アカメが斬る! 銀の皇帝   作:白銀の亡霊

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2話です。が、主人公は出ません。代わりに原作主人公が出ます。
長い、かな?
兎に角、どうぞ。


第二幕 ナイトレイド

ーーナイトレイド。

帝都においてその名を知らぬものはいないであろう、今もっとも帝都を騒がせている殺し屋集団である。

現在判明しているナイトレイドのメンバーは、

元帝国将軍、ナジェンダ。

元帝国暗殺部隊の一人、アカメ。

元帝国軍人、ブラート。

そして、帝国下町を中心に暗殺稼業をこなしていたシェーレ。

以上の四人である。

一人はほぼ無関係とはいえ、内三人は元帝国軍から離反しているという、ある意味帝国の内情を物語っているようなメンバーである。

しかも、その中の一人は元将軍だというから始末に負えない。と言うより笑えない。

 

帝都の重役たちや富裕層の人たちを中心に狙っており、世闇に紛れて暗殺対象を確実に殺すその力量は、とてもじゃないが人間業ではないらしい。

それもまあ、当然と言える。

 

帝都を震え上がらせる殺し屋集団。その存在もメンバーも知られているのだ。彼らも馬鹿ではない。

誰かが暗殺されれば次は我が身かもしれないーーそう思うのも無理はないだろう。誰だって、命は惜しい。だからこそ、大金を積み、権力を使い、警備や護衛を山ほど雇っても、彼らはそんなもの意にも解さず殺していく。

これほど恐ろしいことはないだろう。何せ、何をしても無駄だと、眼下に突きつけられているようなものだから。

それは恐れて当然だ。

そして今日、殺し屋集団「ナイトレイド」に、新たに仲間が加わることとなった。

「いや、俺まだナイトレイドに入るとか言ってないんですけど!?」

ーー地の文に突っ込んではいけない。

「?何を言ってるんだ、タツミ?」

「いや……なんか急に言っとかなきゃいけない気がして」

怪訝そうに首を傾げるのは、野性味あふれる見るからに快活そうな女性。露出度の高い服装から覗く小麦色に焼けた肌は、男ならば誰であれ目を奪われるだろう。

彼女の名はレオーネ。一見すると気立てのいい姐さん気質な女性に見えるが、こう見えて彼女もナイトレイドの一員である。

そんな彼女に問われ、歯切れ悪そうに視線を逸らすのは、やや小柄な体躯の少年である。無邪気な笑顔が似合いそうな、年頃の少年にしか見えない彼は、タツミ。

帝都からの重税で貧困に苦しむ故郷の村を救うべく、幼馴染みと三人で村を出て帝都に稼ぎに出たはいいが、その直後に盗賊に襲われ三人ともはぐれ、どうにか帝都についたはいいがレオーネに騙され金銭を失い、路頭に迷っていたところに貴族の御令嬢に救われ一度は感謝するも、翌日の晩に噂の殺し屋ナイトレイドの襲撃を受け、そこで親切な一家だと思っていた彼らの本性を知り、更には探し求めていた幼馴染みまでもがその毒牙にかかって死亡。

ブチ切れて諸悪の根源を切り捨てたはいいが、その思い切りの良さと容赦の無さを買われてレオーネに(強制的に)ナイトレイドのアジトまで連れてこられたりと、踏んだり蹴ったりな少年である。

「え?まだ仲間に入ってなかったんですか?」

と、不思議そうな顔をするのは、優しげな風貌のメガネをかけた女性。

彼女は帝都の手配書にも顔写真が記載されているメンバーの一人、シェーレである。

「そうなんだよー。というわけでシェーレ。なにかタツミに暖かい言葉をかけてやってくれないか?」

「そうですね……」

考え込むように数瞬間を開け、

「そもそもアジトの場所を知った以上、仲間にならないと死んじゃいますよ?」

「暖かすぎて涙が出るね」

人、それを脅迫と言う。

嗚呼、悲しいかな。殺し屋の世界とは無情なのである。

「良く考えた方がいいですよ」

最後に一つ、忠告するように言って、シェーレは手元に広げた本に視線を移した。

何を読んでいるのかと気になったタツミが表紙をチラリと盗み見ると、

『男の気を引く2000の方法』

………見なかったことにした。

(色んな意味で)タツミがため息を吐くと、ちょうどそこに声がかかった。

「あー!ちょっとレオーネ!なんでそいつを中に入れてんのよ!」

言葉は大分、非友好的だが。

そう言って不機嫌そうな顔で指を指してタツミを睨んでいるのは、高飛車そうな少女、マイン。

「ああ、ちょうどタツミにアジトの案内をしてたんだ。どうせ仲間になるんだし、別にいいだろ?」

「仲間~?」

如何にも不満そうな眼差しでタツミを上から下までジトッと眺め、

「ダメね。とてもプロフェッショナルなアタシたちと仕事ができるとは思えないわ。主に顔とか」

「はあっ!?」

流石にこれにはカチンと来たタツミである。

何故にどうしてほぼ初対面の子にそこまで言われなければならないのか。

憮然とするタツミに呆れたようなレオーネの声がかかる。

「あ〜……別に気にしなくていいぞ。マインは基本誰にでもそうだから」

「ふんっ」

高慢そうに顔を背けるマイン。タツミとしても彼女とはどうにもソリが合いそうにない。

初っ端から幸先の悪いアジト案内のスタートだった。

 

