負けたら、正座12時間っ!
痺れた脚を突くと面白いよね。
それでは、本編どうぞ。
水咲の行先には大和の象徴と言える大きな社があった。神社というよりは砦と言えるかもしれない。
「私はここで待ってるわ。」
ルーミアは鳥居の前で立ち止まった。なんでも、神聖な場所に入ることを彼女の本能が拒んでいるらしい。彼女を置いていくのには不安がある。人間への捕食活動を制御しているとは言え、何かしらやらかすかもしれないのだ。仕方なく、拒絶結界の中へと閉じ込めておく。
「いいんですか?閉じ込めて。」
「仕方ないだろ。あいつ、何するかわからないからな。」
社の中は木製となっており、所々にある柱が人間一人分の太さはある。かなり頑丈に作られているようだ。
「こっちです。諏訪子様~、神奈子様~。」
戸を開けるとそこには二柱の神がいた。外見も最後に目にして以降変わっていないようだ。
「水咲、どうしたの?」
「忘れ物でもしたのか?」
帰ったと思っていた巫女が戻ってきたことに首を傾げる。対し、水咲は笑みを浮かべていた。カルマは扉の影で待っているように言われているだけ。彼女なりに驚かせようとしているのだろう。
「ふっふー。会わせたい人がいるんですよ!」
「何?男でもできたの?」
「えっ!」
諏訪子の発言に一瞬にして顔を赤らめた。その様子にまさかという思いが二人によぎる。
「本当にできたのか?」
「ち、違いますよっ!カルマさんとはそういう関係では―!」
「「カルマ…?」」
水咲は慌てて口を両手で押さえた。
「水咲。会わせたい人ってまさか…。」
「えっと…。はい、そのまさかです。」
カルマは溜息をつくと、影から姿を現した。二人は数年ぶりの再開に驚き、立ち上がる。
「カルマ…。」
「戻ってきたのか…?」
ある意味で驚かすことに成功した水咲は、場所をカルマに譲り、そのまま退室した。
「久しいな。諏訪子、神奈子。ここへは偶然行き着いただけだ。」
「それでも嬉しいよ。」
「あぁ。久々に会えて、私も嬉しいよ。積もる話もあるだろう?そこに座ってくれ。」
促されるままに腰掛けると、戻ってきた水咲がカルマにお茶を出し、諏訪子の傍へと移動しようとした。しかし、諏訪子はにやりと笑みを浮かべてそれを制する。
「水咲も座っていいよ?カルマの隣とか。」
「ふえっ!?」
「そうだな。水咲も色々話すことがあるだろう。座るといい。カルマの隣とか。」
「ふえぇえっ!?」
湯気が出るほど赤面しだす水咲。それを面白がるようににやける二神。その様子はあの頃いがみ合っていた二人とは思えない光景だった。どうやらあの戦い以降うまくやっているようだ。
「どうだ、あれから?上手く行ってるようだが。」
時を見計らい、カルマから口を開いた。結局水咲はカルマの隣に座ることになり、終始顔を赤らめている。
「うん?あぁ、おかげさまでな。そういえば、まだだったな。」
「あ?」
「いや、あの戦いに手を貸してくれてありがとう。」
「そうだね。私を止めてくれてありがとう。それと水咲のこともありがとうね。」
二人に頭を下げられ、カルマは気恥ずかしくなり、顔を背ける。
「別に…。俺はやりたいようにやっただけだ。」
「…なんだ、カルマ。照れてるのか?」
「―ッ!?」
新しい玩具を見つけたように、顔を上げた神奈子の顔が笑みを浮かべている。
「うるさい。あの時の話は終わりだ、終わり!」
「照れてるな。」
「照れてるね。」
「照れてますね。」
「くっ…。」
それから四人は今までの事を話始めた。諏訪大戦以降、洩矢神社を守矢神社に改名したことには驚かされた。祟り神としてでなく、守るための神社としてありたいと水咲が言い出したらしい。他にも、カルマが魔神であることに驚かされていたようだ。神奈子はツクヨミあたりから聞いていたらしく、半信半疑といった形だったらしい。
「…そろそろ行くか。」
ルーミアをほったらかしにしているため、そう長くいることは出来ない。
「なんだ。もう何処か行ってしまうのか?」
「泊っていけばいいのに。」
「悪いな。連れがいるんだ。」
三人に別れを告げ、立ち去ろうとした時、諏訪子が彼を呼び止めた。
「ねぇ、カルマ。」
「なんだ?」
「また戻ってきてくれる?」
諏訪子の視線が水咲へと向けられる。その目は親が子に向ける慈愛に満ちていた。おそらく、彼女の気持ちに気付いているのだろう。
「戻ってくる気があるんだったらさ。水咲をお嫁にしてあげてくれないかな?」
「えええっ!!?」
水咲は驚き、赤面しだした。しかし、カルマの答えは否だった。
「悪いな。戻ってくるつもりはない。」
西での出来事といい、ここといい、許嫁にしようとする者が多いような気がする。
「そう…ですか…。」
少し悲しげな笑顔を浮かべる水咲になんと言っていいかわからない。
「…水咲。」
「はい。なんでしょうか?」
「…いや、なんでもない。」
「……?」
水咲に神力を僅かながら感じられることを言おうとしたが、それに気づかないはずがない二神が傍にいるから大丈夫だろうと判断した。二人に別れを告げ、水咲はカルマを社の前まで見送りに来た。結界を解き、ルーミアを外に出す。
「お腹減った。」
「第一声がそれか。我慢しろ。」
「はぁい。」
二人のやり取りをなんとも言えない気分で見つめる水咲。
「じゃあな、水咲。元気でな。」
「はい。お二人もお元気で…。」
水咲は離れていく二人をずっと見つめていた。姿が見えなってもずっとその場にいた。気が付くと二人の神様が傍に立っていた。
「大丈夫、水咲?」
「…何がですか?」
「泣いてるよ?」
いつの間にか涙が頬を伝っていた。水咲は袖で涙を吹くと、空元気で二人に振り返る。
「だいじょーぶですっ!」
「…そうか?」
「はいっ!」
「でも…。」
「大丈夫ったら大丈夫なんです。なんたって―」
彼女は二人の間を通り過ぎ、そしてまた振り返る。そこには笑顔があった。
「常識に囚われてはいけないんですからねっ!」
これなんて最終回?(;´・ω・)
新章2話目で最終回みたいになっちゃった。
水咲の初恋は失恋してしまった。
因みにこの後の設定ですが、諏訪大戦編の時に水咲が薬を与えていた子供のことを覚えてますか?
彼女はその子と結ばれます。
産まれる子供は少し神力がある程度です。
水咲は成長するにつれて、神力が高まってきますが、耐え切れず常人より少し早く死去。
それ以降、遺伝子的な問題で少しずつ薄れていきます。
早苗は家系の中で一番神力が高いです。
言わば、先祖返りみたいなものです。
だから、水咲の生き写しみたいな容姿なんです。
よって口癖も同じ感じに・・・。
—という後付け設定でした。
それと番外編投稿しました。
またも前作の番外編です。
だって前作主人公兼今作のメインヒロインを描きたかったんです。
その名も、東方歪界譚番外編【東方アマノジャク・歪】。
その名の通り、東方アマノジャクを元にしています。
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。