ISGジェネレーション   作:京勇樹

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砂漠の虎1

「俺達は当初、地球連合本部のあるアラスカ近くに降りる筈だった」

 

「だけど、クルーゼ隊の襲撃とストライクの回収のために降下コースに狂いが生じた」

 

「結果、落ちたのはここ。ザフトの勢力圏のど真ん中だった」

 

と三人が言うと、その位置が地図に表示された

そこは、砂漠だった

 

「ここに居るのは、ザフトの砂漠戦の猛者」

 

「通称、砂漠の虎と呼ばれた男」

 

「名前は、アンドリュー・バルトフェルド」

 

と三人が言うと、顔写真が表示された

飄々とした雰囲気が第一印象の男だった

その時だった

停泊していた二隻の周囲で、複数の爆発が起きた

 

『熱紋識別……ザフト軍地上用MSのバクゥ!』

 

とアークエンジェルのオペレーターが言った直後、現れたのは四足式の機体だった

それを見たラウラが

 

「MSには、あのような機体もあるのか」

 

と珍しそうに言った

 

「まあ、大多数が人型だが、少数でこういう機体もあるな」

 

と返答したのは、一夏だった

MSバクゥ

MSの中では数少ない獣型の機体だった

四足による歩行と、無限軌道による高速移動を持ち味にしており、不整地での戦闘では人型機体よりも厄介な機体に分類される

 

『ちいっ……地上では、やはりバクゥのほうが速いか』

 

『OS設定、大丈夫か? 砂漠だから、足が取られるぞ』

 

『合わせてあります』

 

出撃した五機はそう会話しながら、扇状に展開した

その時、直哉が左手の盾を掲げてミサイルを防いだ

 

『戦闘ヘリも確認……この布陣、厄介な』

 

気付けば、上を大型ヘリが通り過ぎた

バクゥとの波状攻撃で、中々攻勢に移れなかった

ふと気付けば、ストライクが苦戦していた

どうやら、砂漠に足が取られているようだ

 

『砂が逃げるなら、合わせりゃいいんだろ!!』

 

キラはそう言うと、ストライクを高く飛ばせた

 

『接地圧を-20に設定し、バランサー設定を……』

 

『戦いながら、OS設定を書き換えてるのか……』

 

なんとキラは、戦いながらOSの書き換えを始めた

その時、ストライクを狙って一機のバクゥが飛んだ

ストライクはランチャー

アグニの銃床でバクゥの体勢を崩すと、思いきり殴り飛ばした

殴り飛ばされたバクゥは、飛んできた弾が当たって爆散した

 

『今のは……艦砲射撃か!』

 

それは、バルトフェルド隊の旗艦

レセップスからの砲撃だった

狙いは、二隻だった

ストライクが着地すると、今度は足が取られなかった

僅か二十秒足らずで、OSの書き換えを完了させたのだ

そこに、レセップスからの第二射が飛んできた

二隻も回避しようとしていたが、エンジンの出力がまだ低いのか動きが鈍かった

その時

 

『アークエンジェルは、沈ませはしないぞ……』

 

とキラは言うと、アグニで砲弾を撃ち抜いたのだ

 

『これは……』

 

『覚醒したのか……』

 

それは、キラが覚醒した証しだった

だがその時

 

『しまった、エネルギーが……』

 

どうやら、ストライクのバッテリーが危険域に達したようだ

 

「前に、NJの説明はしたよな?」

 

「だからこの世界じゃあ、核兵器が使えない。それだけではなく、原子力発電なんかも使えなくなった」

 

「だから、兵器のエネルギーはバッテリーが主流なんだ」

 

と三人が説明すると、簪や虚が納得した様子で頷いた

その時、ストライクに一台のバギーが近づいてきた

そして、一人の金髪が特徴の人物がストライクに向けてワイヤーガンを撃った

 

『バギーだと?』

 

『一台じゃない……何台もあるな』

 

『まさか、レジスタンスか?』

 

それは、バルトフェルドに反抗するレジスタンス

明けの砂漠だった

少しすると、ストライクが移動を始めた

 

『キラ君!?』

 

『ナナ、自分のことに集中しろ! 対MSミサイル、来るぞ!』

 

よそ見したナナを叱責しながら、シュンはヘリが撃ってきたミサイルを迎撃した

その十数秒後、大きな火柱が起きた

 

『こちらキラ。追撃してきたバクゥを、罠により撃滅しました』

 

とキラから通信が来た直後、ザフト軍は静かに離脱した

 

『引き際を心得てる……かなりやり手だな』

 

『相手はどうやら、砂漠の虎のようよ』

 

ラムザットの後に、マリューがそう言った

そこで映像が切り替わり、今度は夕方のようだ

 

『ったく、レジスタンスの連中……無謀なことを!』

 

『急げ、レジスタンスが全滅するぞ』

 

『血の気が多いと、手綱が握れない……か』

 

三人がそう言った先に、数機のバクゥに蹂躙されているバギーが見えた

 

「死にに行くようなものだ……無謀過ぎる」

 

と言ったのは、カオルだった

それに同意するように、ラウラが頷いた

 

『……行くぞ。陣形は縦壱陣(ライン・ワン)

 

『了解!』

 

直哉の指示に従い、三機は一列になって突撃を始めた

一機は、少し離れた地点で動きを止めていた

どうやら、機能不全が起きてるようだ

 

『あれは放置。レジスタンスのカバーを最優先する』

 

『了解』

 

と行動していた直哉達に対して、三機のバクゥがミサイルを撃った

だが、先頭を進んでいた直哉が地表にグレネードを発射

爆発で砂を巻き上げて、ミサイルを防いだ

その時、一機のバクゥを踏み潰す形でストライクが至近距離でビームライフルを撃った

その直後、機能不全に陥っていたバクゥが復帰

ストライクにミサイルを撃った

そこから、バクゥの動きが変わった

今まで単体で戦っていたというのに、陣形を取って戦い始めたのだ

 

『これは……指揮官が変わった?』

 

『……砂漠の虎か!』

 

再起動したバクゥにバルトフェルドが乗り、自ら指揮を開始したのだ

バルトフェルドは、MSパイロットでもあったのだ

当初は手こずったが、キラの奮闘もありバルトフェルドは撤退したのだった

 


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