ISGジェネレーション   作:京勇樹

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一旦休憩


閑話 迎撃

「これが、宇宙世紀での最後の戦いです」

 

「これで、ようやく折り返しかな?」

 

「だな。宇宙世紀が一番長いな」

 

三人のその言葉に殆どのメンバーは驚愕した

これ程濃密だったのに、ようやく折り返し地点

 

「次の戦闘に行きたい……と行きたいところだが、大分いい時間だな」

 

と直哉が左手首の腕時計を見た

ほぼ全員が釣られて見れば、なんと午後六時に差し掛かっていた

気付けば、半日経っていたのだ

カーテンを軽く捲ると、陽が傾いてきていた

 

「念のために、外泊許可も申請しといて正解だったな」

 

「だな」

 

「長そうだったしな」

 

三人がそう言うと、映像は消えて部屋の光景に戻った

そこで何人かが、空腹を思い出したように腹の虫が聞こえた

すると、まるでタイミングを測ったように扉が開いて

 

「カオル樣、皆様方、御食事の用意が出来ました」

 

と駐在大使の男性が声を掛けてきた

 

「分かった。今日はここまでにして、食事にするか」

 

というカオルの提案に、全員が従った

その後食事も終わり、広大な風呂に女メンバー全員が入っていた

一人を除いて、全員が一様に真剣な表情だった

その理由はやはり、先程まで見ていた映像だ

 

「約半日で、ようやく折り返し……か」

 

「まだ、半分近く残ってるんでしょうか……」

 

千冬の呟きに同意するように、真耶がそう言った

はっきり言って、まだ信じきれていないのが現状だった

しかし、直哉達の実感の籠った言葉と戦闘での動きから信じるしかない

 

「……スピリッツ……凄い強かったね……」

 

「本当……あの数相手に、損耗すら無いなんて……」

 

簪の言葉に、楯無が同意するように頷いた

彼女達は公儀隠密という家系故に、幾多の実戦を経験してきた

その中では、何回か部下を伴って任務に就いたこともある

その任務の中では、死者を出してしまったこともある

だが、スピリッツが駆け抜けた戦場は彼女達が経験してきた如何なる任務よりも過酷だった

だと言うのに、スピリッツは死者を出していなかった

そこから、スピリッツの腕が伺える

そして、直哉達が経験してきた地獄も

 

「コロニー落とし……核……コロニーレーザー……」

 

「極め付きは、G3ガス……」

 

「……あんなの、人の死に方じゃないよ……」

 

今までの映像を見て口々にそう呟いたのは、鈴達だ

特に、サイド2の悲劇

あれを見た時、何人かは吐き気を覚えた

真空の宇宙に投げ出され、命を失う人々

G3ガスで、のたうちながら死に絶えた人々

それを直哉達は、実際に目撃したのだ

今回自分達が見たのは、映像記録に過ぎない

しかし、その映像の最中に聞いた直哉達の声には、怒りを感じた

理不尽な暴力で、死んでいった人々の命に怒ったのだ

人間の命は、決して安くないと

そして、戦場で起きた奇跡も見た

アクシズショック

そして、サイコフィールドによるコロニーレーザー防ぎ

そのどちらも、人類の革新した存在

NTが起こしている

そして、直哉達はその革新存在だ

弾と一夏は分からないが、直哉はNT

機体は宇宙世紀の機体を運用している

機体名、ガンダム・デルタカイ

今の名前は、ガンダムデルタカイ・フレスベルグ

神話に名を残す獣の名前を持つ機体になっている

名前の雰囲気からして、ユニコーンと似ている

 

「折り返しか……一夏達は、あんな戦闘を何回も生き延びてきたんだな……」

 

「そうね……あれは、訓練だけじゃ到底無理な領域の戦闘よ……」

 

箒の言葉に、鈴はそう同意した

その後、全員風呂から出て宛がわれた部屋に向かった

だが、何人かはまだ眠れなかったから部屋から出た

事前に入らないでほしいという場所は聞いていたので、そこには行かないようにした

しかし、その指定された区画の一室

通信室では

 

