東方禁初幻譚   作:鈴華

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場面は変わって、再び竹取物語です。
―と言っても、富士山行くだけだけどw
まぁ、それだけじゃないんだけどね・・・。

それでは、本編どうぞ。


Ep,17 依り代

「行ってくる。」

 

輝夜に手を貸し助けたその後日。カルマは風真に言われた通り、指定の場所に行こうとしていた。

 

「送りましょうか?」

「いや、いい。月の奴らのことだ。俺以外の奴がいれば、変に警戒するだろうからな。」

「わかりました。いってらっしゃい。」

 

麗夢に見送られる形で、カルマは開門を使い、指定された場所へと向かう。山の頂きに着くとまだ誰も来ていなかった。

 

「冷えるな・・・。」

 

流石の魔神も標高3500m越えは寒いらしい。彼の吐く息は白くなっている。すると、彼に合わせたかのように3人の人影が姿を現した。1人は如月風真、もう1人は彼の孫である如月風音。だが、彼らを従えている女性は初対面だ。そして極めつけには彼らの背後に2~3m程の柩サイズの箱があった。

 

「お初にお目にかかります、カルマ様。私は綿月豊姫。本日はお越し頂きありがとうございます。」

 

綿月という性にはカルマも聞き覚えがあった。蓬莱山に次ぎ、それなりの権力者だった。

 

「今の月はお前が治めているのか?」

「そうですね。私と妹で行っています。」

「そうか。それで俺になんのようだ?」

「風真、風音、例の物を。」

 

2人は後ろにある箱をカルマの前へと運び出した。大きさから分かるように、相当な大きさだ。

 

「これをカルマ様にお渡しします。」

 

横に置かれた箱を開けるとそこには分解されている得物があった。ほぼ無意識にカルマはそれに手を翳す。それはカルマの魔力に呼応し、彼の手に収まり、元の形状を構築していく。それは人間の身長の2倍はある柄に等身大サイズの刃のついた大鎌だった。

 

「これは・・・。」

「我々が祠にカルマ様の寄り代として祀っていた物です。」

 

試しに軽く降ってみたが、重さを感じることなく不思議と手に馴染んでくる。

 

「八意先生がそろそろカルマ様の力が無くなり始めている頃だろうとのことだったので、いつかお渡ししようと思っていました。」

 

長年の付き合いからくるものだろうか。それとも自分の作った薬だからだろうか。どっちにしろ禁忌魔法を節約しているカルマにとっては助けになるものだ。魔法使いは基本、魔法を魔道書なり杖なり触媒を用いて扱う。カルマはそれがなかったため、多くの魔力を消費する必要があったのだ。言い換えれば、今までのカルマは加工前の原石。この鎌を持ったことで加工後の光り輝く宝石へと変わったのだ。

 

「ふむ。一応例を言っておく。」

「ありがとうございます。我々はこれで帰らせていただきます。」

「あぁ、わかった。」

「姫様のことをよろしくお願いします。」

 

豊姫はそう言い残し、忽然と姿を消した。それを見送りカルマも開門で戻ろうとした矢先、異変が起きた。

 

「―ッ!?」

 

嫌な気配を感じ、振り返る。それと同時に天に向けて紅蓮の炎が立ち上った。炎の出処は今いる場所からそれほど遠くはない。急いで炎の発生源へと向かう。

 

「さっきまでの寒さが嘘みたいだな・・・。」

 

辺りは焼け野原となり、所々飛び火で燃えていた。そして炎の中心には見覚えのある少女がいた。明らかに苦しんでいる。熱でまともに声も出ないようだ。

 

「妹紅!」

 

彼の声に反応し、顔を上げるも目の焦点があっていない。

 

―第51禁忌魔法“過去写”―

 

カルマの紅い瞳が妹紅の過去を写しだした。そこには輝夜に堕ちた父が自害し、復讐に囚われた妹紅の姿があった。そして、炎の原因が輝夜の残した薬によるものだともわかった。

 

「ちっ。復讐に飲まれたか。」

 

復讐は生物が行うことができる簡単が禁忌だ。復讐は復讐を生み、連鎖を作る。だから、誰かがその復讐を止めなければならない。

 

「藤原妹紅、輝夜に復讐したいかっ!」

 

カルマの言葉に反応するように、炎の矛先がカルマに向かう。それを避けることなく、拒絶で炎を躱す。

 

「復讐したいなら、俺に向けろっ!俺は輝夜と知り合いだ。それに関わらず、俺はお前に近づいた!俺がお前の父親を殺したと言っても過言じゃない!」

 

更に炎の威力が増し、じりじりと押され始めた。だが、耐えられない程ではない。

 

「どうした。貴様の怒りはそんなものかっ!」

 

鎌を振り下ろす。風圧だけで炎が揺らぐ。その隙に炎に飛び込み、妹紅に近づく。

 

「悪く思うなよっ!」

 

妹紅の腹を殴りつける。彼女は苦悶の表情を浮かべたが、糸が切れた人形のようにカルマに身体を預けるような形で倒れ込んだ。同時に彼女から溢れていた獄炎も止まった。

 

「はぁ・・・。世話の焼ける・・・。」

 

カルマは彼女を肩に担ぐと、開門を開き中へと足を踏み入れた。

 




綿月の姉の方が登場です。
妹もいづれ登場予定です。
まぁ、こういう場面では豊姫の方が適任だと思ったんだけどね。
いざ調べてみると、豊姫ってのほほんキャラだったのねw
しかも大食いらしいし、完全に幽々子と同じじゃんよぉ(´∀`)

ところ変わって久々のもこたんです。
そして、私の中で妹紅はクール3デレ7のクーデレポジになりました。
今更だよ、まったく(´・ω・)
彼女のデレは現代編までお預けだけどねw

今回の禁忌魔法紹介~。
第51禁忌魔法“過去写” ― 過去を見ることが可能。見た過去には干渉が可能だが、時間軸に大きく影響する。

カルマの新しい大鎌のデザインです。
実際の柄の部分はもっと長いんです。
でもA4の紙に収まらなかった・・・( ;∀;)

【挿絵表示】

実は、ここで風音と稽古しようと思ったんだけどね。
鎌の打ち合いってどうすればいいの?
―ってなわけで入れませんでしたw

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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