東方禁初幻譚   作:鈴華

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あけましておめでとうございます。
本当はクリスマス編とか正月編とか書きたかったんですけどねw
里帰り+バイト+レポートですよ。
おかげでイラストもないです。

それでは、本編どうぞ。


Ep,3 戦乱状況

マキナ・スカーレット。彼女は吸血鬼、血を吸う生き物だ。彼女はワイングラスに注がれている血を見つめ、口につけた。

 

「あら…。意外と美味しいわね。」

「ありがとうございます。」

 

彼女が味わっている血液はカルマのものだ。それは深が手に入れたもの。カルマが寝るのを見計らい、彼が殺したのだ。そして手に入れたのが、この血ということである。

 

「あのカルマという客人は?」

「彼なら―」

 

その時、ノックもなく扉が開かれた。美鈴か、もしくはマキナの娘かと思ったが違う。そこにいたのは―。

 

「なっ!?」

「まさか、ナイフ一刺しで起こされるとは思わなかった。」

 

平然としているカルマに二人は驚きを隠せないでいた。深は確実に彼を殺した。念のために、銀のナイフで心臓を貫いた。それはマキナも聞いている。そのため、カルマはすっかり死んでいるものだと思っていたのだ。

 

「んで、俺を刺したのは、お前か?」

 

深は冷や汗を流していた。彼が何者なのか計り知れないからだ。吸血鬼だろうがなんだろうが、心臓を貫けば殺すことは可能。だが、彼は死ななかった。それどころか、今のカルマには傷一つとして見つけることはできない。

 

「何者ですか…貴方は…。」

「さぁな。少なくとも、お前らに危害を加えるつもりはなかったんだが…。」

 

カルマはマキナの向かいに座り、二人を見つめる。

 

「状況の説明を願いたい。」

「えっ?」

「俺を殺しに来たのは、その血を手に入れるためだけじゃないだろう。あの門番が言っていた“ヴラド”って名前。それと関係してるんじゃないのか?」

 

殺されたことに対する恨みのようなものが見て取れない。それどころか、こちらの力になろうとしている。二人はそれが理解できなかった。それを汲み取ったカルマはため息交じりに応えた。

 

「最初は仕返ししようかと思った。だが、ここに来る前にお前の娘に会った。」

「レミィに何をしたの!」

 

娘の名前を出した直後、マキナは立ち上がり、カルマを睨みつける。勢いよく立ったおかげで、グラスは手折れ、血がテーブルクロスを汚した。

 

「早合点するな。会って少し話しただけだ。」

「そう…、よかった。」

 

彼女は安心し、椅子に座り直した。

 

「話を戻すが、そのレミリアに会って言われたんだよ。友達を助けてほしいってな。」

「…パチェのことね。」

「それで気が削がれたから、こうして来たんだよ。」

 

マキナは考えるように俯いたが、すぐに顔を上げた。

 

「…いいわ。話してあげる。」

 

彼女は全て話した。今、吸血鬼のなか紛争状態であること。“ヴラド・ツェペシュ”という者が力を付け、次々と勢力を広げてきていること。もう生き残っているのはここ、スカーレット家しかなく、レミリアの親友である少女―パチュリー・ノーレッジが人質として捕えられていること。

 

「なるほど。そんな時に来客とあれば、警戒するのも無理はない。」

「申し訳ありませんでした。」

「いや、いい。主人を守るためにやったんだろう。気にするな。それで、そのヴラドはどうして人質なんて方法を取った。聞く限りだと、お前らは打つ手なしのように聞こえるが。」

「こっちには代々受け継がれている家宝があるの。」

「家宝?」

「えぇ。“グングニル”と“レーヴァテイン”の二つ。この武具をヴラドは警戒しているのよ。」

「そこであちらはある条件を提示してきました。」

「条件?」

「はい。パチュリー様の解放を条件に二つの武具の譲渡、でございます。」

「なるほど。」

 

それでは意味をなさないことはすぐにわかる。ヴラドはパチュリーと引き換えに二つの武具を手に入れた暁には、その戦力をもってここを攻めてくるに違いないのだ。

 

「要するに、パチュリーとか言う子供さえこっちにいれば良いんだな。」

「そうですな。そうなれば、あちらも脅迫まがいの行為を行うことはできなくなります。」

 

しかし―と深はつけ加えた。

 

「脅迫材料がなくなれば、あちらは攻撃を実行するかと思われます。噂では、あちらも強力な武具を手に入れたようなので。」

「なら、俺が戦力になろう。」

「…いいのかしら?貴方は部外者なのよ?」

「勘違いするな。見てられないだけだ。」

「…ありがとう。」

 

二人の感謝の念を横目でみながら、カルマは溜息をついた。

 

「なら、早速そのパチュリーを救いに行くか。」

「なっ!危険です!あそこに近づいたら、ヴラド伯爵の眷属にされてしまいます。」

「俺を刺殺した奴が何言ってんだ。」

「うっ…。」

「なに、心配するな。外から行くとは言ってないだろ?」

「それは…どういう…?」

 

深の疑問には答えず、背を向ける。すると、突如として空間が砕け散った。カルマは開門を使ったのだ。勿論接続先は―。

 

「すぐ戻る。」

 

そして、カルマは闇の広がる空間へと足を進めた。

 

 

 

場所はヴラドの城。その地下にある牢獄。そこに幼い少女が捕えられていた。少女は部屋の隅で膝を抱え、うずくまっていた。今日も助けは来てくれない。彼女は捕まってどれほどの時間が流れたのかもわからないでいた。地下にいるため、太陽の日も届かないからだ。

 

「……レミィ。何してるのかしら…。」

 

彼女の希望とも言える存在の名前。しかし、それに応える者は誰もいない。

 

―バキッ―

 

その時だ。何かが割れるような音が彼女の耳に届いた。ここの眷属が粗末なご飯でも持ってきたのか、と彼女は思い、顔を上げた。だが、そこには彼女が見たことのない光景があった。

 

「―ッ!?」

 

空間に亀裂が入った。そこからヒビが広がり、砕け散ったのだ。

 

「よっと。」

 

そこから現れたのは黒い服に身を包んだ金髪の男。彼―カルマは目の前に怯えている少女を見つけ、話かけた。

 

「お前がパチュリーか?」

 

彼女―パチュリーは怯えながらも小さく頷いた。

 

「俺はカルマ。スカーレットの使いみたいなもんだ。」

「スカー…レット…。レミィの…?」

「そうだ。お前を助けにきた。」

 

彼女の顔に光が差した。しかし、罠かもしれない。だが、ここで彼女を手に入れても、得にはならない。スカーレットとヴラドを敵に回すだけだ。だが、悩んでいる暇はないようだ。少し奥のほうから扉の開く音が聞こえたからだ。

 

「チッ。」

 

カルマは舌打ちをすると、パチュリーの手を取った。

 

「ちょっ!」

「時間がない。行くぞ。」

 

カルマはパチュリーを引き寄せると、抱え上げた。そして空間の境へと飛び込んでいった。そして二人は、その場から姿を消した。

 




カルマの生きている理由?
黄泉返りです。(´・ω・`)
さて、そろそろ前作のフラグ回収が始まる頃合いです。
どのあたりを回収するかは・・・わかりそうな気がする。(´・ω・`)

それでは、間違い等がありましたら、ご指摘のほどよろしくお願いします。
感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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