「ええっ!? 隊長達が、オーブに!?」

 

『ああ……つい先日な』

 

直哉達が、オーブと通信していた

直哉達はスピリッツ本隊が同じ世界に来ていることは、把握していた

学園に帰って機体を確認した時に、機体のデータに記録が更新されていたからだ

なお、通信相手はグラハム・エーカーだ

グラハムの話によると、スピリッツ本隊はオーブのオノゴロ島

そこの秘匿ドッグに母艦を隠し、休息しているらしい

隠している理由は、見つかれば面倒事になるのが目に見えているからだ

特に、女性権利主義者達と国際IS委員会だ

その時だった

 

「俺だ……なに? 侵入者だと!?」

 

とカオルが声を上げた

それを聞いて、直哉達は銃を抜いた

そして、画面に視線を向けて

 

「エーカー三佐、隊長達に伝えておいてください。会える時を楽しみにしてます。と」

 

『分かった、伝えておく』

 

その会話を最後に、通信は終った

すると、カオルが

 

「相手の人数は約10人。パラシュート降下してきたらしい」

 

と伝えた

それを聞いて、直哉達は

 

「夜間降下を行えるか……特殊部隊だな」

 

「だな……海兵隊かな?」

 

「やることは変わらないさ……殲滅するぞ」

 

と言うと、通信室から出た

場所は変わり、大使館の中庭

そこには、10人の黒い装備を身に纏った存在が居た

その体格から察するに、全員女のようだ

すると、一人が

 

「隊長……全員の無事を確認しました。装備にも、異常はありません」

 

と隊長らしい女に、報告した

すると、その隊長は

 

「ご苦労……しかし、やはり男が率いてる国だな。我々の侵入に気づいていないのか?」

 

と侮蔑した様子で、呟いた

そして、背負っていた銃を左手に持った

その部隊の銃はバラバラで、一見すれば所属国家は特定出来ない

しかし、一つだけ特徴があった

それは、使用する銃弾だった

拳銃の弾は世界で広く流通している9mmだ

だが、各ライフルの弾は5、45mm弾

つまり、ワルシャワ条約機構軍で採用されてる弾だった

しかしその程度の擬装は、ある程度の国家ならば容易だろう

すると隊長が、懐から携帯端末を取り出して

 

「各員、最後の確認だ。ターゲットはこの四名だ」

 

と全員に見えるようにした

その直後

 

「あ、やっぱり俺らか」

 

と声がした

その声に、全員が驚愕した

その瞬間、隊長以外の全員が頭から血を吹き出した

そして隊長は、両足両手を撃ち抜かれて無力化されて地面に倒れた

 

「ぐぅ……い、一体……なにがっ!?」

 

と隊長は痛みに呻きながらも、呟いた

すると

 

「バーカ……気付いてないと、本気で思ってたのか?」

 

と再び、声が聞こえた

隊長は痛みに耐えながら、なんとか声のした方向を見た

その先に居たのは、片手に減音器(サプレッサー)を取り付けた拳銃を持った直哉達だった

静かに歩み寄ってきた直哉達は、ちゃんと他の隊員達が死んでいるのを確認した

そして、隊長まで近付いた直哉が

 

「お前ら、ロシア人だな?」

 

と小声で問い掛けた

その問い掛けに隊長は反応しなかったが、内心では激しく動揺していた

なぜ、気付かれたのかと

 

「お前ら英語を話してたが、ロシア訛りだったんだよ……お粗末だな」

 

と直哉はそう言うと、隊長の胸元にある無線機を掴み取り

 

「あーあー……聞こえてるか分からないが、一応言っておく……俺は前に忠告した筈だぜ? 力づくで来るなら、覚悟しろってな……露助さん……お宅自慢の部隊は全滅だ……今回は此れくらいで勘弁してやる……だが、次はない……もしやったら……覚悟しろ」

 

直哉はそう言うと、通信機を踏み砕き、隊長の頭を撃ち抜いた

こうして、夜は更けていく


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