気つけば、ひと箱分消えてるなんてよくあることです。
むきむきもぐもぐ(´~`)
それでは、本編どうぞ。
場は改めて、白玉楼の客間。
「妖忌も納得したことだし、西行妖の対策について説明するわね、藍。」
「はい。」
紫は藍から古紙の筒を受けとると、それを机の上に広げた。そこには白玉楼一帯の地図が記されていた。
「ここが私たちの今いる場所。そして、こっちが西行妖。」
ここから見える丘ということもあり、それなりに距離が開いている。
「紫、配置の前に西行妖の対抗手段を説明した方が良いと思うわよ?」
「…それもそうね。対抗手段の鍵は幽々子とカルマよ。」
西行妖を止めるために呼ばれた為、対抗手段に組み込まれることは想像していた。
「私たちの取る方法は至って簡単。でも、失敗は許されないわ。」
「それで、方法ってのはなんだ?」
「封印よ。」
西行妖の力は未知数。倒すよりも封印した方が効率が良い。それに相手は妖怪桜とは言え、植物。封印を解こうにも自分では如何にもできない。
「そして、封印にはカルマの力を使うわ。」
「あん?禁忌魔法に封印の類はねぇぞ。手っ取り早く消滅させた方がいいと思うが?」
西行妖を恐れているのならば、消してしまえばいい。しかし、カルマの提案は否定された。
「それはだめよ。あの木はここに無くてはならない存在。消すわけにはいかないわ。」
「―というわけなの。だから封印するしか方法がないわ。」
「…封印するにしても、お前以上の力を何処から持ってくる気だ。」
カルマの疑問も尤もだ。彼の力を使うにしても、封印の類を持ち合わせていない。麗夢ならできるだろうが、彼女では些か力不足だ。
「私が術式を組み上げ、それにカルマの魔力を付与させるわ。生贄には幽々子を使う。」
「何…。」
幽々子を見るも、彼女の表情は微笑んでいるだけ。既知だったことが伺える。
「お前はそれでいいのか?」
「構わないわ。あそこには今まで私と暮らしてきた人たちもいるもの。それに覚悟はできてる。」
「儂もとやかく言うつもりはないのぉ。他にも方法があったかもしれぬが、幽々子様がお決めになったことじゃ。それに儂には孫がおる。寂しいとは思わぬよ。」
「…余計な心配だったな。」
「あれ?カルマが心配するなんて、珍しいこともあるわね。」
紫に指摘され、カルマはそっぽを向いてしまった。彼自身、最近自分が甘くなってきていることは自覚している。勿論、その原因にも心当たりはある。
「―で、陣形はどうするつもりだ。」
今は西行妖の方が最優先だ。手段は分かった。なら次は配置だ。紫は西行妖のある位置を指し示す。
「西行妖の傍に術式を置くわ。出来るだけ近い方がいいでしょう。」
「でも、本質は植物とはいえ、妖怪。必ず抵抗してくるわ。」
「私が術式を維持している間、私と幽々子は無防備になるわ。その間、藍と妖忌に守ってもらうわ。頼めるわね。」
一度地図から顔を上げ、2人に確認を求める。2人は頷くのを確認すると、再び地図に視線を落とした。
「魔力を付与したら、防衛に徹してほしいわ。」
「わかった。余裕があれば、2人に加勢してやる。」
「そうしてくれると助かるわ。」
正直、魔力は惜しい。だからと言って、渋るつもりはない。依代がある今だからこそ、惜しむことなく力を振るうことができる。
「決行は明日よ。それまでに、力を蓄えておきなさい。」
そして、その場を解散となったが、妖忌は満開を見たことがあるとは言え、最悪の場合に備え、白玉楼で1日を過ごすこととなった。カルマに割り振られた部屋から出てみると、ボロボロになった庭を整理している妖忌の姿があった。
「どうされた、カルマ殿。」
「気にするな。作業を続けてくれ。」
気配で気付いていた妖忌だが、カルマの言葉に作業を再開する。カルマはその様子を観察していた。よく見れば、彼の挙動が洗礼された動きをしていることが分かる。もし、数億年も前に生まれていれば、カルマ以上の存在となっていたかもしれない。
「そういえば、カルマ殿。」
「なんだ?」
妖忌は作業を続けながら、カルマに問いかけてきた。
「カルマ殿は大鎌を得物として扱うのですな。」
「まぁな。慣れれば扱いやすいものだぞ。」
「ほぉ。他にはどのような物を扱われるのですかな?」
「…そうだな。」
それはカルマがまだ魔人となる前まで、正確には防衛部隊に入隊して間もない頃に遡らないといけない。
「遠心力を利用する武器が得意だったな。」
「遠心力…。振り回すような物ですかな?」
「あぁ、そうだ。昔は槍や鉾、斧に大槌とまぁ、こんなものか。」
「それは、なかなか多彩ですなぁ。時間があれば、もう一度手合せしたいものじゃ。」
楽しいそうに笑う妖忌に不安のような物は見受けられない。それだけ、今回の作戦に自信に満ちた確信があるのだろう。従者は主を優先した思考を持つ。それを思ってきたのだが、取り越し苦労だったようだ。これなら何も言う必要はないだろう。
あらゆる生き物が寝静まる夜。彼女はぼーっと月を眺めていた。そして、何かを決心すると、立ち上がり歩みを進めた。数歩歩くと髪を引かれる思いで後ろを振り返る。
「………。」
だが、すぐに前を向くと、元から誰もいなかったかのように、彼女の姿は闇の中へと溶け込んでいった。
禁忌魔法はちょっと違うけど、一撃必殺の物が結構多いんですよねぇ。
テンペストもそうだし、磔十字もそんな感じだしw
殺さず倒すってのは、カルマの苦手な分野なのかもしれないです。
―と思ったけど、カルマと戦って死んじゃったのって、モブ神だけのような気が・・・。
「ヴラドの眷属は元々死んでたようなものだからなぁ。」
次回はいよいよ西行妖との戦闘回です。
意思ある者っていうか、話さない敵なので、描写でどう文字数を稼げふんげふん。
まぁ、頑張りたいと思いますですよ、おほほほほ。
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。