東方禁初幻譚   作:鈴華

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連休をSSに費やしちゃいましたw
取り敢えず、この章分は書き終えました。
なので、この章が終わるまで連日投稿でせう。

そして、今回で玉藻編が完結すると言ったな。
あれは嘘だ。
その場の勢いで書いちゃうんです。
仕方ないんです。

それでは、本編どうぞ。


Ep,15 決意

玉藻御前に札を渡して以降、スキマから様子を見ていた。もっとも札による効果はなく、適当に幾何学模様を描いた紙でしかない。紫はいつでも玉藻をスキマから観察しているだけだった。

 

「・・・来たわね。」

 

時は訪れた。陰陽師が玉藻と攻防を始めた。負傷し消耗している身体に鞭を打ち、玉藻は陰陽師の攻撃に応戦する。だが、分が悪い。明らかに彼女が押されている。

 

「喰らえ!」

「くっ!」

 

刀のひと振りを躱し、妖力で生み出した衝撃波を陰陽師に当てる。彼はそれを腕を交差させることで防ぐと同時に後ろに飛んで衝撃を緩和する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

「なかなかに耐える。流石は帝様を騙した妖怪なだけはある。」

「・・・・・・。」

 

人間側の思い込みにより生まれる善意程、タチが悪いものはない。彼の一言一言が彼女の精神に傷をつけていく。

 

「ハッ!」

「―ッ!?」

 

彼女の隙を突き、もう1人の陰陽師が札を投げつける。躱しきれず、彼女の身体に札が張り付いた。

 

「喝!」

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

突如、身体を焦がす程の衝撃が走り、膝をついた。辛うじて倒れていないのは彼女なりの意地なのだろうか。だが、もはや虫の息だ。ヒューヒューと呼吸音が彼女の口から漏れている。

 

「そろそろ止めをさそう。」

「そうだな。これ以上帝様を苦しめるわけにもいかない。」

 

彼女の四方に札が展開され、結界が貼られた。

 

「せめて安らかに眠れ、玉藻御前。」

「行くぞ・・・。破!」

 

結界の中が閃光で包まれた。中から玉藻の叫び声が響き渡るが、閃光の迸る音によりかき消されてしまう。光が止むと、そこには大きな岩が転がっていた。

 

「奴の悪あがきか。強力な妖力を岩から感じるな。」

「一応結界を施しておこう。」

「そうだな。そのほうがいい。」

 

陰陽師は岩の周りに結界を張り、異常がないことを確認すると、報告のために都へと帰って行った。

 

 

 

「間一髪ってところかしら。」

 

スキマの中、そこで狐の妖怪が気を失っていた。陰陽師が結界を張り、閃光で溢れている隙を突き、紫は彼女をスキマの中へと引きずり込んだのだ。そして、入れ替わるように妖力を込めた適当な岩を置いておいた。

 

「これで伝承通りになっているはずね。」

 

数日後、玉藻は目を覚ました。

 

「・・・知らない天井。」

 

どこかの神社の一室だろうか。彼女は敷かれた布団に寝かされていた。

 

「気分はどうかしら?」

 

戸が開き、紫が入っていたが、彼女の顔には疲れが見られる。

 

「問題ない。それより貴方の方こそ大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫。」

 

少し遠い目をしながら答える彼女に首を傾げる。ちなみにこの時、カルマと面白半分の麗夢による仕返しから逃げてきたところだった。

 

「今はまだゆっくり休みなさい。回復したらこれからのことを話しましょう。」

 

そう言い残すと、彼女はスキマを開いてどこかへと行ってしまった。そして入れ替わるように彼女と違う妖怪が姿を現した。

 

「アンタが玉藻とかいう狐?」

「あぁ、そうだが・・・。お前は?」

「ルーミアよ。」

 

ルーミアは玉藻の傍に腰掛ける。

 

「紫から話は聞いてるわ。人間と愛を誓ったそうね。」

「・・・何が言いたい?」

「否定するつもりはないわ。でも、人間への愛ってどういうものかわからないの。私は人食い妖怪。人間を食料としか思ってなかったからね。」

 

ルーミアの根本的な思想は変わっていない。人間は捕食の対象。今はその行為が封じられている為、行うことができないでいるだけ。

 

「紫は人間と妖怪の共存する場所を作ろうとしている。それは聞いてる?」

「あぁ、聞いている。」

「アンタが人間を愛しているだろうから、概ね賛同するでしょ?」

「・・・・・・。」

「沈黙は肯定ととるわ。それで、私に人間に対する愛を教えて欲しいの。」

 

玉藻は答えられずにいた。愛とは突拍子もなく生まれるものだ。それが人間だろうが妖怪だろうが関係はない。そのため、教えると言ってもどう言えば良いのかわからないのだ。

 

「愛は何の前触れもなく生まれる。教えようにもどう言えば良いかわからない。」

「はぁ・・・。まぁ、そうよね。邪魔したわ。ゆっくり休みなさい。」

 

望んだ回答を得られなかった、というよりは答えがないことを半ば理解していたルーミアはそのまま部屋をあとにした。

 

 

 

動ける程度には回復した頃、時を見計らい紫が訪ねてきた。

 

「貴女の答えを聞きに来たわ。」

「分かっている。」

 

決意の元、彼女は顔を上げた。

 

「貴方の式になりましょう。」

「それはよかったわ。」

「但し、条件があります。」

「なんでしょう?」

 

玉藻御前が八雲紫の式となる。言い換えれば、玉藻御前としての最後の望みだ。

 

「最後にあの人に合わせてください。」

 




前回辺りでね。
ある読者さんがルーミアがかりちゅま化しているって言ってたのでね。
ちょいシリアスで出してみました。
ルーミアは麗夢の遊び相手なんです。(・ε・)キニシナイ!!

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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