もしかしたら、投稿ペースも落ちると思います。
それでは、本編どうぞ。
投げ飛ばされながらも、幻月はカルマに弾幕や光線を放つ。だが、それが決定打になるようなことはない。着弾してもキマイラの外殻に目立つ傷がつくことがなかった。
「磔十字。」
幻月の真後ろに十字架が現れる。それにぶつかっても十字架は砕けることはなかった。正当な方法で禁忌魔法を使っている以上、そう易々と壊れるものではない。
「――ッ!」
十字架と錐揉みながら落ちていくが、その状態で鎖に縛られれば絡まってしまう。地面に落ち、貼り付けにされても尚彼女はもがき続ける。
「このッ!コノォッ!」
なんとか脱出しようと試みるも、十字架が彼女の力を吸い取っていく。それでも暴れ続けるあたり、流石というべきだろう。そして、それもそう続くものではなかった。
「磔十字。」
再度十字架を生み出すと、カルマはそれを遠く離れた幻月に向けて投げつけた。空気抵抗を軽く無視する程の速度で投げられたそれは貼り付けにされている彼女の腹に食い込んだ。
「ガッフッ!?」
衝撃で砕けた十字架もろとも後方に飛ばされる―ことはなかった。衝撃を利用し、宙返りをすると彼女は体勢を立て直した。反撃するべく、カルマとの距離を詰めに掛かる。距離が離れているにも関わらず、それを視認したカルマは開門を発動。そこから幻月の足を掴み、引きずり出した。
「うわっ!?」
「ふんっ!」
そのまま地面に叩きつけようとするが、させまいと腕に絡みつく。
「んのおおおおおおおっ!!」
「―チッ!」
腕から嫌な音が聞こえてきた。見れば肘の関節があらぬ方向へと曲げられていた。
「ザマ見ろっ!」
「舐めるな。」
大けがの痛みには既に慣れている。腕から離れた幻月に無事な方の腕を振り下ろした。空中でくるりと回り、それを回避する。
「あっかんb―」
腕は躱してもその後の攻撃は躱せなかった。カルマに集中していた彼女は頭上から落とされた十字架に気づけなかった。
「フンッ!」
頭にダメージを受け、怯んだ瞬間にカルマの回し蹴りが襲い掛かる。蹴りに当たるも後方にわざと飛ぶ事で衝撃を緩和した。
―第98禁忌魔法“言霊”応用“身体支配権”―
「“落ちろ”。」
「ガッ!?」
カルマの言葉に従い、幻月は地面に落ちた。意識せずに急に落ちたため、衝撃が彼女を襲う。
「ゲホッコホッ!」
「“起き上がるな。這いつくばってろ。”」
「な、んっ!?」
自分の身体が言う事を聞かない。今、彼女の身体はカルマの支配下にある。
「そのまま地面に埋まってろ。」
夢月と同じ“ムスペルヘイム”と“ニヴルヘイム”を使って幻月を地面に生き埋めにする。辺りにはカルマだけが残り、静寂があたりを支配した。
カルマが夢幻世界から消えてどれくらい時間がたっただろうか。彼は開門で夢幻世界へと戻ってきた。両脇には意識を失っている悪魔の2人が抱えられていた。息はしているが、おそらく簡単には目覚めないだろう。
「“ロスト”」
万世分断で作った世界を一言で存在を消し去ると彼は適当な場所に2人を放り、夢幻館へと戻っていく。
「――クッ。」
道中ふらつきながらも夢幻館へと向かう。贄を用いて禁忌魔法を使ったが、おそらく彼の魔力はもう殆ど残っていない。
「カルマ様っ!」
門の外で待っていたエリーがカルマの元へと駆け寄ってきた。ふらつく彼の身体を支え、壁際に座らせた。エリーの華奢な身体では夢幻館まで運ぶのが難しいためだ。
「幻月と夢月は…?」
「息はしているが倒した。道中で放ってある。」
「流石ですね。」
安堵の溜息を付くと、彼女は幽香を呼びに館へと戻っていく。実際、彼女はカルマを支えたり2人きりだったりと緊張に耐えられなくなったために逃げたようなものたが。精神を集中して魔力の回復に集中していると、幽香が館から出てきた。
「随分とお疲れのようね。」
「燃費が悪いだけだ。」
魔力回復に集中しながら返答する。夢幻世界には魔力が多く存在するわけではないらしい。外よりも回復量が少ない。
「麗夢はどうした?」
「あの女なら貴方を置いて帰って行ったわよ。医師に診てもらうとかなんとか言ってたわね。」
麗夢は空間を歪めると、エリーに抱えらながら永琳の場所へと向かっていった。カルマならちゃんと勝って戻ってくると信じて疑わなかったらしい。
「…話は変えるけど、そっちの取引だったかしら?」
「あぁ、麗夢から話は聞いてるか?」
「暇だったから、話だけは聞いたわ。共存だったわね。」
引き受けるかは別として話くらいは聞いたようだ。もっともカルマが1人で倒してしまった以上、話は飲むという方向になるが。
「あー言った以上、飲むわよ。」
「そうか。」
「ただし、私は人間なんて弱い生き物に興味はないから。」
「だろうな。貴様のような奴は傍観するかヒントを与えるくらいしかしねぇだろうからな。」
「…へぇ、よくわかってるじゃない。」
彼の側にも同じような妖怪があるため、なんとなくだが分かってしまう。
「俺はそろそろ帰らせてもらう。」
「それは助かるわ。あの女、アンタが帰るまで穴を消さないつもりなのよ。さっさと帰ってほしいわね。」
用意周到というべきだろう。魔力もほとんどない状態であちらに戻るにも、開門が使えないのであれば戻れない。湖の入り口も祝詞を知らなければ通れないのだ。
「そうか。」
カルマとしてはこのまま早く地底に戻らなければならない。精神状態が彼に依存してきていることから、できるだけ早く戻らなければどうなるか分からないのだ。壁伝いに館へと入ると、2人別れを告げて穴へと入っていった。
これにてカルマ無双終了。
まぁ、夢幻編っていうのかなw
次回から新章に行きます。
―って言っても、本当は一続きの予定だったんだけど、異様に長くなっちゃってw
ここで区切ることにしました。
いよいよ正念場ですぜ、うっひっひ( *´艸`)
(ry
第98禁忌魔法“言霊”応用“身体支配権” - 意識を保たせた状態で身体のみ言霊の対象とする。
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。