そして、連日投稿も終わりです。
次回からいよいよ本腰が入ってきます。
それでは、本編どうぞ。
父親が死んだ。父はあの女を迎え入れようと躍起になっていた。そして、それは起こってしまった。『蓬莱の球の枝』なんて物を要求してきた。だが、そんなものが存在するはずがない。最近できた友人に相談したが、彼も手に負えない程だった。父はそれでもあの女を手に入れる為に多大な借金をしてでも、『蓬莱の球の枝』の偽物を作った。作ってしまった。それを喜々として女の所に持っていったが、目の前で偽物だということが判明してしまった。父はそれを恥じた。挙句の果てには、周囲の人間にも露見し、精神的に追い詰められていった。父はそれに耐えられず、この世を去ってしまった。
私はあの女を許さない。
女は月に帰っていった。だが、そうは思わない。あの女は絶対地上にいる。確証はないが、そう思わせる何かがある。そして、あの女が残した薬。アイツを育てた老人はそれを受け入れなかった。帝様への進言により、その薬はこの地で最も高い山の頂きで燃やされることとなった。月に帰っていった女に届くように・・・。
くだらない。
せめてもの復讐にその薬は私がもらう。自分の考えていなかった方向に物語は進んだ。あの女に少しでも復讐したかった。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
身体が燃えるように熱い。いや、実際に燃えている。炎の熱が喉を枯らし、まともに声もでない。叫ぶこともできない。苦しい。これが復讐の対価か。負けるわけにはいかない。あの女に復讐する。この程度の熱さに負けるわけにはいかない。
友人の声が聞こえた。
幻聴かと思った。幻覚とも思った。彼の台詞がそれを意識させる。彼があの女の知り合い?彼が父を殺した?
ふざけるなっ!
お前はそれを知っていて、私に近づいたのかっ!お前は父を見殺しにしたのかっ!炎が私の意思に応えるように、友人へと襲い掛かる。だが、炎の方が彼を避ける。わけがわからない。彼の言葉が私の心に突き刺さる。より一層怒りが増した。もう正気を保っていなかった。
熱し焦がし燃やし尽くす。灰と化せえええええええっ!
私の怒りに呼応し、炎の勢いが増した。彼が押され始める。そのまま炎に飲まれろっ!そう思った。だが、そうならなかった。どこから取り出したのか。巨大な鎌の振るった風だけで、炎が掻き消えてしまった。溢れる炎もその風で揺らぐ。あまりの威力に私は動揺してしまった。その隙を逃がすことなく、彼は私の懐に潜り込んできた。瞬間、腹に衝撃が襲いかかった。
そこで私の意識は途絶えた。
場所は藤原邸。最初は神社に向かおうと思ったが、もしかしたら、永琳か輝夜が訪ねてきている可能性がある。そう判断したカルマは、彼女の家へと運んだ。中は彼女の留守にした時間を物語っているかのように埃が薄く積もっていた。
「気がついたか。」
妹紅が目を覚ましたことに気づいたカルマは彼女に話しかける。彼女は頭で現状の整理をしていた。その為、彼の存在に気づいていない。理解が及ぶと漸くカルマの存在に気づいた。―ということは、先までの事は現実だったのだろう。
「ここは・・・私の屋敷か。」
「あぁ。お前を昏倒させた後、ここに運んだ。」
「あの山からここまで距離があるはずだ。数日ならともかく、日の傾きからして殆ど時間が経っていない。どうやったんだ。」
「さぁな。」
思えば、彼女はカルマのことを全然知らない。それほど彼女にも余裕がなかったのだ。
「カルマ、教えてくれ。お前は本当にあの女の知り合いなのか?」
「・・・そうだ。俺が輝夜に興味がないというのは、元々知り合いだったからだ。」
カルマの言葉を聞き、彼女からまた炎が溢れようとしていた。
