東方禁初幻譚   作:鈴華

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この章、めっちゃ長いなぁ・・・。
何話まで行くんだろw

それでは、本編どうぞ。



Ep,20 贄ありき術式 夢

「姉さん、大丈夫?」

「夢月…、ありがとう。」

「まだ行ける?」

「勿論。」

 

幻月は夢月に支えられながら、地面に降り立った。どちらも目立つほどの傷は負っていない。対し、麗夢は瀕死の状態。カルマは殆ど魔力を消費できない状態だ。どちらが優勢で劣勢か一目瞭然だろう。

 

「どうしましょう、カルマ…。」

「無理に喋るな。休んでろ。」

「ですが…。」

 

麗夢を狙えば手っ取り早くカルマが守り手になる以上、優勢になることくらい分かっているだろう。どうするべきか考えていたその時、濃密な魔力の流れを感じた。麗夢を抱き上げ、その場から飛び退く。

 

「カ、カル―」

「うるせぇっ!舌噛むぞっ!」

 

すぐ目の前を巨大な光線が通り過ぎた。幻月よりも速く強力な魔力の本流。2人の悪魔もその光線を躱した。

 

「時間掛けすぎよ。」

 

カルマの隣に日傘を持った風見幽香が降り立った。傍には申し訳なさそうなエリーもいる。

 

「あぁ、テメーが確かあの2人を負かして館を奪ったんだったか?」

「そうね。そんなこともあったわね。」

 

幻月と夢月に勝った幽香に任せれば、ここは人なきを得るだろう。

 

「私に任せるなら、貴方たちの要求は呑まないってことでいいわね?」

 

傘を悪魔に向けたまま、2人に鋭い眼差しを向ける。

 

「…永琳の薬次第、か。」

「カルマ…?」

 

小さく呟くとカルマは麗夢をエリーに預け、幽香の前に立った。

 

「手出しすんなよ、風見幽香。麗夢とエリーもだ。」

「なっ、カルマ!」

「……。」

 

抗議の声を上げるが、無視する。幽香は彼を一瞥し傘を下ろすと麗夢を背負うエリーと共に館へと戻っていく。

 

「魔神が悪魔風情に負ければ、名折れだろうな。」

 

今、彼の回りには守るべきものがない。

 

「随分雑魚の神様もいたものね。」

「言ってろ。」

 

今のカルマが本気を出しても、現在の魔力は全盛期の程ではない。だが、それでも負けるつもりは毛頭ない。

 

「…すまない。第79禁忌魔法“万世分断”。」

 

この時、カルマは禁忌らしく禁忌に触れることにした。彼から魔力が溢れ出した瞬間、夢幻世界の一部が裂けた。

 

 

 

辺りは黒一色で何もない。空が白く、点々と黒い星が輝いている。

 

「何…これ?」

「何処よ、ここ…。」

 

一瞬で変わった周りの様子に2人は戸惑っていた。

 

「…夢幻の裏、と言った所か。」

 

ここに、いや、この世界にいるのは幻月と夢月、そしてカルマの3人だけ。キマイラ化したまま、カルマを2人との距離を詰める。

 

「姉さん!」

 

すぐに反応した夢月が迎撃の弾幕を放つ。その弾幕はカルマに当たることは無い。鎌威太刀を使っているわけではない。堕天を重ね掛けし、速度を更に上げているだけだ。一瞬にして2人の間に潜り込むと、夢月を殴り飛ばし、幻月を蹴り飛ばした。

 

「夢月ッ!!」

「姉さんッ!!」

 

どちらも防御したが、お互いに距離を離される形となってしまう。確実に1人ずつ仕留める。まずは夢月から潰すために距離を詰める。

 

「させないっ!」

 

吹き飛ばされながらも手を翳して光線を放つ。しかし、一瞬で彼の姿は消えた。

 

「なん―ッ!」

 

【挿絵表示】

 

何かを言う前に頭に強力な衝撃を受けた。カルマが夢月の背後に回り込み、思い切り磔十字を振り下ろしたのだ。そのまま地面に激突する。追撃に十字架を投げつける。更に轟音が響いた。

 

「“未来視”。」

 

― 第65禁忌魔法―

 

「“ムスペルヘイム”。」

 

土煙から飛び出した夢月だったが、すぐに土煙を上げて地面に激突することになる。彼女の先に先回りしたカルマの蹴りが振り下ろされたのだ。

 

「“ニヴルヘイム”。」

 

禁忌魔法を唱えながら、急降下し、拳を振り下ろした。

 

「ガッ!!?」

 

普段の夢月なら避けられただろう。だが、そこには地面に沈み身体を固定された彼女の姿があった。未来視で未来を読み夢月の出てくる場所を読んだカルマは、殴りつけて何処に着地するかをまで読み、着地場所をムスペルヘイムで地面を液体状にしたのだ。その後そこに飛んできた夢月は飛び込み、すぐにニヴルヘイムで固まらせたのだ。

 

「こんの…。」

「随分頑丈だな。」

 

キマイラに堕天を加えた拳をまともに腹に受けてもまだ意識を保っている。スッと腕を上げる。

 

「夢月を放せえええええええええええっ!!!」

 

その腕に幻月の拳が衝突。カルマの未来視はまだ続いている。手首を返して、幻月の腕を掴み、夢月へと叩き付ける。

 

「夢月っ!」

「ね、姉さ―」

「“ムスペルヘイム”。」

 

地面が再び液状になる。これで夢月は逃げられるが、カルマの振り下ろす方が早い。幻月を叩きつけられ、夢月は地面の中に完全に沈められてしまった。

 

「“ニヴルヘイム”。」

 

幻月を投げ捨て、地面を固めた。完全に夢月が地面に生き埋めにされてしまった。

 

「むげ…つ…?」

 

投げ飛ばされながら、夢月の消された姿を見た。幻月が茫然と呟く。消えた妹を思い、幻月が狂化する。

 

「貴様あああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」

 





カルマ無双回再びでした。
今回禁忌魔法を何回も使っていますが、これは生贄を使ってるためです。
誰が贄かと言いますと、ランダムで選ばれた誰かです。
選ばれた人、南無さん(´・人・)
時代背景にも大量死した時代があったと思うんです。
それだと思ってくだちぃ。
黒死病とか戦争とか。

禁(ry
第65禁忌魔法“ムスペルヘイム” ― 触れた場所から分子レベルで振動数を上昇させ、液状に変える。氷が一気に水に変わると同じ。
第79禁忌魔法“万世分断” ― 世界を分断し、もう一つの世界を作り上げる。魔界もこれで作り上げた。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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