東方禁初幻譚   作:鈴華

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一週間開いちゃいましたね。
ふ、不定期だから別にいいよね?(;´・ω・)

それでは、本編どうぞ。


Ep,4 記録者

スキマを抜けた先にあったのは神社だった。その神社は元々が廃寺のような状態であったとは思えないほど修繕されていたが、所々板が打ち付けられた所が見受けられる。そして、縁側には青白い炎の狐がいた。その狐はこちらに気付くと伏せていた顔を上げた。

 

『また来やがりましたか。…懐かしい顔と見たことない顔がいやがるようですが?』

 

焔はじっとカルマとルーミアを見ていた。

 

「焔、麗夢はいるかしら?」

『なら出かけていやがります。』

 

どうやら留守にしているらしい。

 

「そうね。麗夢が帰ってきたら、紹介するわ。それまで少し出かけてくるから。」

『どちらまででいやがります?』

「阿礼のところよ」

 

3人は鳥居をくぐり、階段を下りていく。人里に向かうが、東洋系の顔立ちの中に、金髪が3人もいると目立つのだろう。奇異や興味の視線が向けられていた。

 

「よくここまで繁栄できたわね。廃村だったとは思えないわ。」

「さっき言ったでしょ?協力者がいたって。今、彼女がいる場所に向かっているの。」

 

着いたのは1つの屋敷だった。それほど大きくないが、人里にあるだけで印象は濃い。門の横にある名札には『稗田』の文字があった。

 

「こんな屋敷あったの?」

「建てたってわけじゃねぇか…。転移させたのか?」

「そうよ。元々ここになかったから移動させたのよ。よく気づいたわね。」

「…土の色が違うからな。」

 

カルマの視線は地面に向いていた。よく見ると、屋敷の壁の真下と里の地面の色がほんの少し違うのだ。まるで境界線があるように。

 

「そうなのかー。キョロキョロしてただけじゃないのね。」

「当たり前だろ。」

「話はそこまでよ。」

 

紫は門を叩き、少しすると1人の使用人が姿を現した。

 

「ようこそいらっしゃいました、八雲さま。」

「阿礼はいるかしら?紹介したい人がいるの。」

「はい、いらっしゃいます。どうぞこちらへ。」

 

使用人に案内されたのは1つの客間だった。

 

「主人をお呼びしますので、しばらくお寛ぎください。」

 

使用人が出ていき少しすると、1人の女性が姿を現した。赤紫がかった黒髪に蓮の花飾りをし、華やかな着物に身を包んだ女性だ。

 

「お待たせしました。」

 

【挿絵表示】

 

彼女は紫の対面に座ると、使用人がお菓子とお茶を置いて退出していく。

 

「突然訪ねて申し訳ないわね。」

「いえ、大丈夫ですよ。こちらも時間がありましたので。それで今日の要件はそこのお二人のことでしょうか?」

「えぇ。折角だから紹介しようと思って。一度説明したことはあるはずよね。ルーミアとカルマよ。」

「はい、覚えています。穢れから生まれた妖怪と人間から神へとなった者ですよね。」

「―で?紫、その人間が例の協力者?」

 

お菓子をあっという間に平らげたルーミアが紫に問う。

 

「そうよ。」

「稗田阿礼です。よろしくお願いします。」

 

1つ1つの動作が彼女の清楚さを表わしている。

 

「よく妖怪の幻想に付き合おうと思ったな。何か取引でもいたのか?」

 

協力者というのだから、メリットとデメリットがあったに違いない。先に出会っていた巫女のように誰もが妖怪を快く思っているわけではないのだ。

 

「取引はしていませんよ。むしろ私からお願いしたんです。」

「…へぇ。」

「私は紫さんの思い描く物を記録し過去に伝えていきたいと思ったんです。ここにはこういう風に考える人がいて、このような生き方をしているって。」

「そういうことよ。阿礼には私たちのことを記録してもらおうと思っているわ。それに過去に記したものが未来で役に立つことだってあるのよ。」

「つまり、どちらにしろ利益しかないということね。」

「はい。強いてあげるのならば、紫さんの思想に反対する人たちがいるということでしょうか。」

 

八雲紫の目的、人間と妖怪の共存。それに反対する者もいないとは限らないのだ。人間は妖怪を畏怖し、妖怪は人間を見下し弄ぶ。お互いがお互いを快く思っているわけではない。そういった因子から攻撃を受けることがあるのだ。

 

「ここに住んでいるのは紫さんの考えを受け入れくれた人たちです。―と言っても、安全な暮らしができるのならそれでもいいと言う人たちばかりですが。」

「一番面倒だったのは、天狗の一派だったわね。」

 

当時の事を思い出しているのだろう。紫は溜息をつき、ルーミアは天狗について思い出していた。

 

「あれだけ縄張り意識が強ければね。確か人間だけでなく、他の妖怪も警戒してたかしら。」

「えぇ、そうよ。だから、むやみやたらに天狗のいる山に入らないって条件で受け入れてもらったわ。」

 

相当疲れる出来事だったらしい。紫は机に頬杖をついて溜息をついた。

 

「そういえば、お二人は紫さんの考えをどう思っているんですか?」

「…そうね。そういえば、聞いてなかったわ。」

 

ここにいる以上、共存関係でいてもらいたい。何かしら問題が起これば、彼女の幻想はそこで終わってしまうのだ。

 

「…難しいわね。人間との共存以前に、私は人食い妖怪。人間は食べ物としか思っていないわ。」

「ルーミア…。」

「でもまぁ、共に生きるのも悪くないんじゃないかしら?ここまでの旅で色々見てきたからね。」

 

ルーミアの答えは是。カルマと旅をして、人間にも色々な者がいるのだと分かった。それが面白いと思え、紫の考えに賛同し、ここまで戻ってきたのだ。

 

「それは良かったわ。それで魔神様はどうするのかしら?」

「…否定はしないが、肯定もしねぇな。」

「どういう意味かしら?」

「害意は潰す。それだけだ。」

「つまり、刃を向けない限りはこちらに危害を加えないってことでいいのね?」

「あぁ、それでいい。」

 

内心で彼は紫の考えに賛同していた。―と言っても、いいのではないか程度で、ほとんど傍観しようと思っている。今はルーミアの監視もある。暫くの間はここにいることになるだろう。

 

 




今回新登場、稗田阿礼です。
実在した人物で、男性です。
男性、ですからね?
ここで女性にしている理由ですが、紫の目的の反乱分子に狙われないように情報操作したってことです。
そのため、歴史上は男となっているわけですはい。
まぁ、おっさん描けないんで(´・ω・`)
何度も言うようですが、実際は男ですからね?
日本史で女性って書いたら間違いですからね?
振りじゃないからね(; ・`д・´)

原作のキャラ初のイラストは八雲紫でした。
カルマも久々に描きましたね。
最後に描いたのは諏訪大戦編だったなぁ。
・・・超久々っ!?( ゚Д゚)
ルーミアの食べてるのは羊羹です。
羊羹ったら羊羹なんですぅ(`3´)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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