お菓子くれなきゃイタズラするぞ!
え?遅い?・・・(´・ω・`)
トリック&トリート!
お菓子くれてもイタズラするぞ!(´;ω;`)
それでは、本編どうぞ。
第16禁忌魔法“テンペスト”の応用である“レクイエム”を放った後、カルマは息を乱しながら膝をついた。“教会領域”だけでなく、他にも魔法を使えば、流石に息切れもするだろう。だが、現実はそれほど甘くはなかった。
「…チッ。」
満身創痍となったカルマに向けて、根の鉾が襲い掛かる。ソウルイーターを消し、依代となる鎌を使って地面を押し、バネのように飛び出すことで、攻撃を回避した。いきなり飛び出した為、着地には失敗し転がるが、鎌を杖替わりに起き上がる。
「ま、不味い!」
妖忌の焦った声が聞こえてきたと同時だった。いきなり西行妖の妖力が膨らんだかと思えば、それが凝縮し始める。
「紫殿、急ぎなされよ!満開を迎えてしまう!」
想定はしていたが、西行妖の満開がはじまってしまった。紫の額にも汗が流れる。
「紫…。」
「待って、幽々子。あと少し、あと少しなのよ…。」
見守ることでしかできない幽々子が心配そうに見つめてきた。あと少しで実行されるのは事実だ。しかし、紫の葛藤がそれを阻んでいた。大切な友人を失うか否か。彼女は受け入れてくれた。紫自身も受け入れている。
「紫様!」
藍の焦った声に視線を上げれば、西行妖の満開が始まってしまっていた。満開となった桜は神々しく、灰色の世界に灯る暖かい光のようだ。だが、それは甘い蜜。今この瞬間、現世では沢山の人間が命を落としているはずだ。
「紫、大丈夫よ。」
「幽々子…。」
「私が消えても思い出は残るもの。悲しみだけじゃない。私たちが培ってきた喜びや楽しみがあったじゃない。」
「でも、私は―。」
「私を大事に思ってくれているのは嬉しいし、誇りに思うわ。でも、私たちで決めたことじゃない。今更変えることはできないわ。」
「――ッ」
紫は涙を流し、唇を噛んだ。
「カルマさん。」
「なんだ。」
いつの間にか結界内に入り、紫の傍に来ていたカルマに幽々子が呼びかけた。
「紫のことを任せてもいいかしら?」
「気が向いたらな。それより、そういうのはこいつの従者にいうもんだろ。」
「それもそうね。それじゃあ、紫。お願いね。」
幽々子の言葉に心を動かされた彼女は手を一杯に振り上げた。一瞬止まったが、意を決し、そのまま振り下ろす。
「―ぁぁぁぁぁああああああああああああッッッ!!!」
術式が発動し、西行妖の封印が始まった。幾重にも重なった術式が樹を包み込む。西行妖の妖力が解放され、封印に抵抗しだした。紫も負けじと力を込める。
「くぅ…。」
「チッ…。」
「…カルマ?」
見かねたカルマが術式に触れ、魔力を注ぎ込む。元々が彼の魔力によって発動した術式の為、彼の方がコントロールに適していた。封印の力が増し、西行妖を抑え込む。
「カルマ!貴方、魔力が!」
「知るかっ!魔力など数日寝れば、少しくらい回復する!」
カルマの魔力はほとんど無くなり始めていた。魔力も寝れば回復するが、それは禁忌魔法を使うカルマにとっては燃費の悪い方法だった。彼にとって魔力の回復は建前でしかない。本当は死ぬ人間の中に『ある女性』がいることに危惧したためだ。
「紫様!」
封印への抵抗に力を集中しているため、西行妖の攻撃が止んだ。手の空いた藍が紫の元へと駆けつける。妖忌は刀を杖に膝をついていた。息を切らせ、まともに動けないながらも、こちらを見ている。
「お手伝い致します!」
藍は紫の背に触れ、妖力を流し込んでいく。藍の今の力は紫を経由して得られたものだ。藍から戻ってきた妖力で紫の力も増していく。どれくらい時間がたっただろうか。気が付けば、封印は終わっていた。各々が力を使い果たし、地面に倒れこんでいた。そんな中、幽々子が紫の傍に腰掛けた。
「お疲れ様、紫。」
「……ゅ…こ。」
「無理に喋らなくてもいいわよ。」
紫の瞳から涙が止めどなく流れてきていた。無理もない。封印の生贄として組み込まれた幽々子は今、身体が薄くなってきていたからだ。
「カルマさんも器用なことするわね。私が消えるまでの時間を引き延ばすなんて。」
禁忌魔法についてカルマの右に出るものはいない。彼が術式に触れた時、少し弄っていたのだ。驚いた紫はカルマに視線を向けるも、彼は地面に刺した大鎌に背を預け、背をこちらに向けていた。
「ありがとう、紫。私の我が儘を聞いてくれて。本来なら、あの西行妖は切り落とされて当然だけど、父や仕えてくれた人たちが眠る場所だと考えると、どうにもそう思えなかったの。」
幽々子の父親は西行妖の根本で命を絶った。それに続くように従者たちも同じように絶命していった。聞いてみる限りでは、曰く付きのようにも思えるが、幽々子にとっては、西行妖は家族の墓標のようなものだったのだ。
「あら、もう時間が無くなってきちゃったみたいね。」
気付けば、彼女の姿はさらに薄くなっていた。少しずつ空気へと溶け込むように消えて行こうとしてる。
「幽々子ッ!」
最後の力を振り絞り起き上がると、紫は彼女を抱きしめた。いきなりのことに幽々子も驚いたが、ゆっくりと彼女の背に手を回す。
「幽々子、私のかけがえのない友達。」
「ありがとう。私の友達。」
「今までの事は絶対に忘れないわ。例え貴女が忘れても、私は絶対に忘れない。」
「そうね。私も忘れないわ。覚えていなくても、忘れないわ。」
「ふふ、何よそれ。矛盾してるじゃない。」
「記憶になくても、心が覚えてるってことよ。」
「なるほどね。」
「………。」
「………紫?」
「………ゅ、ゆゅこぉ…。」
「…泣かないで、紫。逝きにくくなっちゃうじゃない。」
「うるざぃ。あ゛なだだって…泣いでるじゃない゛。」
「ふふ。バレちゃったわね。」
「……幽々子。」
「…そろそろ、みたいね。」
「…また、会いましょう。私の…かけがえのない、友達。」
「…えぇ、また会いましょうね。私のかけがえのない、大切な、友達。」
飄々としている紫にしては珍しく感情を出した回でした。
まぁ、かけがえのない存在を無くすのは辛いですからねぇ。
・・・あれ?
こういう展開、前にも書いたような気が・・・(;・∀・)
さて、死者を操った攻撃をしない理由ですが。
死人とは言え、幽々子の家族を倒していくわけですからね。
幽々子的に辛いような気がしたんです。
ところ変わってカルマが漸く魔力枯渇になりました。
つまり、今回以降のカルマは休眠状態になります。
これがカルマの弱体化の正体です。
・・・すぐ起きるんだけどねw
「寝込み襲っていいですか?いいですよね?」
「(誰かこいつを止めろおおおおおおおおおおっ!!)」
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。