「復讐に飲まれるな。」
「えっ。」
カルマの言葉が彼女の虚を突いた。おかげで炎も止まった。
「復讐は復讐を生む。それくらいわかるだろう。輝夜を殺せば、アイツに縁ある者がお前に牙を剥く。」
輝夜を殺せば、彼女を育てた老人や惚れ込んだ男が妹紅に矛先を向ける。
「私が殺されても、別に構わない。」
「俺が許さない。」
「―――。」
「確かに俺は輝夜と縁があるが、お前とも縁がある。もし、お前が殺されれば、俺が全員を殺すかもしれない。」
そして、復讐は連鎖し、止まることはなくなる。復讐で死んだ人が贄となり、新たな復讐を生む。これが人間の簡単に起こすことができる禁忌だ。
「視野が狭いぞ。もっと広く見ろ。」
彼女は今、自分のことしか考えていなかった。復讐に飲まれ、自分自身を失っていた。正気じゃなかったのは彼に牙を剥いた時でなく、彼女の父が死んだ時だったのかもしれない。もしかしたら、もっと前からかもしれない。
「お前は輝夜の置いていった薬について、どれくらい知っている?」
「いや、わからない。どういったものだ?」
カルマは戸棚の上に置いてあった鏡をとり、彼女に渡す。不思議に思い、鏡を覗き込むと驚愕が彼女を襲った。
「な、なんだこれはっ!?」
彼女の綺麗な黒髪が真っ白になっていたのだ。
「あの薬は蓬莱山の薬。不老不死となる薬だ。」
「不老・・・不死・・・。」
「聞こえはいいだろうが、それは最初だけだ。地上で不老不死なんて存在に会えば、恐らくお前は人外の者として扱われる。」
「・・・・・・。」
これでは、復讐の意味を成さない。彼女の罠に嵌ったとでも言えるかもしれない。
「は、はは。私が化物、か・・・。」
彼女の言葉が部屋に虚しく響く。父は死に、自分は不老不死の化物となった。
「なぁ、カルマ。私はどうすればいい?」
今や彼女の支えはカルマという友人だけになってしまった。
「さぁな。お前のことはお前が決めろ。」
だが、彼は彼女を冷たく引き離す。そこまで面倒を見れる程、彼はお人好しではない。
「俺は行く。もしかしたら、何処かで会えるかもしれんな。」
「私が化物になったから、逃げるのか?」
「生憎―」
顔を上げると、カルマは背を向けていた。そして、彼が空間を割る瞬間を目撃してしまった。現実味の無さにカルマの存在の異常性を垣間見た気がする。
「俺はお前が生まれるよりずっと昔から人間辞めてるんでな。」
それだけ言い残し、彼は姿を消した。妹紅はこれからの事を考えた。カルマは恐らく、自分が人間でないことをわざと彼女に見せた。そんな彼が今までしてきたことは何か。
「・・・旅、か。」
そうと決まれば、話が早い。彼女はすぐに旅支度を始める。―と言っても彼女は不老不死となった。荷物は身体1つだけで十分だ。
「さようなら、父上。お世話になりました。」
その日の夜。藤原邸の屋敷が炎上した。それが誰によって起こされたことかは分かることはなかった。
妹紅の心情で半分くらい行くとは思わなかったw
てか、書いてて楽しかったw
因みにこの後の妹紅の裏設定ですが、こうなります。
旅をしている最中に上白沢慧音と会い、共に旅をすることになる。
妹紅は元人間の蓬莱人、慧音は人間を愛している半妖。
故にお互い思うところがあり同行することになります。
因みに当初の慧音はロリです。←ここ重要w
そして、行き着いた先が幻想郷でした。
そこで輝夜と再会でドンパチやります。
この時既にカルマは魔界にいるため、再会はできません。
以上がこの物語の藤原妹紅+上白沢慧音の裏設定です。
カルマに諭されて、妹紅は落ちました、まる。
間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。