次章どうしようかな。
それでは、本編どうぞ。
カルマは第3禁忌魔法“開門”を使い、洩矢神社へと場所を移した。そのついでに“拒絶結界”も解いておく。もう襲われることはないだろう。水咲の亡骸を彼女の部屋に横に置き、神奈子に諏訪子を部屋に寝かせるように指示する。
「で、どうするんだ?」
「は?」
神奈子は部屋に戻ってくると、カルマの向かいに座り、話しかけてきた。だが、その質問にカルマは疑問を抱く。
「いや、これからどうするのかって―」
「知るか。」
「なっ!?」
カルマの淡泊な反応に神奈子は絶句する。
「そこは俺の管轄外だ。俺はあくまで恩を仇で返すようなことをしたくなかっただけだ。今後の洩矢と大和の関係まで深入りするつもりはない。」
「そ、それは…。」
神奈子は一人考えこんでしまった。この二国の関係には、もう一つの国の神である諏訪子の存在が必要不可欠。今は彼女が目を覚ますまで待たなければいけない。カルマは部屋を出ると、諏訪の国の民に現状の説明をしに向かった。
二国の関係は洩矢諏訪子が目を覚まさない限り保留であること。
洩矢の巫女である東風谷水咲の死。
この二つの報告だ。民はもちろん不安に襲われた。祟り神である諏訪子の信仰が無くなれば、この地が荒れ果て、死んでしまうと。そして、水咲の死。これに対し、新しい巫女を立てるかどうかというものだ。取りあえず、諏訪子が目を覚まさない限り進展しないという旨を伝え、カルマは神社に戻っていった。
神社に戻ると、諏訪子は目を覚ましたところだったようだ。興奮は治まっているものの、神奈子に対し、敵対心が剥き出しとなっている。
「少しは落ち着け、諏訪子。」
「カルマッ!でも神奈子は―」
「水咲は神奈子がやったわけじゃない。」
「えっ?」
カルマは二人に真実を話した。水咲はスサノオによって斬られ、死んだ。
「スサノオが…。」
「そのスサノオは?」
「俺が倒した。今頃、ツクヨミとアマテラスに説教でもされてんじゃねぇのか?」
「そうなんだ…。ごめんね、神奈子。」
「いや。私こそ、スサノオを止められなくてすまない。」
諏訪子の誤解は解けたとは言え、表情は暗い。何せ家族とも言える存在を目の前で失ったのだ。当然と言える。
「―で、結局勝敗はどうすんだ?」
今回の戦いは諏訪の国の取り合い。カルマが止めに入った以上、結果はわからない。
「私の負けでいいよ…。」
諏訪子が元気のない声で呟いた。神奈子は驚き、カルマは視線を諏訪子に向ける。
「す、諏訪子?お前の国なんだぞ?そんなあっさり…。」
「暴走しちゃったからね。皆に顔向けができないんだよ。それに水咲がいないんじゃ、私、やっていけそうにないかな…。」
「…諏訪子。」
諏訪子の落ち込み様に、神奈子も暗い気持ちになってしまった。対し、カルマはだんだんイライラしてきているようだ。
「諏訪子。」
「何、カルマ?」
「諏訪の奴らはお前に消えてほしくないみたいだぞ。」
「え?」
カルマは報告に行った際の様子を彼女に話した。すると、諏訪子は乾いた笑みを浮かべていた。
「あはは。ここにきて祟りを気にするあたり、やっぱり欲深いなぁ、人間は…。ちょっと考えてみるよ。」
「そうか…ん?そういえば、カルマ。」
「なんだ?」
神奈子は真剣な表情を浮かべ、カルマと向き合う。
「ツクヨミ様やアマテラス様から聞いたんだが、お前は禁忌魔法なるものが使えるとか?」
「あぁ、使える。それがどうした?」
「なら、死者を蘇らせるものもあるんじゃないか?」
「えっ!?」
逸早く反応した諏訪子はカルマに詰め寄る。明らかに希望に満ちた眼だ。カルマは彼女を押しのけると、話し出す。
「あると言えば、ある。」
「なら、水咲を―」
「生贄は?」
「え?」
「生贄は誰だ?二度は言わん。」
カルマは二人を鋭く睨み付ける。現状を表すなら、鷲に睨まれた蛇と蛙といったところだろうか。それだけの怒気を彼は放っている。
「人の命を粗末に扱うな。生あるものはいずれ死ぬ。この理は覆すことはできない。」
「……。」
「じゃ、じゃあ、水咲は生贄がなければ…。」
「蘇らない。」
再び暗い表情となる諏訪子。カルマはため息をつくと、立ち上がる。
「無駄だと思うが、民全員に聞いてみるか…。」
