それでは、本編どうぞ。
「少しよろしくて?」
声のした方向に視線を向けると一人の女性が空間にできた裂け目に腰かけ、こちらを見下ろしていた。
「八雲…紫…。」
そこにいたのは、八雲紫だった彼女は地面に降りるとこちらに近づいてきた。
「お主も妖怪か…。しかし奇妙な気配だのう。」
「鬼子母神をお見受けしますわ。少しお話ししませんか?」
「話、だと?今それどころではないのだが…。」
今、朱姫の前には穢れであるルーミアがいる。彼女がいる以上警戒を怠ることはない。
「ルーミア。変な事しないでね。」
「……。」
紫を一睨みしたあと、溜息を吐くと闇を引っ込めた。それを確認すると、朱姫も構えを解く。
「して、話とは?」
「えぇ。ここの天狗の長である天魔様という方と話をつけてきたのです。」
「天魔とか…。ふむ…。」
天魔という名にわずかに反応した。一応聞いてくれる姿勢になったようだ。
「ここの麓近くに狂う村があるらしいですね。」
「あぁ、あるな。」
紫の話によると、ここの近くに1つの村があった。「あった」というのは、現在そこは廃村のような状態だからだ。廃村となった理由は、ある日を境にその村に住んでいる人たちが発狂しだしたからだ。ある人は人を殺し、ある人はなんでも食べ、ある人は笑い出すと他にも狂いだす人が出る始末。それを恐れた村人はその村から離れていったのだ。そして、現在もそれは続き、少しでもその村に入ると狂い出すという。
「して、その廃村がどうしたのじゃ?」
「天魔さまとの取引をしました。」
「取引だと?」
「はい。」
すると、紫はルーミアの側に立ち、彼女の肩に手を置いた。
「彼女がこの問題を解決する代わりに、ここを通っても良いという話です。」
「はぁ!?」
初耳だった。彼女は早く彼の魔神とあの頃の続きをやりたいのだ、道草を食うつもりなど毛頭ない。ただでさえ、遠回りしなければならない現状なのだ。異を唱えるに決まっている。
「ちょっと紫!」
「因みに貴方に拒否権はないわ、ルーミア。」
「ぐっ…。」
紫がルーミアを睨みつける。逃げ道を防がれてしまった以上引き下がるほかない。
「…理解した。その廃村のことが済んだ時は、ここを通って良い。」
「ありがとうございます。ほら行くわよ、ルーミア。」
「ちょ、ちょっと!」
朱姫に一礼すると、紫はルーミアの手を引いて下山を始めた。暫くそうしていたが、ルーミアが彼女の手を振りほどいた。
「何のつもりよ、紫。私がどんな存在か、知ってるでしょ!」
「勿論知っているわ。」
彼女は妖怪である。それは二人とも当てはまることだ。しかし、妖怪と人間の共存を望んでいる八雲紫に対し、ルーミアは人間を喰らう。明らかに交わらない存在なのだ。
「その上で貴方を連れていくのよ。」
「意味が分からないんだけど…。」
「わからなくて結構。そろそろ見えてくるわよ。ほら、あそこよ。」
彼女の示した先には廃村のような場所があった。
「あそこがその狂うって村なの?」
「そうよ。なんとなくでもわかるんじゃないかしら?」
「…まぁ、ね。」
何か異常があるというのは、遠目でもわかる。近づけば、それがより強く感じさせられた。一件ただの廃村だが、本能が異常を察知しているのだ。
「これは…。」
「ね?異常でしょう?」
唖然とするルーミアを置いて、紫は村へと足を踏み入れる。
「ちょ、ちょっと!入って大丈夫なの、これ?」
「私の周囲は問題ないわ。境界を弄ってるから。貴方も私の側にいなさい。」
そして、二人は歩みを進める。人間の気配は感じられない廃屋があたりにあるだけだ。
『ようこそ、おいでくださいました。』
それは突然訪れた。突然声が聞こえてきたからだ。目の前が突如として青白く燃え始め、それは形を作っていく。
「…狐?」
そう。それは炎でできた狐だった。
「紫、こいつがここの原因なの?」
「この子じゃないわ。原因はこの子の宿主。」
この村で狂い始めたのはこの炎の主が原因らしい。紫は既に調べ上げていたのだろう。その上で天魔と取引に持ち込んだのだ。
『ご案内いたします。』
狐は二人をある場所に誘う。見えてきたのは長い階段。その上には鳥居が見える。鳥居の上には名前が刻まれた木板がつけてあったが、文字が掠れている。辛うじて‟博麗”と読めなくもない。階段を上り鳥居をくぐると、そこには如何にも崩れかけてる神社があった。
『こちらでございます。』
案内されたのは一つの部屋だった。戸は破られ、中が丸見えとなっている。狐の炎に照らされ、部屋の奥に人影があることがわかった。
「お帰り…なさい…。…焔(ほむら)。」
声は弱弱しく、掠れていた。辛うじて生きていると言えるだろう。焔と呼ばれた炎の狐は声の主の側にいく。
「―ッ!」
ルーミアは息を飲んだ。そこにいたのはまるで骨だった。正確は限界まで痩せ細った少女だったのだ。それに加え白装束を着ているため、より痛々しく、見ていられない状態だったのだ。
「焔…。私の…中へ…。」
焔は紫たちに一礼すると姿を消した。おそらく彼女の中へと入り込んだのだろう。
「ここに…人が来るのは…何年ぶり…なのでしょう…ね。」
「食糧を出すわ。少し待っていなさい。」
そう言うと紫は彼女の側に腰を下ろした。そして空間を開け、中から適当に食糧を取り出し、口へと持っていく。弱弱しく開けた口に食糧を入れると、ゆっくりと噛み始めた。
「それで?私はどうすればいいのよ。」
ルーミアは全くと言っていいほど興味を示していなかった。確かに彼女の痛々しい姿に息を飲んだが、ただそれだけだ。この狂う村の原因が彼女だというならば、喰らえばいいだけの話なのだ。
「簡単な話よ。この娘が能力を制御できるまで、側にいてあげて。」
「どうして私が…。」
「詳しい話は後で。」
そこで話を打ち切り、再度少女に食糧と水を与えた。満足したのだろう。少女は紫の膝に頭を置き、眠りについてしまった。その頭をゆっくりと撫でている
「それで?なんでなのか理由を話してもらいましょうか。」
「そうね。この娘は私の目的の要になるからよ。」
前作を読んでくれていた方々。
待たせたなっ!。
あの人の登場ですよ!うはうはw
まぁ、ちょい出し程度ですけどね。
はてさて、このあとどうしましょうかね(*´ω`*)
それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。