ISGジェネレーション   作:京勇樹

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クラス委員決定!

直哉が帰投すると、それを一夏達が出迎えた

 

「お疲れ」

 

「やっぱり勝ったな」

 

一夏と弾がそう言うと、直哉は髪を掻き上げて

 

「まあ、動きは読めたしな」

 

と言って、ヘルメットを脇に抱えた

 

すると、千冬と真耶が現れて

 

「お疲れ様でした」

 

「先ほどオルコットから連絡が来て、以降は棄権するそうだ」

 

と言うと、四人に視線を向けて

 

「お前達はどうする? 試合を続けるか?」

 

と問い掛けた

 

すると、すぐにカオルが手を上げて

 

「あ、俺はパスします。国のことがあるので」

 

と告げた

 

すると、千冬は頷き

 

「わかった。アスハは辞退だな」

 

と受け入れると、視線を三人に向けて

 

「クラス委員はお前達から決めることになる。手段はどうする?」

 

と問い掛けた

 

三人は一回カオルに恨みがましい視線を向けると、視線を合わせて

 

「ここは、平和に決めるか」

 

「だな」

 

「お互いの戦闘力知り尽くしてるから、千日手だしな」

 

三人はそう言うと、体を向けあって

 

「「「最初はグー! じゃんけんぽん!」」」

 

と手を繰り出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時は経ち、夜

 

セシリアは自室でシャワーを浴びていた

 

当然ながら、彼女は一糸纏わぬ姿である

 

そんな彼女のスタイルは、引っ込む所は引っ込み、出るべき所は出ている

 

彼女はそんなスタイルを見下ろして、深々と溜め息を吐いた

 

なぜなら、彼女は自身のスタイルに少しばかり自信が無いからだ

 

だが、同年代の日本人に比べるとかなりのモノであるので全くの杞憂である

 

だが、今の彼女が気にしているのはそこではない

 

彼女が気にしていたのは、戦った相手である直哉だった

 

彼女の記憶に残っている男は、彼女の父親であった

 

彼女の父親はかなり腰が低い男で、いつも母親に頭を下げていたのを覚えている

 

そんな父親を見て育ったからか、彼女は育ったらそんな男とは結婚したくない

 

と幼いながらも決めた

 

そして、今日戦った直哉はそんな父親と正反対だった

 

直哉は圧倒的に強く、彼女は手も足も出なかった

 

しかも自身に勝った後、直哉はISの展開限界により落ち始めた自身を救った

 

救った理由を問い掛けたら、直哉は

 

『人を助けるのに、理由が必要なのか?』

 

と言った

 

それに続き

 

『俺は助けを求めてる人や、危機に陥ってる人が居るなら助けたいんだ……例え、偽善と言われようともね』

 

と言った

 

その言葉に、セシリアは感銘を受けると同時に思い出した

 

自身が貴族であり、貴族の誇り(ノブレス・オブリージェ)を忘れていたことを

 

「それならば確かに、チェルシーが怒るわけですわね……」

 

チェルシーというのは、年上の幼なじみにしてセシリア付きのメイドである

 

そのチェルシーはセシリアの両親が電車事故で亡くなった後に教育係も請け負ってくれた

 

そんなチェルシーの教育もあり、セシリアは実家の資産を奪おうとしてきた親族から資産を守ることが出来てIS操縦者になることも出来た

 

だが、ここ二、三年は小言が多かった

 

『お嬢様、お嬢様は大事なことを忘れてらっしゃいます』

 

チェルシーが言いたかったのは、貴族の誇りだったのだ

 

それは確かに、自分が悪い

 

思い返してみれば、IS操縦者になった後は高慢な態度ばかり取っていて、仲が良かった筈の友人も離れていった

 

貴族の誇りを忘れ、高慢な態度で相手を見下してきた

 

これは、チェルシーに怒られるのも仕方ないと、セシリアは思った

 

「後で、謝罪のメールを送りましょうか……」

 

セシリアはそう言うと、シャワーを止めた

 

「神崎直哉さん……」

 

直哉の名前を呟くと、セシリアの胸がトクンと鳴った

 

