東方禁初幻譚   作:鈴華

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最近の困った出来事。
入浴中に鼻血はつらいお(´・ω・`)

それでは、本編どうぞ。


Ep,3 八雲紫

最近、とある噂が広まっていた。絶美の美女が現れたというものだ。貴族という位の男たちが血眼になって彼女を欲し、求婚してはいるが、彼女は頭を縦に振らないという。

 

「……。」

「美女ならここにもいるわよ?」

「妖怪だがな。」

 

道端にあった茶菓子屋で休憩していると、そんな噂を耳にしたのだ。

 

「何、気になるの?」

「……。」

 

カルマの考えているのは一人の少女のことだ。考えが正しければ、その者が少女である可能性が高い。いや、絶対と言えるかもしれない。ルーミアは勘違いし、カルマも他の男と同じようにその美女と言われる者に会おうとしているのだと考えていた。

 

「会いたいわけ?」

「…確かめたいだけだ。」

「…ふぅ~ん。」

「…なんだよ。」

「べっつに~。」

 

ルーミアはそっぽを向くとカルマのお菓子も含め、残りのお菓子を全て平らげてしまった。

 

「…おい。」

「ほら、行くわよ。今日中に着くんだから。」

 

さっさと行ってしまおうとするルーミア。溜息をつくと、カルマも立ち上がり彼女の後に続いた。ルーミアに追いつき、歩みを進めていたが、突然カルマは立ち止った。

 

「どうしたのよ。」

「……。」

 

ルーミアを無視し、振り返ると数歩歩いて立ち止まる。不思議に思い、彼の傍までいくと、カルマは空間に手を差し込み、こじ開けた。

 

「あ、あら?」

 

空間の割れた所にいたのは、金髪にナイトキャップを被った女性。まさか、干渉されるとは思わなかったのだろう。彼女にしては珍しく冷や汗を流していた。

 

「えっ、紫?」

「なるほど、こいつが八雲紫か…。」

 

先ほどから視線を感じ、気にはなっていた。その正体が彼女だったのだ。

 

「…どうやって私に気づいたのかしら?」

 

動揺しながらも、いつもの調子を取り戻すと、紫は扇子で口元を隠しながら問いかけてきた。

 

「視線を感じた。それだけだ。」

「…いつから?」

「残念ながら、今さっきだ。お前の様子からすると、もっと前だろうがな。」

「よく紫に気づいたわね。私でも気づけないのに。」

 

実際に紫が彼らを見つけたのは、大和を出て少しした時だ。ルーミアから僅かに漏れ出る妖気を感じ取り、様子を見に来たのだ。そこで隣にいるカルマを見つけた。ルーミアの目的は彼の捕食。だが、仲良く二人でいることから不審に思い、スキマから様子を見ていたのだ。

 

「魔神と一緒にいるのはどうしてかしら、ルーミア?貴女の目的は彼の捕食でしょ?」

「その筈だったんだけどね。」

 

ルーミアは自分がカルマに負けたこと。拒絶で捕食本能を抑え込まれていることを話した。それで合点がいったらしい。

 

「でも、紫がここにいるってことは、あの村が近くにあるってことでしょ?」

「えぇ、そうよ。」

 

話を聞く限り、もう廃村ではないらしい。―と言っても小さな村の規模のようだ。

 

「へぇー。よくそこまでできたわね。」

「協力者がいたからよ。」

「協力者?」

「あとで紹介してあげる。」

 

紫に協力するとなると、朱姫あたりだろうか。しかし闘争を楽しむ鬼の種族にそれはありえないだろう。なら、ルーミアがあの場を去った後に出会った者ということになる。

 

「ところで、いつまで私を観察しているのかしら?」

「ん?」

 

カルマはずっと紫を見ていた。ルーミアとの会話に入ってこなかったのも、それが原因でもある。

 

「お前、本当に妖怪か?」

 

八雲紫は妖怪である。それは彼女が自分から言ったことだ。ルーミアは初めてあった妖怪が、彼女だったがためにそれを信じた。しかし、カルマは彼女以外の妖怪にもあっている。確かに彼女から妖気を感じることができる。だが―

 

「私は妖怪よ?現にルーミアと同じ妖気があるじゃない。」

「言い換えれば、穢れとほぼ同じだ。」

「……。」

「妖怪というよりは、人ならざる者と言った方がいいんじゃないか?」

 

とても鋭い洞察力に紫は平静を装うのに苦労していた。まさか、この段階でここまで踏み込んでくるとは思わなかったのだ。スキマ越しの視線といい、紫の正体といい、彼は鋭すぎる。

 

「…そうね。私からは何も言えないわ。でも、鋭い貴方ならいずれ気付くことになると思うわ。」

「…そうか。」

 

僅かな間があったことが肯定を示している。そう判断したカルマはそれ以上踏み込もうとは思わなかった。彼女は一体どこまで視えているのだろうか。

 

「話は終わり。案内するわ。」

 

話を強制的に打ち切ると、紫は二人を廃村だった場所へと案内を始めた。―と言っても、スキマを繋げただけだ。スキマの中へと入っていく紫。一度通っているため、安全と分かっているルーミアも進んで入っていく。初めて入る者としては抵抗がある。スキマの中から覗く身に覚えのある幾つもの視線。カルマはこの時、確信した。

 

彼女―八雲紫は少なからず穢れと関係している。

 




竹取物語要素少ないと思ったので、無理やり話を長くしました。
その結果が紫の再登場です。
—ということは、あの娘も登場するわけですよ、うふふ。
それはさておき、そろそろ竹取物語に入っていきますよ。
さて、どうしましょうかね。

みなさんは八雲紫の存在についてどう思っているのでしょうね。
私の考察はいずれ語られると思います。
2章くらい先ですけどねw

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


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