東方禁初幻譚   作:鈴華

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今回、戦闘回のため、禁忌魔法の登場が多いです。
そこ注意ですね。
それから・・・。

別れ。
それは何時如何なる時でも訪れるもの。

では、本編どうぞ。


Ep,5 禁忌と別れ

方舟が完成した。それと同時に穢れの群れも押し寄せてきた。住民が我先にと避難を始める。そんな中、防衛部隊は穢れと戦うために外壁の外にいた。そこにはカルマの姿もある。

 

「よっす、カルマ。お前が俺たちといるのは何年ぶりだったかね?」

「知るか。」

 

如月が話しかけてきた。カルマは魔人となって以降、防衛部隊から抜け、一人で戦ってきたのだ。

 

「それより、前に集中しろ。来るぞ。」

「そうだなぁ。ぞろぞろと奴さんが来なすったねぇ。」

 

目の前には数万、いや数億にも達する程の穢れの群れが押し寄せていた。どれだけ時間を稼げるだろうか。

 

「行くぞ、皆!最後の防衛だ、張り切っていくぞ!」

『オオオオオオオオオオ!!!』

 

とうとう始まった。全員が群れに向けて駆けていく。

 

「そんじゃま、カルマ。先行くぞ!」

 

如月も愛用の長剣を手に駆け出した。カルマも遅れるわけにはいかない。

 

「第47禁忌魔法“堕天”!」

 

禁忌の魔法を発動する。そして風のように駆け抜け、如月を追い越した。

 

「おぉ、はえぇな。ありゃ。」

 

今の彼を視認することは通常なら不可能だ。カルマは穢れの間を縫うようにして走り抜ける。通り抜けざまに、手刀で穢れを切り裂いていく。あっという間に、彼の両手は血に染め上げられていく。だが、それはもののついででしかない。彼の目当てはその奥だ。

 

「見つけたぞ、鬼子母神!」

「主から来てくれるとは、思わなかったわ!」

 

彼の左目は第47禁忌魔法“堕天”の発動と同時に、彼女の存在を捕らえていた。ぶつかり合う拳と拳。

 

「むっ!?」

 

彼は初めて手合わせした時よりも、威力が尋常ではない。そのことを理解すると同時に、嬉しく思う鬼子母神。

 

「いいぞ!」

「はぁ!」

 

反動を利用し、お互いが距離を置く。

 

「随分と力をつけたのう。それにまとっているものも違うようじゃな。」

「あの時と同じと思うなよ。俺はもう人間じゃない。」

「そういえば、鎌をどうしたのだ?」

「あるにはある。が、魂を狩り取る即死のおまけ付きでな。」

「それは怖いの。」

 

駆け出す2人。鬼子母神が殴りにかかる。カルマはそれを横に受け流し、膝蹴りを繰り出す。蹴りは彼女の腹に食い込んだ。

 

「うぐっ!?」

「借りは返した。」

 

更に力をこめ、脚を振り抜く。鬼子母神は吹き飛ばされたが、地面に手をあて、バネのように飛び上がると、そのまま着地。どうやらそこまで威力がなかったようだ。

 

「しかと受け取ったぞ。さぁ、続けるぞ!」

「はっ!」

 

再びぶつかり合う拳と拳。殴っては防がれ、防いでは殴る。その繰り返しだ。

 

「そこじゃ!」

 

鬼子母神の拳が左肩に当たる。

 

「くっ!」

 

当たった勢いを利用し、回転。鬼子母神の顔に向けて裏拳打ちを放つ。

 

「ちぃっ!?」

 

しかし、腰を屈めることで回避されてしまう。だが、片方の角を折ることに成功した。さらに追撃を加えようと、蹴りを放つ。しかし、鬼子母神はその場から飛び退き、角に触れる。

 

「よく折れたものじゃな。」

「そりゃどうも。意外に固くて驚きはしたがな。」

 

『カルマ!』

 

そこでカルマの耳につけていた通信機に連絡が入った。声の主は如月だ。

 

「どうした?」

『こっちはもう避難できる状態だ!早く戻って来い!』

「わかった。すぐ行く。」

 

通信を切ると、鬼子母神は律儀に待ってくれていたようだ。

 

「話は終わったかの?なら続きと行こうではないか。」

「悪いが、それは無理かもな。もうすぐしたらここは焼け野原になる。助かりたければ、ここから離れることだな。」

「ふむぅ・・・、しょうがない。決着は後々つけようぞ。」

「はぁ。」

 

カルマは急いで方舟のある場所へと向かう。そこには最後の一隻となった方舟があった。

 

「カルマ、急げ!」

「わかっている!」

 

扉のそばに如月が立っていた。すぐに追いつくと、彼の隣で足を止める。

 

「ん?どうし―」

「悪いな。」

 

カルマは如月の腕を掴むと、方舟の中へと放り投げた。

 

「なっ!?」

 