 

「ーーで、こっちが訓練所と言う名のストレス発散場所。あそこで槍振ってる暑苦しい男がブラートね」

レオーネの指差す方向を向けば、確かに一人の男がいた。

雄叫びを上げながら凄まじい速度と迫力で槍を振るっている。

(すげぇ……あんな凄い槍捌き、見たことねぇ)

思わず拳を握り、食い入るようにタツミはブラートを見詰める。ーーと、その視線に気付いたのか、ブラートが槍を振るうのを止めてタツミたちの方向へと振り向いた。

「おっ、何だ、レオーネじゃん!んで、そっちの少年が、この間の奴か?」

「な、なんで俺のことを……?」

「ん?この姿じゃ初めてだったっけ?ほら、初対面の時鎧に包まれてた奴」

あれが俺、とブラートが自分を指さしながら言う。

そこまで言われてようやくタツミにも合点が言った。そう言えば声にも聞き覚えがある。と今更ながら思い出したのだ。

「俺はブラートだ。よろしくな!」

「は、はい」

勢いに押されるように頷きつつ、握手を交わし、

「気をつけとけよー。こいつホモだから」

囁くレオーネに背筋が凍った。

「おいおい。そんなこというなよ。ーー誤解されちまうだろ?」

(何故か)頬を朱に染めながら、ブラートは言う。

(否定してくれよ!)

思わず心の中で叫ぶタツミであった。

 

木々の生い茂る森の中、はあ、はあ、と呼吸も荒く、まるで犯罪者のような顔でーーまぁ、そもそも犯罪者なのだがーー歩く一人の少年の姿があった。

「そろそろレオーネ姐さんの入浴時間だ……。あのオッパイのためなら、俺は命だって捨ててやるぜ……」

凄まじい覚悟である。一体何が彼をそこまで駆り立てるのか。

しかし彼は止まらない。止まれない。己の行く先に、桃源郷(ユートピア)があると信じているから。

何故そこまで、と言う疑問は当然だろう。しかし彼は止まらない。何故なら彼はーー男なのだから。

「じゃあ、指の2本行っとくか」

「ほあああああああっ!?!?」

しかし、長々と語ったはいいが、結局彼が女性の敵であることには変わりない。

変態撲滅。化けてでないよう、成仏して欲しい。

「まだだ!まだ終わらんよ!」

「んじゃあ、今度は腕行っとくか?」

ギリギリと容赦なく腕を捻り上げながら、レオーネはタツミ振り向いた。

「んで、この変態はラバック」

「痛だだだだだだッ……あっ、なんか気持ちよくなってきたかも」

変態(ラバック)が新たな扉を開かない内に次へゴー。

 

「次は……川原かな?」

「まだあるのかよ……。正直もうお腹一杯なんだけど………」

疲れ切った顔でトボトボと歩くタツミの横を笑いながら歩くのはレオーネ。

「まあまあ。次は美少女だから期待しときなって」

カラカラと笑うレオーネの言は信じられない。ジト目で見るタツミなど気にもせず、レオーネが声を上げた。

「おっ、いたいた。ほら、あれがアカメだ。可愛いだろ?」

ニヤニヤと笑うレオーネに従って視線を向ければーー

 

ーー人の背丈ほどはある怪鳥を丸焼きにしてワイルドに骨付き肉に齧り付く長い黒髪の少女の姿が。

 

(何処が!?)

この光景を見て可愛いと言える人の神経が信じられない。可愛いと言うよりむしろおどろおどろしいくらいである。

ーーと、彼女が今現在食している怪鳥を見てハッとした。

「あいつが食ってんのってまさかエビルバード!?」

エビルバード。一匹で村を滅ぼすとされる特級危険種である。

危険種には強さに応じてランク分けがされており、四級•三級•二級•一級•特級•超級となっている。上に行くほど強い危険種、というわけである。

「アカメはあれで野生児だからねー」

ほのぼのとレオーネは言うが、そういうレベルじゃないだろと内心密かにツッコミを入れるタツミである。

「レオーネも食え」

「おっ、さんきゅっ」

ポイッ、と放られた骨付き肉を受け取り、レオーネは嬉しそうに齧り付く。

アカメは肉をもう一つ手に持ちながら、何故かタツミを凝視していた。

「な、なんだよ」

「お前……仲間になったのか?」

「いや……」

「じゃあ、この肉はまだやれないな」

鋭さを感じさせる表情でアカメは言うが、

(いらねえ!)

