』

 

『なんとか、大丈夫だ!』

 

弾が呼び掛けると、ムウはそう返した

だが、肩だけでなく下腹部にも傷がある

早く治療したほうがいいのは、明白だった

この時外では、連合軍との戦闘が再開していた

勿論、直哉達も出撃していた

 

『キラ・ヤマト! 君は、幾多の犠牲の上に完成した、究極のコーディネーター……そして、ムウ……私はね、己の命ですら金で買えると思い上がった男……アル・ダ・フラガの出来損ないのクローンなのだよ!』

 

クルーゼはそう言いながら、一冊のファイルをキラ達の方に投げた

そのファイルの中からは、数枚の写真が零れ出た

 

『な、なんだと!?』

 

『この写真は……』

 

一枚は、小さい頃のムウと遊んでいるらしいアル・ダ・フラガが

そしてもう一枚には、一人の女性が双子らしい赤ちゃんを抱いていた

そしてキラは、その写真に見覚えがあった

その写真は、カガリが見せた写真と全く同じだったのだ

そしてクルーゼの言葉を聞いて、誰もが驚いた

 

「……クローンって……」

 

「人クローンは、国際法で禁じられているはず……」

 

と言ったのは、簪と楯無である

確かに、人クローンは国際法で禁じられている

 

「人クローンは、CE世界でも禁じられている」

 

「ただアル・ダ・フラガは、自分の会社は自分しか継がせることが出来ないと考えたらしく、資金援助を探していたユーレン・ヒビキに、自分のクローンを作らせる変わりに、資金提供することにしたんだ」

 

「それで誕生したのが、ラウ・ル・クルーゼだった。しかし、老化遺伝子が短かったらしい……だから、出来損ないと言ったんだ」

 

老化遺伝子

通称、テロメア

これが短いほど、老化が早いと分かっている

クローンを作らせた時、アル・ダ・フラガは約40代

その分老化遺伝子は短くなっており、ラウ・ル・クルーゼは長くは生きられないとされた

 

『私にはね、ムウ! 全ての人を裁く権利が有るのだよ!』

 

とクルーゼは、狂気混じりに告げた

その直後

 

『そんなこと!』

 

とキラが駆け出した

そのキラを狙い、クルーゼは拳銃を撃ち始めた

そのキラを援護するために、ムウと弾は拳銃を撃った

弾の撃った弾は軍服を掠めたが、ムウの撃った弾はクルーゼの肩を掠めた

そこに、キラが投げた何らかの破片がクルーゼの顔

正確には、クルーゼが付けていたマスクに当たった

それによりマスクが外れて、その下の顔が見えた

その下の目元は、シワだらけだった

その光景に三人が固まっていると、クルーゼは

 

『もはや止められんよ! この憎しみの連鎖はな!』

 

と言うと、走り去った

弾とムウは追い掛けようとしたが、ムウが痛みで膝を突いたために断念

三人は外に居たディアッカと合流し、帰還した


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