中に入ったことを確認すると、カルマは扉を蹴り占めると同時に禁忌魔法を発動する。

 

「第1禁忌魔法“拒絶”」

 

すると、中にいる人たちは扉に近づけなくなった。

 

「――ッ!!――ッ!?」

 

窓から如月が何か言っているようだが、外まで聞こえてこない。カルマは発射のスイッチを押した。

 

「さようならだな。」

 

どんどん小さくなっていく方舟。カルマは手を振った。またいつか会えるかもしれない。そんな淡い思いとともに。

 

「・・・すぅ・・・はぁ・・・。」

 

振り返ると穢れが既に都市内部へと押し寄せてきていた。

 

「来いよ、ド低脳共がッ!!!」

 

再び堕天を発動し、穢れの中へと突っ込んでいく。倒しても倒してもキリがない。そんな中、穢れが空に向かっていくのが見えた。

 

「行かせねぇよ!第16禁忌魔法“テンペスト”!」

 

カルマの右手から光が放たれた。それは空の穢れを飲み込み、消失させる。左手を穢れの群れに向け、そちらにも放つ。一気に減る穢れ。そこで風切り音のような音が聞こえてきた。見上げると、空から爆弾が降ってきていた。どうやら無事、投下したらしい。

 

「ここまで、だな。」

 

 

 

爆弾が地面に触れた。その時、凄まじい熱量と光量、衝撃がカルマもろとも辺りを包み込んだ。爆発が収まった時、そこには誰の形も影もいなくなっていた。

 

 

 

場所は移り、方舟内部。ツクヨミの胸ぐらを永琳が掴んでいた。

 

「カルマはいない?どういうことよ!」

 

きっかけは輝夜の些細なつぶやき。カルマはどこにいるのか、というものだ。永琳もそれは思っていた。だから、最高幹部であるツクヨミに聞いた。その答えがカルマはいない、というものだった。

 

「カルマは最後まで私たちを守った。それだけだ。」

「アンタね!それでも私たちの親友なの!?」

「永琳、落ち着いて、ね?」

「―ッ。」

 

アマテラスに止められ、永琳はツクヨミの胸ぐらから手を離した。

 

「私だって辛かったさ。だが、それなら最後まで誰が全員を守る?押し寄せている穢れの、それもあんな数に対抗できるのはカルマしかいない。そう考えたのが、この結果なんだ。」

「・・・。」

「それに・・・。」

「・・・?」

「アイツがそう易々とやられるような奴じゃない。それにアイツは死なない。死んだとしても死ぬことはない。」

「そうよ、永琳。また会えるわ。」

「また・・・会えるかしら?」

「いずれ、私たちが地上に行く時がくる。その時に会える。」

「そう・・・よね。カルマ・・・。」

 

 

 

舞台は再び地上へと移る。カルマの姿はどこにもなかった。一陣の風が吹いた。それは一点に塵のようなものが集中している。すると、それは少しずつ形となっていく。

 

―第7禁忌魔法“黄泉還り”―

 

「―ハァッ!くっ・・・。はぁ・・・はぁ・・・。」

 

カルマへと形を変えた。

 

「流石に力を使いすぎたな・・・。」

 

彼はその場から離れると、森の中に入った。その奥に洞窟を見つける。

 

「ここいらでいいか。第1禁忌魔法“拒絶”。応用“拒絶結界”。」

 

洞窟の入口に魔法をかける。これで、ここには誰も近づけなくなった。

 

「しばらく、寝るか。力が・・・回復す、るまで・・・。」

 

そして、カルマは永い永い眠りへと落ちていった。

 




地上に残ることを隠しながら、戦うカルマ。
そして別れ。
どういう形であれ、別れとは必然的に訪れるものです。
みなさんも今の時間を大切にしてくださいね。
(柄にもないこと言ってるな、私。はずかしっ///)

そうだった。言い忘れてた。
カルマの口癖は「ド低脳」です。

今回、カルマが使った禁忌魔法の説明です。

第1禁忌魔法“拒絶” ― 森羅万象すべてものから拒絶させる。近づこうという意思はあっても体は拒絶し、触れることはできない。
応用“拒絶結界” ― 空間から一定の範囲を拒絶させることで、空間を分離する。
第7禁忌魔法“黄泉還り” ― 死んだ者を生前の状態に甦らせる。
第16禁忌魔法“テンペスト” ― 光線を放ち、触れた物は生き物や無機質関係なく、光に触れた場所から少しずつ気化していく。
第47禁忌魔法“堕天” ― 身体能力を異常なまでに上昇させる。視力は平地なら地平線まで見渡すことができる。速度は軌跡が残る程度の速さ。

次回から諏訪大戦編へと突入します。こうご期待ください。
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました

私の大学友達が前作‟東方歪界譚”のEXボスを描いてくれました。

【挿絵表示】

なにこの画力。ぱるぱるぱる。

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