タツミにとってはありがた迷惑である。

実はタツミはアカメに二度ほど殺されかけており、彼女に苦手意識を抱いていた。ーーまあ、アカメの表情が分かりづらいとということも理由の一つかもしれないが。

「どうしたよアカメ。今日は随分と大盤振る舞いじゃん」

「ボスが帰ってきている」

言葉少なに答えるアカメ。

「へえ、マジ?」

「ああ、マジだ」

そう言ったのはアカメではなく別の女性。

エビルバードが壁となって見えなかったが、そこには一人の女性が椅子に腰掛けていた。

綺麗、と言うよりカッコイイ、と言った評価が似合うスーツ姿の女性である。しかし、特徴的なのはその右腕。

彼女の右腕は付け根の部分から無骨な鋼の義手になっていた。

「よっ」

片手を上げる女性に、レオーネが声を上げた。

「ボス!!」

少し驚いたようだが、レオーネは人懐っこい笑顔を浮かべて彼女に近寄っていった。

「ボスー。なんかお土産とかないですかー?」

「お土産はともかくレオーネ。お前三日前の仕事で作戦時間をオーバーしたそうじゃないか」

レオーネが笑顔のまま凍り付いた。

ヤバっ、と声なき声で呟いて、一目散に逃げ出すレオーネだが、それよりも早く女性の拳が射出され、猫よろしくレオーネの首根っこを捕まえた。

「ひいいいいいいいっ」

「強敵との戦いを楽しみ過ぎるのは良くない……そのクセはなんとか直すんだ」

キリキリキリキリと金属同士が擦れる不協和音が響く。

「分かったからそのキリキリ音を止めてくれよ!!」

堪らず悲鳴じみた声を上げて降参する。

「ふん……で、そっちの少年は?」

女性の視線がタツミに向けられる。

ワイヤーを通じて拳は腕に戻されている。

「あっ!ボス!この子推薦するよ!」

「ちょっ、だから俺はーー」

「推薦ねぇ……確かに人手は欲しいが……使えるのか?」

スゥ、と騒ぐタツミを無視して女性はそう問うた。

殺し屋集団ナイトレイド。その仕事は決して楽なものではないが、ナイトレイドとしてやって行くためには一つ、絶対に満たさなければならない条件がひとつある。

それは別に、強さなどではない。そんなものは後から入って鍛えればいい。実際、シェーレもそのタイプである。

では何か。それは、簡単なようで最も難しいこと。

 

ーーなんの恨みもない人間を、戸惑いなく殺せるかどうか。

 

ただそれだけ。

ナイトレイドは確かに悪逆非道を尽くす帝都の重役や富裕層の人間を対象に暗殺する。だが、実際に関わり合いになることはない。言ってしまえば、関係のない人間を殺しているのだ。

人の命を、依頼だからと言う理由で。

タツミにそれができるのか、と暗に目で問いかける。

その問いに、自信を持ってレオーネは答えることができる。

「使えますよ」

思い出すのは、タツミと二度目の邂逅を果たした時の出来事。

『俺が斬る』

そう言って、タツミは一人の少女を斬り殺した。

彼女によって幼馴染みを殺され、如何にも憎い相手だったとはいえ、彼にとっては恩のある相手だった。ーー例え、その真意がどうであれ。

それを彼は容赦なく切り捨てたのだ。ナイトレイドとしてーー殺し屋集団の一員としてやって行く素養は十二分にあるだろう。

「ふぅ。まぁいい。その話も兼ねて報告会と行こうか。ーーちょうど奴も帰って来るそうだしな」

「ーーっ!それは本当か!?」

いきなり、である。無言でひたすら肉を食べていたアカメが急に立ち上がり、女性に詰め寄った。

突然の行動に目を丸くするタツミだが、女性とレオーネにはそんな様子は見られない。流石、仲間だけあって慣れているらしい。

「ああ。少し前に連絡があった。それもまとめて報告するから、早く行くぞ」

「ああ、分かった!」

溌剌と答えるアカメ。先程までの無表情なクールキャラは何処へ行ったのやら。

「もう、何がなにやら……」

タツミ。常識人では……殺し屋の世界は生き残れないのである。

 

 




最後まで見て頂き、ありがとうございます。
本作品にライくんですが、ぶっちゃけチートです。設定見れば分かりますが、ほぼ最強です。敵無しです。公式チート主人公は伊達じゃない(`・ω・´)キリッ
なので、ナイトレイド側で自由に動かしてしまえばあっという間にメアリー•スーの出来上がりとなってしまうので、色々枷を付けて自由を封じています。今回の帰省はこうでもしないと原作主人公やナイトレイドメンバーと絡ませる機会がほぼなくなってしまうので、やったまでですが、今後は帝国側で原作メンバーと関わります。
将軍となって宮殿に入り込んだはいいですが、その代わりにおいそれと目立つ行動はできませんし、帝具もチートですが、おいそれと使えません。
強力だが、多用できないもの、というわけでダークキバを選んだのもそこにあります。まぁ、単純にカッコイイからでもありますが。
ライくんは命を削って戦うところが一番輝いていると思うのですが(ゲス顔)。
次回はライくんを出します。頑張ります。ついで戦闘もあるかもしれません。が、作者の腕がへっぽこなのであまり期待されない方がいいと思います。それでは、また次回。

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