東方禁初幻譚   作:鈴華

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蜜柑美味しいです。
気つけば、ひと箱分消えてるなんてよくあることです。
むきむきもぐもぐ(´~`)

それでは、本編どうぞ。


Ep,4 決行前夜

場は改めて、白玉楼の客間。

 

「妖忌も納得したことだし、西行妖の対策について説明するわね、藍。」

「はい。」

 

紫は藍から古紙の筒を受けとると、それを机の上に広げた。そこには白玉楼一帯の地図が記されていた。

 

「ここが私たちの今いる場所。そして、こっちが西行妖。」

 

ここから見える丘ということもあり、それなりに距離が開いている。

 

「紫、配置の前に西行妖の対抗手段を説明した方が良いと思うわよ?」

「…それもそうね。対抗手段の鍵は幽々子とカルマよ。」

 

西行妖を止めるために呼ばれた為、対抗手段に組み込まれることは想像していた。

 

「私たちの取る方法は至って簡単。でも、失敗は許されないわ。」

「それで、方法ってのはなんだ?」

「封印よ。」

 

西行妖の力は未知数。倒すよりも封印した方が効率が良い。それに相手は妖怪桜とは言え、植物。封印を解こうにも自分では如何にもできない。

 

「そして、封印にはカルマの力を使うわ。」

「あん?禁忌魔法に封印の類はねぇぞ。手っ取り早く消滅させた方がいいと思うが?」

 

西行妖を恐れているのならば、消してしまえばいい。しかし、カルマの提案は否定された。

 

「それはだめよ。あの木はここに無くてはならない存在。消すわけにはいかないわ。」

「―というわけなの。だから封印するしか方法がないわ。」

「…封印するにしても、お前以上の力を何処から持ってくる気だ。」

 

カルマの疑問も尤もだ。彼の力を使うにしても、封印の類を持ち合わせていない。麗夢ならできるだろうが、彼女では些か力不足だ。

 

「私が術式を組み上げ、それにカルマの魔力を付与させるわ。生贄には幽々子を使う。」

「何…。」

 

幽々子を見るも、彼女の表情は微笑んでいるだけ。既知だったことが伺える。

 

「お前はそれでいいのか?」

「構わないわ。あそこには今まで私と暮らしてきた人たちもいるもの。それに覚悟はできてる。」

「儂もとやかく言うつもりはないのぉ。他にも方法があったかもしれぬが、幽々子様がお決めになったことじゃ。それに儂には孫がおる。寂しいとは思わぬよ。」

「…余計な心配だったな。」

「あれ?カルマが心配するなんて、珍しいこともあるわね。」

 

紫に指摘され、カルマはそっぽを向いてしまった。彼自身、最近自分が甘くなってきていることは自覚している。勿論、その原因にも心当たりはある。

 

「―で、陣形はどうするつもりだ。」

 

今は西行妖の方が最優先だ。手段は分かった。なら次は配置だ。紫は西行妖のある位置を指し示す。

 

「西行妖の傍に術式を置くわ。出来るだけ近い方がいいでしょう。」

「でも、本質は植物とはいえ、妖怪。必ず抵抗してくるわ。」

「私が術式を維持している間、私と幽々子は無防備になるわ。その間、藍と妖忌に守ってもらうわ。頼めるわね。」

 

一度地図から顔を上げ、2人に確認を求める。2人は頷くのを確認すると、再び地図に視線を落とした。

 

「魔力を付与したら、防衛に徹してほしいわ。」

「わかった。余裕があれば、2人に加勢してやる。」

「そうしてくれると助かるわ。」

 

正直、魔力は惜しい。だからと言って、渋るつもりはない。依代がある今だからこそ、惜しむことなく力を振るうことができる。

 

「決行は明日よ。それまでに、力を蓄えておきなさい。」

 

そして、その場を解散となったが、妖忌は満開を見たことがあるとは言え、最悪の場合に備え、白玉楼で1日を過ごすこととなった。カルマに割り振られた部屋から出てみると、ボロボロになった庭を整理している妖忌の姿があった。

 

「どうされた、カルマ殿。」

「気にするな。作業を続けてくれ。」

 

気配で気付いていた妖忌だが、カルマの言葉に作業を再開する。カルマはその様子を観察していた。よく見れば、彼の挙動が洗礼された動きをしていることが分かる。もし、数億年も前に生まれていれば、カルマ以上の存在となっていたかもしれない。

 

「そういえば、カルマ殿。」

「なんだ?」

 

妖忌は作業を続けながら、カルマに問いかけてきた。

 

「カルマ殿は大鎌を得物として扱うのですな。」

「まぁな。慣れれば扱いやすいものだぞ。」

「ほぉ。他にはどのような物を扱われるのですかな?」

「…そうだな。」

 

それはカルマがまだ魔人となる前まで、正確には防衛部隊に入隊して間もない頃に遡らないといけない。

 

「遠心力を利用する武器が得意だったな。」

「遠心力…。振り回すような物ですかな?」

「あぁ、そうだ。昔は槍や鉾、斧に大槌とまぁ、こんなものか。」

「それは、なかなか多彩ですなぁ。時間があれば、もう一度手合せしたいものじゃ。」

 

楽しいそうに笑う妖忌に不安のような物は見受けられない。それだけ、今回の作戦に自信に満ちた確信があるのだろう。従者は主を優先した思考を持つ。それを思ってきたのだが、取り越し苦労だったようだ。これなら何も言う必要はないだろう。

 

 

 

あらゆる生き物が寝静まる夜。彼女はぼーっと月を眺めていた。そして、何かを決心すると、立ち上がり歩みを進めた。数歩歩くと髪を引かれる思いで後ろを振り返る。

 

「………。」

 

だが、すぐに前を向くと、元から誰もいなかったかのように、彼女の姿は闇の中へと溶け込んでいった。

 




禁忌魔法はちょっと違うけど、一撃必殺の物が結構多いんですよねぇ。
テンペストもそうだし、磔十字もそんな感じだしw
殺さず倒すってのは、カルマの苦手な分野なのかもしれないです。
―と思ったけど、カルマと戦って死んじゃったのって、モブ神だけのような気が・・・。
「ヴラドの眷属は元々死んでたようなものだからなぁ。」

次回はいよいよ西行妖との戦闘回です。
意思ある者っていうか、話さない敵なので、描写でどう文字数を稼げふんげふん。
まぁ、頑張りたいと思いますですよ、おほほほほ。

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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