そこ注意ですね。
それから・・・。
別れ。
それは何時如何なる時でも訪れるもの。
では、本編どうぞ。
方舟が完成した。それと同時に穢れの群れも押し寄せてきた。住民が我先にと避難を始める。そんな中、防衛部隊は穢れと戦うために外壁の外にいた。そこにはカルマの姿もある。
「よっす、カルマ。お前が俺たちといるのは何年ぶりだったかね?」
「知るか。」
如月が話しかけてきた。カルマは魔人となって以降、防衛部隊から抜け、一人で戦ってきたのだ。
「それより、前に集中しろ。来るぞ。」
「そうだなぁ。ぞろぞろと奴さんが来なすったねぇ。」
目の前には数万、いや数億にも達する程の穢れの群れが押し寄せていた。どれだけ時間を稼げるだろうか。
「行くぞ、皆!最後の防衛だ、張り切っていくぞ!」
『オオオオオオオオオオ!!!』
とうとう始まった。全員が群れに向けて駆けていく。
「そんじゃま、カルマ。先行くぞ!」
如月も愛用の長剣を手に駆け出した。カルマも遅れるわけにはいかない。
「第47禁忌魔法“堕天”!」
禁忌の魔法を発動する。そして風のように駆け抜け、如月を追い越した。
「おぉ、はえぇな。ありゃ。」
今の彼を視認することは通常なら不可能だ。カルマは穢れの間を縫うようにして走り抜ける。通り抜けざまに、手刀で穢れを切り裂いていく。あっという間に、彼の両手は血に染め上げられていく。だが、それはもののついででしかない。彼の目当てはその奥だ。
「見つけたぞ、鬼子母神!」
「主から来てくれるとは、思わなかったわ!」
彼の左目は第47禁忌魔法“堕天”の発動と同時に、彼女の存在を捕らえていた。ぶつかり合う拳と拳。
「むっ!?」
彼は初めて手合わせした時よりも、威力が尋常ではない。そのことを理解すると同時に、嬉しく思う鬼子母神。
「いいぞ!」
「はぁ!」
反動を利用し、お互いが距離を置く。
「随分と力をつけたのう。それにまとっているものも違うようじゃな。」
「あの時と同じと思うなよ。俺はもう人間じゃない。」
「そういえば、鎌をどうしたのだ?」
「あるにはある。が、魂を狩り取る即死のおまけ付きでな。」
「それは怖いの。」
駆け出す2人。鬼子母神が殴りにかかる。カルマはそれを横に受け流し、膝蹴りを繰り出す。蹴りは彼女の腹に食い込んだ。
「うぐっ!?」
「借りは返した。」
更に力をこめ、脚を振り抜く。鬼子母神は吹き飛ばされたが、地面に手をあて、バネのように飛び上がると、そのまま着地。どうやらそこまで威力がなかったようだ。
「しかと受け取ったぞ。さぁ、続けるぞ!」
「はっ!」
再びぶつかり合う拳と拳。殴っては防がれ、防いでは殴る。その繰り返しだ。
「そこじゃ!」
鬼子母神の拳が左肩に当たる。
「くっ!」
当たった勢いを利用し、回転。鬼子母神の顔に向けて裏拳打ちを放つ。
「ちぃっ!?」
しかし、腰を屈めることで回避されてしまう。だが、片方の角を折ることに成功した。さらに追撃を加えようと、蹴りを放つ。しかし、鬼子母神はその場から飛び退き、角に触れる。
「よく折れたものじゃな。」
「そりゃどうも。意外に固くて驚きはしたがな。」
『カルマ!』
そこでカルマの耳につけていた通信機に連絡が入った。声の主は如月だ。
「どうした?」
『こっちはもう避難できる状態だ!早く戻って来い!』
「わかった。すぐ行く。」
通信を切ると、鬼子母神は律儀に待ってくれていたようだ。
「話は終わったかの?なら続きと行こうではないか。」
「悪いが、それは無理かもな。もうすぐしたらここは焼け野原になる。助かりたければ、ここから離れることだな。」
「ふむぅ・・・、しょうがない。決着は後々つけようぞ。」
「はぁ。」
カルマは急いで方舟のある場所へと向かう。そこには最後の一隻となった方舟があった。
「カルマ、急げ!」
「わかっている!」
扉のそばに如月が立っていた。すぐに追いつくと、彼の隣で足を止める。
「ん?どうし―」
「悪いな。」
カルマは如月の腕を掴むと、方舟の中へと放り投げた。
「なっ!?」
中に入ったことを確認すると、カルマは扉を蹴り占めると同時に禁忌魔法を発動する。
「第1禁忌魔法“拒絶”」
すると、中にいる人たちは扉に近づけなくなった。
「――ッ!!――ッ!?」
