東方禁初幻譚   作:鈴華

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早速オリキャラの登場。
古代スタートだからしょうがないね。

では、本編どうぞ。


1章 月移住計画
Ep,1 蓬莱の薬


 

「どうやら完治したようね。」

「俺を誰だと思ってんだ?」

 

2、3日すると、永琳がカルマの家まで足を運んできた。腕の骨折の具合を見るためだ。しかし、カルマはもう人間ではない。驚異的な回復力を持っている。それに永琳の薬もあるおかげで1日経った頃にはほぼ再生していた。

 

「で、今日はなんの用だよ。」

 

永琳は普段、自分に当てられた研究室にいるはずなのだが、今日に至ってはカルマの家に来ている。傷の具合なら別に見なくても完治していることくらい把握できるはずだ。

 

「ちょっと手伝って欲しいことがあってね。」

「手伝い?」

「そうよ。上層部に新しい薬の研究結果を提出しに行くの。」

 

彼女は上層部からの依頼と自分の意欲、みんなの役に立つかで薬を開発している。カルマの時は見事に騙されたために、この3点について、彼女は厳しく判断するようになった。

 

「資料持っていくだけでなんで俺が手伝うことになんだよ。」

「思いのほか多くなっちゃったのよ。しょうがないじゃない。」

「これだから研究者は。」

「医者よ。で、手伝ってくれるんでしょ?」

 

カルマはため息をつくと、腰を上げた。

 

「わかった、行くよ。」

「よろしい。」

 

研究室に向かい、入ってみると、机の上だけでなく、床の上にも研究結果と思われる紙が散らばっていた。

 

「おい・・・。」

「・・・・・・。」

「目をそらすなや。」

「・・・言いたいことはわかるわ。研究に没頭しすぎ、でしょ?」

「これで何回目だと思ってんだ。さっさと片付けるぞ。」

 

2人で永琳の部屋を整理すると、散らばっている紙の全てが同じ研究で用いられた資料だということが分かった。そうなると、紙の量は尋常じゃないわけで―

 

「どうすんだよ、この量。」

「どうしましょう?」

「どうしましょう、じゃねぇよ。」

「そういえば、禁術の―」

「使うわけねぇだろ。」

「ですよねー。」

 

何か乗せて運べるようなものがあれば良いのだが、あいにくここにはそのようなものは置いてない。

 

「しょうがない、分割して運ぶぞ。この量なら日が暮れる前に終われるだろ。」

「そうね、お願い。」

 

2人は手近にある資料を手に外に出た。研究室から上層部まで1kmもないところにあるためそれほど疲れるようなことはない。だが、これだけの研究結果をまとめた資料となると、どういったものなのか、気になってくるものだ。

 

「なぁ、永琳。」

「なに?」

「今度はなんの研究だ?これだけ資料があるのは、俺の時以来だと思うんだが。」

「蓬莱の薬よ。」

「蓬莱・・・?」

 

蓬莱という名はこの都市で知らないものは誰もいない。上層部の1人に蓬莱の名を持つ人物がいるのだ。正しく言うのならば、蓬莱山だが。

 

「それって、蓬莱山影成(ほうらいさんかげなり)党首のことか?」

「そうよ。彼から直々に頼まれたのよ。」

「ふぅーん。」

 

どんな目的があるのかはわからないが、彼は悪巧みするような人ではない。これは都市全員が知っていることだ。

 

「どんな効力を持つんだ?その蓬莱の薬は。」

「不老不死になるわ。」

「何?」

 

不老不死。そのまま老いることも死ぬこともなく生き続けるということだ。これは禁忌の1つだ。そんなものに手を付けるなど正気の沙汰とは思えない。

 

「どういうことだ?説明しろ。」

「1つの親バカってやつよ。姫様のことは知ってるでしょ?」

 

蓬莱山影成の一人娘、蓬莱山輝夜。彼女は生まれつき病弱で、外に出たことがほとんどないらしい。永琳は医者として彼女との面識が既にあるが、カルマは彼女にあったことがない。

 

「なるほど。理由は分かったが、わざわざ不老不死にしなくてもいいだろ?」

「それもそうなんだけど、あんな姫様を見ていれば、いつ死ぬかわかったものじゃないもの。しょうがないわ。」

「・・・・・・。」

 

気がつけば、上層部のある館についていたようだ。永琳は扉を開け、中を進んでいく。カルマもそれに続く。すると、1つの扉の前で足を止めた。

 

「持ってて。」

 

カルマは嫌そうな顔をしたが、ため息で了承。腰を屈めると持っていた資料の上に永琳の持っていた資料を積み上げる。永琳は扉をノックすると、中から男性の声が聞こえてきた。

 

「八意永琳です。薬についての資料の一部を持ってきました。」

「入りなさい。」

 

中は応接間となっているようだ。中央の机を挟むように長い椅子が置かれている。中にはツクヨミとは一人の男性が腰掛けていた。ちなみにカルマは部屋の外で待っている。

 

「薬ができたのかい?」

「理論上は可能ですが、まだ完成には至りません。そのため今日は資料のみを持ってきました。」

「一部というのは?」

「研究していましたら、量が多すぎてしまいまして。そのため、今からカルマと一緒に往復して持ってくるつもりです。」

「不老不死になる薬のことだ。禁忌について研究すればそれだけの量になってもおかしくはない。すまないな。」

「いえ、党首様や姫様のお役に立てるのならば光栄です。」

「そうか。・・・彼を待たせても申し訳ないからな。入ってもらいなさい。」

「ありがとうございます。」

 

永琳は一礼すると扉を開けた。

 

「入っていいって。」

「わかった。失礼します。」

 

カルマも一礼して部屋の中に入る。彼自身、蓬莱山影成と直接会うのは初めてのことだ。

 

「彼がカルマくんだね。ツクヨミ様やアマテラス様、永琳から聞いているよ。」

「それは光栄です。」

「輝夜も君の話を聞いて会いたがっている。この資料を運び終えたら会ってくるといい。」

「そうですか。では明日あたりに永琳とお伺いします。」

「今日でもいいのだが・・・。」

「いえ、永琳の紙束が尋常じゃないので。」

 

カルマの一言に影成は彼の置いた資料に目を向ける。これよりも多いとなるとこの応接間

が覆い尽くされてしまいかねないと、今初めて気づいたのだろう。彼の顔が一瞬引きつったのを2人は見逃さなかった。

 

「そ、そうか。なら明日来るといい。歓迎するよ。」

「ありがとうございます。ではまた来ます。」

「失礼します。」

 

2人は部屋から出て再び資料を運び作業へと専念し始めた。大体4時間で運び終えることが出来た。そのあと、永琳は蓬莱山の薬の調合などの研究。カルマはツクヨミからの穢れ討伐。影成は大量の資料に目を通すことになった。

 

 




無理やりボケツッコミを入れてみました。
なんだが、ギャク系の方が私的にしっくり来ますね。
でも、今作はシリアスが多いです。
次回はニートの登場です。

間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



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