「神崎直哉さん……」

 

もう一回呼ぶと、今度は強く鳴った

 

「あぁ……」

 

直哉を思うと、セシリアは頬を朱色に染めた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

月曜日

 

「……という訳で、一年一組のクラス委員は織斑一夏君に決まりました。あ、一繋がりで丁度良いですね」

 

という真耶の言葉に、一組の少女達は歓声を上げた

 

「ちくしょう……あの時、グーを出さなければ……!」

 

一夏は机を叩きながら、悔しそうに呟いた

 

あのジャンケン勝負だが、十回近くに及ぶアイコが続いた後、一夏の一人負けだった

 

「でも、神崎くんって強いんだね!」

 

「本当! 代表候補生に手も足も出させないなんてね!」

 

セシリアと直哉の試合を思い出したのか、少女達は興奮した様子で語り出した

 

なおそのセシリアだが、土日の間にクラスメイト達の寮室に訪れては一人ずつ謝罪して回っていた

 

セシリアのその誠心誠意籠もった行動に、クラスメイトの少女達はセシリアを許したのである

 

閑話休題

 

そして授業も終わり、放課後

 

一組のクラス全員よりも多い人数が、食堂に集まっていた

 

「待て、あからさまに多いだろ!?」

 

人数の多さに一夏が突っ込んでいると、直哉と弾が一夏の肩に手を置いて

 

「諦めろ、一夏」

 

「大人しく晒し者になれ」

 

と言ったので、一夏は頭を抱えてしゃがみこんだ

 

すると、メガネを掛けて腕に新聞部という腕章を付けた少女が駆け寄ってきて

 

「お! 噂の男の子四人発見! どうも、私は新聞部の黛薫子って言うの!」

 

と言いながら、四人に名刺を渡してきた

 

名刺に書かれた名前を見て、四人は思わず

 

(書くの大変そう)

 

と思った

 

「まず、クラス委員になった織斑君からインタビューさせてもらうね」

 

薫子がそう言うと、一夏は立ち上がって

 

「インタビューですか……」

 

ヤレヤレといった感じで首を振った

 

「それじゃあまずは、クラス委員になった意気込みは?」

 

薫子はどこから出したのか、マイクを一夏に向けた

 

「まあ、なったからには微力を尽くしますよ」

 

「堅いなぁ。もっとこう『俺に触ったらケガするぜ!』みたいな感じでいいのに!」

 

一夏のコメントを聞いて、薫子はカラカラと笑いながらそう言った

 

「キャラじゃないんで」

 

一夏がそう言うと、薫子は一夏の写真を何枚か撮影して

 

「それじゃあ、次はセシリアちゃんにインタビュー!」

 

とセシリアに突撃していった

 

その数秒後、箒が近寄ってきて

 

「随分と楽しそうだな」

 

少しトゲを含んだ言い方で言った

 

「まあ、楽しむ時は楽しまないとな。それに……日常っていうのはな、簡単に崩れ去るものなんだ……」

 

箒は一夏の優しさを含んだその表情を見て、自分の顔が赤くなるのを自覚した

 

横で箒が頭をブルブルと振っているのを見て、一夏は頭上に?マークを浮かべた

 

「おーい! 集合写真撮りたいから、織斑君も来て!」

 

という薫子の声が聞こえて、一夏は視線を声の方に向けた

 

そこには、弾や直哉、カオルとセシリアの姿もあった

 

どうやら、専用機持ちを集めたようだ

 

呼ばれた一夏も行くと、なぜか箒も来たが一夏は気にしなかった

 

「ん? 一人増えたけど、まっいいか……」

 

薫子はそう言うと、カメラを構えて

 

「それじゃあ、撮るよ? 1+1は!?」

 

「「「「「2!」」」」」

 

お決まりの合図に答えた直後、なぜかその場に居た全員が集まっていた

 

「って、速いな!?」

 

「まあ、こういうのは大勢のほうが良いだろ?」

 

「日常は大切に、ってな」

 

弾が少女達の速さに驚き、一夏と直哉がそう言った

 

こうして、クラス委員は一夏に決まったのだった


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