「うん。ありがとう。」
カルマは小さく舌打ちをすると、外に出た。諏訪子と神奈子もついてきた。とりあえず、諏訪子は全員に負けを宣言した。しかし、それに対し、民全員が不安に追いやられてしまう。ここで水咲を蘇らせることができることを説明。すぐに何人かが、名乗りを上げた。
「ふざけるなよ、ド低脳!!」
しかし、ここでカルマの堪忍袋の緒が切れる。
「貴様らは自分の命をなんだと思ってやがる!お前ら自身はそれでいいかもしれんが、お前らと縁ある者たちはどうなる!縁者が悲しみ、また蘇る。また贄がいる。ただの連鎖だろうがっ!生ある者はいずれ死ぬ。あいつはそれが今日だったってだけの話だ。」
カルマの言葉にあたりが静まり返る。そして、結果として、誰も贄となると名乗り上げることはなくなった。
神奈子との話し合いの結果、諏訪の国は大和の中に納まったが、諏訪として名を残すことで民の不安を軽くすることにした。それから数日。カルマは姿を消していた。諏訪子は呆れてどこか旅にでも行ったのだろうと考えていた。彼は最初の頃、寝泊りできる場所を探してここに来た。元は旅人のようなものなのだ。どこで何をしようが、彼の勝手だ。
「諏訪子様、朝ですよ。」
そう。あの頃もこんな感じに起こしに来てくれ…て?
「え?」
「あ、起きましだっ!?」
「いたっ!?」
勢いよく起き上がると、額に衝撃を受けた。痛む額を押さえて目の前を向くと、痛みなど感じていられなくなった。
「う、うぅ。久々に会ってこれは痛いですよ、諏訪子様ぁ…。」
目の前には涙目になって諏訪子と同じように額を抑える少女がいる。見間違えようがない。彼女は正真正銘…。
「み、水咲?」
「はい。おはようございます。」
「あ、ああ。うあああああああああああああ!!!!!」
「ちょっ!諏訪子様!?」
諏訪子は彼女に飛びつき泣き始めた。最初は驚いた水咲も再会の嬉しさに泣き始めてしまった。
二人を遠くから眺める人物がいた。勿論カルマだ。カルマは神社の中が見える遠くの屋根から眺めていた。再会を確認すると立ち上がり、諏訪の国をあとにする。
「カルマ。」
「…なんようだ。」
道を進み、少しすると神奈子が現れた。
「あの娘を蘇らせると思わなかったよ。あんなに反対していたのに。」
「…ふん。」
「まさか、自分を生贄にして蘇らせるなんてね。」
そう。彼は自分を代償に第7禁忌魔法“黄泉還り”発動したのだ。そして、水咲を蘇らせた。カルマ自身は無代償で第7禁忌魔法“黄泉還り”を使い、自身を蘇らせる。そういった仕組みだ。数日前からいなかったのは、第3禁忌魔法“開門”であの世に向かい、水咲自身に蘇る意志があるか。それがどのようなものなのかを説明するためだ。
「ただでさえ、蘇るという例外を起したんだ。それだけじゃなく、俺という生贄を使った。アイツ自身か、子孫に何かしら影響が出だろ。」
「それは人間で無くなるということかい?」
「知らん。少なくとも人間では無くなる、」
「そうか…。別れは言わなくていいのかい?」
「…面倒だ。」
「やれやれ…。どこか行くあてでもあるのかい?」
「さぁな。西の大陸とかいうものがあるらしいからそっちに行くつもりだ。」
「そうかい。…私の方からお前のことは諏訪子に言っておくよ。たまには帰ってきなよ?」
「気が向いたらな。」
そして、神奈子に見送られる形で、カルマは歩みを進めて行った。目指すは西。西洋の国へと。
死んだかと思った?ねぇねぇ死んだかと思った?
残念蘇りましたー!
というわけでね。こういう感じにまとまりました。
次回どうしよう。
西に行ってもいいんですが、ここから天狗の方に向かわせるか悩んでます。
因みに、前者だと‟あの娘”の登場が遅く、後者だと早まります。
そんなわけで、投稿が遅くなります。
悩んでるんだよおぉぉぉぉ><
それでは、間違い等がありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。感想も待っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
番外編読んでくれたかな?
短編として投稿しましたので、続きませんが、良かったら読んでくださいね。
ではでは。