窓から如月が何か言っているようだが、外まで聞こえてこない。カルマは発射のスイッチを押した。
「さようならだな。」
どんどん小さくなっていく方舟。カルマは手を振った。またいつか会えるかもしれない。そんな淡い思いとともに。
「・・・すぅ・・・はぁ・・・。」
振り返ると穢れが既に都市内部へと押し寄せてきていた。
「来いよ、ド低脳共がッ!!!」
再び堕天を発動し、穢れの中へと突っ込んでいく。倒しても倒してもキリがない。そんな中、穢れが空に向かっていくのが見えた。
「行かせねぇよ!第16禁忌魔法“テンペスト”!」
カルマの右手から光が放たれた。それは空の穢れを飲み込み、消失させる。左手を穢れの群れに向け、そちらにも放つ。一気に減る穢れ。そこで風切り音のような音が聞こえてきた。見上げると、空から爆弾が降ってきていた。どうやら無事、投下したらしい。
「ここまで、だな。」
爆弾が地面に触れた。その時、凄まじい熱量と光量、衝撃がカルマもろとも辺りを包み込んだ。爆発が収まった時、そこには誰の形も影もいなくなっていた。
場所は移り、方舟内部。ツクヨミの胸ぐらを永琳が掴んでいた。
「カルマはいない?どういうことよ!」
きっかけは輝夜の些細なつぶやき。カルマはどこにいるのか、というものだ。永琳もそれは思っていた。だから、最高幹部であるツクヨミに聞いた。その答えがカルマはいない、というものだった。
「カルマは最後まで私たちを守った。それだけだ。」
「アンタね!それでも私たちの親友なの!?」
「永琳、落ち着いて、ね?」
「―ッ。」
アマテラスに止められ、永琳はツクヨミの胸ぐらから手を離した。
「私だって辛かったさ。だが、それなら最後まで誰が全員を守る?押し寄せている穢れの、それもあんな数に対抗できるのはカルマしかいない。そう考えたのが、この結果なんだ。」
「・・・。」
「それに・・・。」
「・・・?」
「アイツがそう易々とやられるような奴じゃない。それにアイツは死なない。死んだとしても死ぬことはない。」
「そうよ、永琳。また会えるわ。」
「また・・・会えるかしら?」
「いずれ、私たちが地上に行く時がくる。その時に会える。」
「そう・・・よね。カルマ・・・。」
舞台は再び地上へと移る。カルマの姿はどこにもなかった。一陣の風が吹いた。それは一点に塵のようなものが集中している。すると、それは少しずつ形となっていく。
―第7禁忌魔法“黄泉還り”―
「―ハァッ!くっ・・・。はぁ・・・はぁ・・・。」
カルマへと形を変えた。
「流石に力を使いすぎたな・・・。」
彼はその場から離れると、森の中に入った。その奥に洞窟を見つける。
「ここいらでいいか。第1禁忌魔法“拒絶”。応用“拒絶結界”。」
洞窟の入口に魔法をかける。これで、ここには誰も近づけなくなった。
「しばらく、寝るか。力が・・・回復す、るまで・・・。」
そして、カルマは永い永い眠りへと落ちていった。
地上に残ることを隠しながら、戦うカルマ。
そして別れ。
どういう形であれ、別れとは必然的に訪れるものです。
みなさんも今の時間を大切にしてくださいね。
(柄にもないこと言ってるな、私。はずかしっ///)
そうだった。言い忘れてた。
カルマの口癖は「ド低脳」です。
今回、カルマが使った禁忌魔法の説明です。
第1禁忌魔法“拒絶” ― 森羅万象すべてものから拒絶させる。近づこうという意思はあっても体は拒絶し、触れることはできない。
応用“拒絶結界” ― 空間から一定の範囲を拒絶させることで、空間を分離する。
第7禁忌魔法“黄泉還り” ― 死んだ者を生前の状態に甦らせる。
第16禁忌魔法“テンペスト” ― 光線を放ち、触れた物は生き物や無機質関係なく、光に触れた場所から少しずつ気化していく。
第47禁忌魔法“堕天” ― 身体能力を異常なまでに上昇させる。視力は平地なら地平線まで見渡すことができる。速度は軌跡が残る程度の速さ。
次回から諏訪大戦編へと突入します。こうご期待ください。
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました
私の大学友達が前作‟東方歪界譚”のEXボスを描いてくれました。
【挿絵表示】
なにこの画力。ぱるぱるぱる。